全て失う悲劇の悪役による未来改変

近藤玲司

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第142話 二重人格

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「いつから知ってたの?ねぇねぇいつから?これでも演技には自信があったんだけどなぁ」

少し幼い子供のような純粋の問いかけに対して俺はしばらく彼女の様子を見てから答える。

「……最初から、と言ったら?」

「うわっ、ほんとに?それは流石にドン引きだなぁ……あ、いやでも不思議と貴方に知られるのは嬉しいな。あれかな?やっぱり惹かれるものがあるのか?」

「あんたに好かれても嬉しくはないな」

「えーなにそれー?つまんないのぉ……」

やれやれと手を横にして首を降っている。どうや呆れた様子を表しているようだ。

ローズ・ネファース・ミレイス。

ヒロインでありながら、後にアレスたちの敵として立ち塞がる異例な存在であり……バシリス教団の幹部の一人。

相手をおもちゃのように弄び、敵対した者には一切の容赦をかけない。まさに悪逆で冷酷、普段の彼女からは想像出来ない残虐な性格。

そこから付けられた名称……。

「……二重人格」

「ん?なーにそれ?」

「……あんたに似合った名称だよ」

「なんか可愛くないなぁ。まぁ、実際あってるんだけどね」

そう言って彼女は指をパチンッ!と鳴らしたと思えば一瞬だけ意識が失ったように表情が消え……再び戻る。

「……あ、あれ……アクセルさん……?」

「……ローズ」

「ど、どうしてここに……?それにこれは……あぅっ………………どうよ?」

「……まさに自由自在ってことか」

再びローズから彼女へと移り変わる。まるで手品のようだ。先ほどの年相応の様子が一気に子供っぽい様子になった。

「今はこうやって自由に人格が変えられるの。昨日までお姉ちゃんのせいで全く表に出れなかったんだけどね……にしても」

辺りを見渡して、仲間であっただろう人の姿を見て思わず顔を顰めた様子となる。

「私しか王国だとまともな奴がいなかったのにこれはひどいね。まさに壊滅状態……さっすが要注意人物の一人だね」

「……そう認知してるのか?」

「当たり前でしょ?だって私たちの計画を悉く潰していくんだよ?どんな馬鹿でも警戒ぐらいするよ……そんなことより私のこと興味ないの?」

「如何せん知ってるからな。あまり興味がない」

「ふーん……じゃあ知ってるんだ。私の……本当の正体とか?」

「……まぁな。だからあんたの話は興味がない」

「そっかぁ……でも私は貴方とお話したいから話しちゃう♪」

そうして、そのまま彼女は話し出す。

「今回の事はバシリス教団っていうより、オルバドス家に関係があるものだったの」

「……奴らの目的は、嘗ての栄光を取り戻すこと。そして、あんたらの利害が一致したということか?」

「そんな感じかな?お姉ちゃんの友達のナーシャ。あの子は多分脅されたんじゃないかな?その内容は言わないけど」

「そこまで言って話さないのか?」

「ノンノン。ここは最後まで取っておくのが楽しみなんじゃない♪」

「……ローズはバシリス教団の幹部だと知ってるのか?」

「うーん……微妙な所だね。でも薄らと自覚はしてるんじゃない?」

「……そうか」

「なになに?もしかして気になったの?そんなにお姉ちゃんのことが好きになったの?」

「元々、俺の目的はナーシャとそこにいるローズだ。気になるのは当然だろ?」

「……ふーん。なんだかつまんないの。私には興味を持ってくれないんだ」

「……死者に興味を持つほど、俺は落ちぶれてないんでな」

「むぅ……まっ、いいや。そのうち貴方を……私たちの所に引きずり出してやるんだから♪」


彼女がそう言った瞬間、入り口から大量の騎士が入っていき……俺に剣を向けてきた。

「……そこにいる犯罪者を取り押さえなさい」

「はっ!」

そうしてそのまま複数の人が俺を腕を掴んできた。
……なるほど。

「これが目的か?」

「あら、気づきましたの?ふふっ……ですが……今更遅いですよ?」

あの手紙を出したのは……お前だったってことだな。相変わらず、仲間のことは何にも思ってないんだな……。

「父上やバレロナ様に頼みこんでも無駄ですよ?貴方と私……どちらの言葉を信じて貰えるでしょうか?」

「………元々、あの人たちに迷惑をかけるつもりはない……それに勘違いしてないか?」

「……なにがですの?」

こいつは勘違いしている。この計画で俺を嵌めたつもりだと。
だが……それは全く持って逆だ。

「……さっきの言葉、そのまま返してやる。俺が……お前らを引き出してやるよ」

容赦はしない。バシリス教団も、オルバドス家も……ローズの中にいるお前もな。

「……連れて行きなさい」

密かに歪んだ彼女の表情を見ながら、俺は彼女や騎士によって連れ去られて行った。

そうして俺は……王国の反逆者及び殺人者として、捕えられたのであった。
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