全て失う悲劇の悪役による未来改変

近藤玲司

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第129話 王城

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「うわぁ……重苦しいなこの服」

自宅にて王の謁見のため、あの王女……ローズが俺たちのたまに用意した服を着ている所なんだが……いかんせん暑苦しいし動きにくい。

「……王様の謁見って改めて考えると相当厄介なんだな……」

……いっそのこと逃げ出してしまうか……?侮辱罪で殺される未来しかないけど……。

「………お…お兄様……」

するとドア越しにソフィアの声が聞こえてくる。少し声色が緊張感に増しているか?

「は、入ってもよろしいでしょうか?」

「ん?あぁ、いいぞ」

ドアの開く音がした。俺はソフィアの方を振り返り……。

「………」

「……あの……お兄様?」

………凄いなこりゃ。

「綺麗だな」

「ひゃっ!!??あ、あの……えっと……」

いやいやここまで人って変わるもんなのか?

少し化粧もしてるか?いつもの年相応の顔も大人っぽく見える。それに、水色のドレスだな。肩が露出しているが、それ以上に気品の良さが目に見えて分かる。

「元々ソフィアは顔がいいからな。そりゃあここまでおめかししたら変貌するわな」

……ん?

「ソフィア?」

「……………お兄様も………とても凛々しいです………」

「?あ、あぁ。ありがとう?」

全身の肌が真っ赤になりながらぼそぼそっとそんなことを言ってきた。うーん……まぁアクセルって俺から見ても顔はいいからな。

「とりあえず下に行くか」

「は、はいぃ……」

俯いているソフィアとともに下の階へと向かっていく。何故か裾を恥ずかしそうに掴んでいてそれが微笑ましくなる。

(ローズが用意した服もそうだが、これはカリナのお陰だな……相変わらず、有能っぷりだな)

……これ、みんなソフィアみたいにおめかししているってことだよな?ユニーレは今はいないけど……4人……あ、いやナーシャ含めると5人か……やばいね。

そんなこんなでリビングに向かっていると……噂をしていたら三人がいた。

「あ、来たわね。待ちくたびれたわよ二人と……アクセル、凄いカッコいいわ……!」

「なぁジーク。我のこの格好、変ではないか?凄いソワソワするのだが……」

「ご心配ならなくてもとてもお綺麗ですよローレンス様……ですが、何故私もドレスを……?」

……これは……。

「ぬっ?アクセル来たのか……そ、その……どうかな?」

「あ………アクセル様……私も一応着てみたんですけど……」

ローレンスは少し薄い紫色のシンプルなドレスを、ジークは赤色の大人っぽいドレスを着ている……うん。

「めちゃ可愛いぞ二人とも」

「「ひぇっ!?」」

……ソフィアの時も思ったが、なんで俺が何かを言うたびにそんな変な反応するんだ?

「アクセル!私は?私はどう!?」

その場でぐるりと周り、俺に見せつけるように黒いドレスを身に纏ってそんなことを聞いてきた。

「あ、あぁ、マリアも綺麗だぞ。見惚れたよ」

「ほんと?そっかぁ…‥嬉しいなぁ……」

そう言っていつも通りに俺の身体をギュウッ……と抱きしめてくる。マリアはこの格好に慣れているのか、3人よりかは平然としてるけど……少しだけ頬を染めており、嬉しそうにしていた。

「……お姉様。お兄様から離れては?もうすぐ王城に行くのですよ?」

「……むぅ、そういうソフィアもよ。アクセルが動きにくくそうだわ」

……うんやっぱり変わらないものは変わらないね。いつも通りの二人の様子に心の中で苦笑しつつ、準備をしていった。





カロナイラ家……バレロナ様とナーシャに用意してもらった馬車に乗り、今はローズ様が用意してくれた部屋に滞在してる所だ。

「それでは私はあの馬鹿と少し話してくる。それまでナーシャと一緒に待っててくれ」

いつもより堅苦しい服を着たバレロナ様がそう言って部屋に出ていく。にしても貴方、一応この国の王様なのに、それを馬鹿呼ばわりって……。

「それにしても皆様、とてもお綺麗ですね。思わず間違えそうになりました」

白色のドレスを着ているナーシャが俺たちを見回しながら言ってきた。

「ナーシャちゃんだってとても綺麗じゃないですか。とっても似合っておりますよ」

「ふふっありがとうございます。ソフィアちゃんにそう言って貰えるととても嬉しいです」

流石に緊張していたのか、ソフィアは少し動きが固くなってるが、ナーシャのお陰で少しリラックスしたようだ。流石侯爵家の娘だな。

「……ん?そういえばナーシャよ。いつも身につけているあのイヤリングはどうしたのだ?今は身につけていないようだが……」

ナーシャの耳を見たローレンスが指摘してきた。あ、確かに俺が渡したイヤリングをつけてないな……王の前だとそんなのつけるわけにはいかないのか?

「……え、えぇ。その……少し、無くしてしまいまして」

「そ、そうなのですか?ナーシャちゃんにしては珍しいですね……今度お探ししましょうか?」

「う、ううん!大丈夫だよソフィアちゃん!一人で探してみるから!」

あはは……と笑って俺の方を向いては少し気まずそうに目を逸らしているナーシャ。

(……なんだ?)

そういえば最近、俺が視界に入らないようにこちらの方を見てきてないように……少し避けられている気がする。

それと関係があるのか……でも、一体何かあったのか?

そんなことを考えていると扉が開いて……そこにはバレロナ様の姿があった。

「すまん、待たせてしまったな。ナーシャ、皆を案内する。少し手伝ってくれ」

「は、はいお父様……」

一瞬だけこっちを見てからナーシャは立ち上がり、バレロナ様の隣に立った。

「それでは皆、行くとしよう……この国の王、オルデリング・ネファース・ミレイスの元へ」

……どうやら王の謁見の時が来たようですね。
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