全て失う悲劇の悪役による未来改変

近藤玲司

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第146話 立ちはだかる者

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クリフトがラーナの言葉に笑みを浮かべている。
どうやら彼にとっては先程の発言はそれほど、苦にはなってないようだ。

「確かにかのペレク家がバシリス教団と繋がっていたのは分かった。だが、その時被告人が知らなかった可能性だってあるのだぞ」

「甘いわね。被告は何かしら計画を立ててたのよ?それなら彼がペレク家のことを見逃すはずなんかないわ」

「……それに、アクセル様……被告人は一度ペレク家によって毒を盛られたという経緯もあります。それでも尚生き残った……目の敵にするのは当然かと思いますよ」

……まぁ、言ってる所悪いけど奴らがバシリス教団と繋がっていたなんてその時はまだ知らなかったが……ここでそれを言うのは野暮だろう。
ラーナとルシアによる口撃を聞きながらそう思った。

「……ふむ。ではこう証言したいということか?被告、アクセル・アンドレ・レステンクールはあくまで奴らをペレク家をバシリス教団として認知していたと」

「そうね。そういうことになるわ」

ラーナのその発言を聞いたクリフトは少しだけ間を開けて……そのまま何事もないように話す。

「ならば簡単なこと。奴はそれを認知して尚、バシリス教団を利用しようとしたと考えればいい」

「……なんでそういう認識になるのかしら?言ったはずわよね。彼はそんなことをする必要はない……寧ろリスクが高くなるわ」

「これを聞いても尚、同じことを言えるのか?」

そう言うと、また証拠品だろうか。何か水晶のようなもの魔道具が出てきた。
彼はその水晶に魔力を注ぎ込みしばらくすると……誰かが会話している声が聞こえてきた。

「……な、なんでアクセルの声が聞こえるのよ」

そう、ラーナの言った通り、会話の中に俺の声が入っていた。
その内容にはイメドリア王国を滅ぼす云々やら、なにかの取引などなど……物騒な会話が聞こえてきた。

「聞こえたであろう?これは紛れもなく被告人の声そのもの。奴はこの王国を滅亡寸前まで追い込もうとしていたのだ」

クリフトの主張を聞いて再び傍聴人の声が騒ぎ立てている。その中には「死刑にしろー!」「犯罪者め!!」という俺を責め立てる声も聞こえてきた。
……まぁ、あの魔女組の圧によってすぐに締め出されたけど。

だが、流石にこれにはラーナ達弁護組もなにも言うことが出来ず、そのまま俺の方に視線を移している。

「さぁ、これはどう反論する弁護人……被告人よ」

クリフトが歪んだ表情にしたまま、こちらに問いただしている。
それに対して俺は……特に何も動じずその水晶のような魔道具に虚無力で作った疑似的な魔力を込めた。

「な、何を……!」

その行動にラーナが驚いた様子で声を出してきた。ルシアも呆気に取られたままこちらを見ている。
彼女たちのことは気にせずにそのまま魔力を送っていると再び録音させた声が聞こえてきた……但しそれは。

「……こ、声が……先ほどと違います……」

会話内容は同じなわけだが、二人から発せられる声色が違う。それにはさっきまで騒いでいた人たちも驚愕していた。

「……これで、この会話が本当に僕のものなのかどうか、分からなくなりましたね」

クリフトに向けて彼の問いに対する答えを提示する。
そもそも俺は誰かとこんな会話をしていなければ、録音された記憶もない。

もしそんなものがあるならとっくの昔に消している。

「……チッ、下等種族が」

そう吐き捨て、不機嫌そうに水晶を潰そうとするクリフト。しかし俺はそれを防ぐように、魔力で彼の拳を防ぐ。

「ッ!?」

「それも、大事な証拠品でしょう。なら丁重に扱わないと……そうでしょう、クリフト様?」

そうして水晶を魔力糸で引き寄せた後、ラーナ達に渡していく。

「あっ……」

「国王様。先ほど彼女らが見せたビンとこの水晶を証拠品として提示します。異論ありませんよね?」

裁判席のような場所に座っていた彼に物申すと、彼はゆっくりと頷き……。

「……受理しよう」

何故かこちらを向いたまま、答えた。その表情が一瞬だけ笑っていたのは俺の気の所為ということでいいのだろうか?

「……余計なことを」

「……これは公平な裁判ですので」

……だから、捏造の証拠品を提示したって意味なんてないからな。

「ふん、まぁいい。まだ貴様が犯人であるという根拠は残している……次で叩き潰してやる」

不機嫌そうな表情から口元が歪んだものへと変化した。まだ奥の手を残しているらしい。

「では、次の証人を証言台へ。急げ!」

クリフトが周りの騎士達は急かして、最初に証言した騎士はそのまま戻り、次の証人を呼び出していく。
多分彼が呼び出そうとしてるのは……。

しばらくすると、その証人が前にで始める。肩までかかる短い青色の髪に、本来明るい性格が特徴な人物。

「……ナーシャ」

……その人物が今、顔を悲しそうに歪ませながら、騎士の証人及びクリフトの婚約者として証言台に立っていた。
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