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第136話 二人のメインヒロイン
しおりを挟む「……なんで、ここに?」
未だにラーナがここに来た理由が分からず思わずそんな言葉が出てしまう。
い、嫌……これも原作を変えた影響?だとしても随分と早い帰還だな……。
「……何よ?私がいちゃ悪いってわけ?」
「い、いやそういうわけじゃないんだ……まさかここに来てるとは思わなくてな」
「ふーん……まぁいいわ。私がここにいて驚くのも無理ないし……とりあえず座りなさいよ。積もる話もあるわ」
「あ、あぁ」
ラーナに促されて座っていく。何故かルシアは俺の隣に座っていくが……。
「……というか、なんでドレス着てるんだお前?」
「ん……あぁ、つい着替え忘れちゃってね……どうかしら?」
いやどうと言われても……褒めろってことか?
「……似合ってるんじゃないか?普段着と違って魅力的に見えるぞ」
「……………そ、そう」
ラーナが照れるように髪をいじっている。違ったのか?わ、分からん……未だに女心というものが掴める気がしない……。
「……むぅ、随分と仲がよろしいのですね?」
「えっ……は、はい。これでも武勇祭の時期に一緒に特訓をした仲なので……」
「……私には敬語を外してくれないのですね」
「えっ?い、いや別にそういうわけじゃ……」
「ならば、敬語を外していただけないでしょうか?アクセル様と……距離が出来たみたいでとても悲しいです」
う、うむ……ルシアさんどうしましたか?俺は別にそれで構わないけど……やっぱり変わったよね?
「……わ、分かった。これでいいか?聖女様に無礼な口答えをするのはとても気になるが……」
「そんな!そのようなことお気になさらないでください!私たちの仲ではありませんか!」
「あ、あぁ……」
こちらに向かって勢いよく近づいてくる彼女につい押されてしまう……こんだけ感情豊かな人だっけ?
「………あなた達も、随分と仲がよろしいのね?」
鋭い目つきでこちらを睨んでくるが……俺別に何もしてないよね?どうしてそんな怒ってるんですか皇女様??
結局どう関わればいいか分からずにしばらく頭の中が疑問でいっぱいであった。
◇
「色々と聞きたいことはあるが....とりあえずまずは一つ、俺になにか用か?」
二人と向き合う。ちなみにルシアはあの後、ラーナの隣に座ったため今は正面にいる。
「そうね....今回はランディール帝国の皇女と....」
「....この国の聖女として、アクセル様にお聞きしたいことがあります」
「....聞きたいことか」
「今更だけど、私が皇女ということには驚かないのね」
「知ってたからな。反応に期待してたら悪かったな」
「いえ、それはさっきので十分よ。それに、知っていた方が話が早いから助かるわ」
そう言って二人の目つきが変わった。
「....バジリス教団について聞きたいことがあるわ」
「.....バジリス教団、か」
「先月行われた武勇祭による襲撃、それとこの教会での彼らの奇襲....どれも大きな事件に発展することなく終わりました」
「...それで?」
「バシリス教団の存在が広まったきっかけとして、この教会を襲撃した連中をルシアが倒したことになるわ....表向きはね」
「....武勇祭は分かりませんが、おそらく貴方様が関わっているのでしょう?」
「....まぁそうだな」
ここで隠したって別にメリットはない。寧ろここで二人を味方につけられるのは大きい
「教えて。あの連中の目的は?どうして奴らはこの国を.....世界を破壊しようと動いてるの?」
「目的か....明確には分からない...だが、2つ確かなことがある」
「それは?」
「一つ、奴らはある人物を執念深く狙っている....勇者という存在を」
「....ゆ、勇者ですって?」
「知ってるのか?」
「....ある書物にこんな御伽噺があります....異界の勇者。嘗てこの国が闇で覆われたときに現れた伝説の存在だと」
「....それなら話が早いな。奴らはその勇者の素質のあるもの....アレスという存在を奴らは狙っている」
「....あ、あいつのこと?」
思い出したのか、ラーナの表情が一気に顰めっ面に変貌する。
「....それならば何故ここに襲撃を?」
「おそらく、魔王の討伐として選ばれる奴らを明確に狙ってきてるからだ....その中でも可能性が高い人物として、ルシア。お前が狙われたわけだ」
「そ、そのようなことが....」
「....二つ目は?」
ラーナの急かすように詰め寄る。それほど脅威に感じているということなのだろう。
「....奴らは....この世界の秩序を壊す...そのために動いている」
「ち、秩序?」
「.....奴隷による支配、亜人差別、それと...人族による世界の支配」
「.....」
「思い当たることがあるんじゃないかルシア?そんな不満が.....溜まりに溜まったのがあの集団ということだ」
「....なる、ほど....それが、奴らの目的なのですね」
何かを思考するように目を閉じているルシア。そして目を開かれた時....彼女の目は変わっていなかった。
「....共感は出来ます。亜人差別...私にとって嫌いな言葉です....でも」
そこにはあの集団と同じような目ではなく....何かを抗おうとしている意思のある目を宿していた。
「...たとえそうだとしても、人々を危険な目に遭わせるのは違います。そして....私の大切な存在を傷つけようとした....彼らと対立する動機としては十分です」
「....私も、奴らには大きな借りがあるからね。是非協力させてもらうわ」
「....そうか」
正直、あまり危険な目に遭わせたくはなかったが....彼女たちの意見を尊重するとしよう。
「それと、アクセル。もう一つ言っておきたいことがあるわ」
すると、ラーナがそんなことを言ってきた。
「なんだ?」
「....少し警戒したほうがいい人物がいるの」
「?ラーナ様??」
気迫の詰まった気配に思わずルシアが萎縮してしまう。
「....」
「...貴方は...知ってるの?」
「...まぁな。だとしても、俺は俺で動くつもりだ」
「....相変わらずね。でも一応警告だけ言っとくわね」
そう言ってラーナはその人物の言葉を発した。
「ローズ王女には気をつけなさい。あの人は....危険よ」
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