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第125話 また会う日まで
しおりを挟むあの後、ここに連れていきたい人がいるとルシアに聞いた所、「アクセル様の信頼できる人なら」と即オッケーを貰った。
ということで今はジークとともにバレロナ様から頂いた木箱を数個運んでいる。
「...こ、これは」
ジークはルシアの周りにいる子供の姿を見て、驚愕していた。それもそのはずだ、元々ほか種族との関わりは持ってはいけないというのに、ここではそれが関係ないように暮らしているのだから。
「驚いたか?獣人族の子供だよ」
「わ、私も姿だけは見たことがありますが....まさか人と....それもルシア様と共存しているとは...」
そんな会話をしていると、ルシアは気づいたのか、こちらに向かって走り出していた。
「おかえりなさいませアクセル様....!それと、ようこそジーク様。この異端の教会へ」
「....わざわざお出迎えありがとうございますルシア様。ジークリンデです」
彼女たちがそんな会話をしている間に俺はその木箱をこちらの方をじっと眺めている子どもたちのそばに置いていく。
「なぁ兄ちゃん。これってなんなんだ?あとあの女の人だれ?恋人??」
「そんなこといいだろ?ほらっ中身見てみな?」
.....だからジークよ、恋人といった瞬間、顔を真赤にさせないでくれ。あとルシア様?今の貴方の後ろに般若が見えますよ?とてつもなく怖いのでやめてくれますか?
『わぁあ...!』
....っと心のなかでそう訴えかけているうちに、どうやら箱に中を見たらしい。
「に、兄ちゃん!!こ、これ!食いもの!!」
「すごい!洋服もあるよ!!」
その複数の木箱の中に入っている食料や服類などに歓喜の声が上がっている。
「お前らのためにいろいろ持ってきてやったぞ。でも量はまだそこまでないから、仲良く分け合うんだぞ?」
『わぁあああああああい!!!』
一斉に木箱に向かって食べ物やら洋服やら本やら持っていこうとわちゃわちゃし始めた。その姿に苦笑しているとジークともその隣で木箱を置いた。
「どうだジーク。種族なんて関係ないだろ?みんなただの子供だ」
「...そうですね。これだけ見ていると、とても愛らしいですね」
種族間にわだかまりがあるとは思えません...と呟いてその光景を見守っている。
...どうやらジークはあまり他種族に対する嫌悪感はないらしい。
「アクセル様?これは...?」
ルシアが少し困惑気味になりながらも話しかけてきた。
「あぁ、ここにもたくさんの子供がいると思って、バレロナ様から仕送りを頼んだんです」
「も、もしかして....最初から?」
「そうですね....あ、それとルシア様」
俺は収納ボックスにしまってあった複数の木箱を彼女に渡す。
「この中にあれとは別の食料や生活に必要な物を入れております。食料に関しては魔道具で腐ることはないと思いますので、貯めて頂いて構いません。それと、もし足りなくなった時があれば、俺かナーシャ、バレロナ様に頼めばしっかりと仕送りを送るので」
「...なにからなにまで本当に...」
身体を震わせながら、ゆっくりとこちらに向けて頭を下げてきた。
「本当に.....本当に....ありがとう、ございます」
「...当然のことをしたまでですよ。もしまた困ったことがあればお頼りください。僕が出来る限り、力にならせていただきます」
「....あぁ...聖人様....聖人様....」
うーん...だからねルシア様?その聖人様連呼するのは少しやめていただきたいのですけど。原作でもそんなこと言う時なかったんだよね?なんでそんな変貌してしまったのですか貴方は?
「....なるほど、アクセル様を聖人様と評するのは合ってるかもしれませんね」
「じ、ジークさん?」
「分かってくださいますか!?」
うわぁ....これ、まさかだけど...。
「え、えぇ。アクセル様はとてもお優しく、慈悲深いお人です。聖人と呼ぶのも無理ありません」
「い、いやだからジーク?それは」
「そうなんですよ!!」
「....」
...嘗てのソフィアとユニーレみたいに俺を褒め殺すのかこいつらは?
「どのような人物にも分け隔てなく救ってくださり、ましてや他種族であるはずのみんなを当たり前のように救ってくださる....これを聖人と言わずになんと言いましょうか!!」
....もうだめだこりゃ。
二人の中に変な絆が芽生え始めるのを感じた....そのきっかけがアクセルの褒め殺しという予感を知った俺はそこからそっと離れて、二人が落ち着くまで暫く待つのであった。
◇
「...落ち着いたか?」
「も、申し訳ありません....つい話が白熱してしまい」
ジークがバツが悪そうに頭を下げている様子を見てため息がついてしまう。
(こいつ、最初は凄い生真面目な奴だと思ってたのに....最近ポンコツ化が激しくなってないか?こんなキャラじゃなかったよねジーク君?)
....まぁ今の彼女が楽しそうにしているのを見て、今のジークの方がいいと思ってしまう自分もいるんだが。
「じゃあ行くぞ。あまりバレロナ様をお待ちさせるのはまずいしな」
「そ、そうですね...」
「...残ってもいいんだぞ?」
「ご、ご同行させていただきます!!」
ったくこいつ....はぁまあいいや。
「アクセル兄ちゃん?どこかに行くのか??」
「ん?あぁ少しな。悪いな、しばらく戻れないかもしれん」
そんなことを言うと、いつの間にか集まっていた子供の表情が一気に暗くなった。
「そんな顔するな。別に一生会えないわけじゃないんだ。終わったらまた遊びにいくよ....だからメアリー、そんな泣きそうな顔をするな」
「あ、アクセル....」
「お前はここのお姉ちゃんみたいな存在だ。そんなメソメソしていると、みんなを守れないぞ?」
そこでハッとして後ろを振り会える。そこには不安そうに...泣きそうにしている弟や妹のような存在の姿がある。
「....そ、そうだよね...私がしっかりしなくちゃ...」
「あぁ、その意気だ。ほらっそこにいるガリヤなんて見てみろ?鼻水ダバダバだぞ?」
「なっ!?そ、そこまでひどくねぇよ!!」
その姿を見て先ほどの悲しそうな雰囲気から一変、一気に笑いの声が響き渡る。
「だから、な?ここを頼んだぞ?」
「....うん...分かった!私、みんなを守れるように強くなる!!」
その決意が籠もった姿を見て、微笑ましくなる。
やっぱり、守るものがある奴は強いな....まぁ、おそらく俺の魔法とあいつがいるからここは大丈夫だと思うが。
「...アクセル様」
そして、聖母...いや、ここを守る母親的な存在であるルシアが俺に近づいてきた。
「本当に、ありがとうございます。何から何まで...この御恩は一生忘れません」
「そんなかしこまらないでください。俺は、俺のしたいことをしたまでです....神聖魔法の方も頑張ってくださいね?」
「は、はい....あ、あのっ!」
「ん?」
森を後にしようとしたところを振りかえる。そこには少しだけ不安な表情をしたルシアの姿がある。
「....また....また.....私と一緒に.....この教会に来てくれますか?」
....あぁ、なるほどね。
「...はい。その時はぜひ声をかけてください……いつでも時間は作っておきます」
「っ!.....はい....!」
...さて、そろそろ時間だ。俺も、できるだけこいつらに被害が被らないように行動しないと。
「では、またお会いしましょうルシア様」
「.....はい.....またお会いできる日を」
そうして俺はみんなの声を聞きながらジークとともに教会から後を去ったのだった。
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