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第150話 反撃の狼煙
しおりを挟む「……潮時か」
アレスの言葉が三人の言葉に響き渡る。
彼は魔力で身体強化をしてソフィアを押し返してジークとマリアの攻撃を回避する。
「逃げる気?」
「うーん。まぁそうだね。僕の目的はあくまで時間稼ぎ。流石に死にたくないから勘弁してねマリア」
深い笑みを浮かべながらアレスは扉を開けて逃げようとする。
「逃すとでも?」
ジークが追い討ちをかけるように彼の首に双剣の斬撃をお見舞いする。
しかし、時すでに遅し。斬撃を当てた瞬間に彼の身体は幻影のように歪んでやがて消えていった。
「……チッ、幻影魔法。逃げられましたか」
「ジークさん。今はアレスさんの事よりバレロナ様たちを……!」
「ッ!そうでしたね」
三人はバレロナたちに掛かっている鎖を武器を使って一刀両断する。
「大丈夫ですか二人とも……!今から送りますからね!」
マリアが彼らの身体を支えながら言う。すると、バレロナとシレイは彼女らに懇願するような視線をむけてくる。
「わ、私たちは大丈夫よ……でも」
「……ナーシャが……ナーシャが危ない……!」
「っ!ナーシャちゃんが……!」
「あの子は、今も尚苦しんでいる。脅されているせいで望んでもないことをさせられて……私たちではどうも出来ない……だから頼む!ナーシャを……うちの娘を助けてやってくれ!」
彼らの悲哀に満ちた言葉が部屋中に響き渡った。
それに対して三人は……。
「……当たり前よ。私たちはそのために動いてるんですもの」
マリアが三人の代表として答える。
「ジークさん。二人は私たちで保護します。貴方はこの事をお兄様に…!」
「し、しかし……」
「あんたが私たちの中で一番脚が早いのよ!今は時間が有限……分かったらさっさと行きなさい!」
急かすようにする姉妹に対してジークは一瞬だけ怖気付いたらが頷いた後、すぐに部屋から出て行った。
姉妹たちもお互いに見合って頷いた後に彼らを安全な場所……カロナイラ家の屋敷へも向かっていった。
◇
ソフィアたちが騒動を起こしている間も裁判は続いていた。
弁護側によるナーシャの尋問、それは長く続いていたが……それも終わりを迎えようとしていた。
「……はぁ、はぁ……貴方、なんでに頑なに嘘を……!」
「……私は、もう前へ進むと決めたのです。だから……何をやっても無駄ですよ」
内心焦っているラーナとルシアに対して、ナーシャは光が見えない瞳で彼女らを見つめ返す。
「国王陛下。彼女の証言は明らかなもの。これ以上、尋問を続けるのは無駄かと」
「……ふむ、確かに。かの者の言葉に矛盾は見当たらない。クリフトの言う通りだ」
「し、しかし国王様……!」
ラーナの抵抗も虚しく、彼はその自慢の木槌を持ってテーブルを叩いた。
「もうよい。これ以上は無駄なことだ」
虚しく響き渡るオルデリングの言葉にラーナはくっ……と言葉が漏れ、ルシアは口を手で覆い隠した。
どちらもアクセルの期待を裏切ってしまった事に対する罪悪感……しかし、そんな彼女達の裏腹にアクセルは酷く穏やかだった。
「……被告人。前へ」
その言葉を聞き、ナーシャと入れ替わるようにアクセルは証言台に立つ。
「そなたの罪状はかの水の使者ウンディーネの証言により明らか……何か言うことはあるか?」
「……」
「あ、アクセル……」
「申し訳ありません聖人様……!私が、私が不甲斐ないばかりに……!」
そんな言葉が俺の耳に入ってくる。そして傍聴人席で俺を助けようと動き始めるローレンスとユニーレに、黙って俺のことを見ているナーシャ……そして、醜く口が歪み始めるクリフトを見て、俺は発言する。
「………そうですね……色々言いたいことがあります」
その瞬間、全員が俺のことを注目している。
……二人とも、よく時間稼ぎをしてくれた。あとは任せてくれ。
そんな意図で弁護席にいる彼女らに目線を送ってから収納ボックスからあるものを取り出す。
「……絵?」
誰かが呟いた言葉を聞いてから俺はそれを……床に落として足で力強く踏みつけた。
いきなりの行動にみんなの目が点になる。きっとわけが分からず混乱してるのであろう……一人を除いて。
「キサマァアアアアア!!!」
……その声は、クリフトそのものであった。
さぁ、ショータイムを始めようじゃないか……オルバドス。
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