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第119話 約束

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教会から外に出て、ラスティアから出ていき、ルシアの後をついていく。

しばらく道沿いを歩いて行くと、たくさんの木々が生えてきている森林についた。

彼女はその森林に向けて手を向けると先程までそこに生えていた木々が道を開けるように次々と横に移動していく。

「幻術でこの場所は誰にもバレないようにしています。迷わないようについてきてください」

「幻術魔法……無属性魔法の一つですか」

「子供の頃に会得した魔法の一つです……私のお気に入りの魔法の一つでもあるんですよ?」

そんな会話をしながら、開けた森の中を歩いて行く。

(……この森全体が彼女の魔法か……流石は、女神に選ばれた逸材だな)

そうして森の中をしばらく歩いて行くと、小さな教会がある。

苔むした石造りや木製の壁で出来ており、教会というより、少し大きい一軒家という印象が残る。

「……ここです。この教会の中にいます」

そして、そのまま教会の中へと入っていく。中を見てみると、奥には女神の象が見えるが、中はボロボロだ。

「………ぁ、るしあぁ……」

「っ!メアリー!」

すると長椅子にぐったりとしながらも、祈りを捧げているツインテールをした茶髪の幼い女の子がルシアに寄ってくる

「まだダメじゃない!しっかりと寝てないと!」

「え、えへへ……るしあのこと、待っていたんだぁ……」

「っ!もう、この子ったら……!」

ルシアの瞳をうるうるさせている様子から見るに……なるほど……。

……この子達か、ルシアの大切な子達で……彼女を復讐者へと変貌させてしまったきっかけを作ったのは。

「ゲホッ、ゴホッゴホッ!」

「め、メアリー!もしかして……毒が……!」

「……い、息……苦しいや……るしあぁ……わたし……しぬのかなぁ?」

「そ、そんなことさせない!絶対にさせないわよ……!アクセル様っ!!」

今までに見たことがない……いや、原作で一度だけ見た彼女の本当の素の姿を露わにして懇願するように振り向いてきた。

「お願いします……この子を……メアリーを!」

「……分かりました」

ルシアのそばに近寄り、抱き抱えている少女に目線をやる。

(……毒の進行が早くなってるな。手足が蝕んでいるな……それに……)

彼女の頭に触れていき……人間にはない特有のものが見つかる。

(なるほど……獣人か。道理でルシアが隠したいと思うわけだ。この耳からすると……猫耳族か?)

「あ、アクセル様!どうか、どうかお慈悲を……!」

「……ルシア様。この子の耳はいつからこのように変色を?」

「えっ……つ、つい最近でございますが……あの、メアリーは助かるのですか?私に出来ることがあれば……!」

「それでしたら、暖かいお湯とタオルを。それと、彼女のために布のようなものを用意してくれると」

「わ、分かりました!すぐに取りにいってきます!!」

彼女をゆっくりと床に下ろしてから、急いで講堂から出て行った。

「…………あなたは、だぁれ?」

「…‥アクセルだよ。きみは?」

「……メアリー……ねぇ……あくせる」

弱々しい声で俺の方に向いてくる。

「……わたし、しんじゃうの……?このまま……るしあたちとあえなくなっちゃうの?」

「……大丈夫だよ。絶対にメアリーちゃんのこと、助けるから」

「……ほんと?」

「うん。ほんとだよ」

「……じゃあ……はい、ゆびきり」

ぷるぷるとこちらの方に精一杯の力を出して指を差し出している。

(……純粋な子だな)

こんな何も知らない奴に頼むなんてな。俺も小指を出して……彼女の小指と結ぶ。

「……やくそく、だよ?わたし……まだ、みんなといきたいから……」

「……うん。約束だ」

「………ありがとう……ゴホッゴホッ!」

苦しそうに咳き込んでいるのを見て、少しでも楽にさせるために、魔法で眠らせる。

眠りの霧スリープミスト

……これで、少しは楽になったかな?寝顔を見る限り、さっきよりかは顔色が良さそうだ。

「……さて、思った以上に毒が進行しているから、ここからはスピード勝負だな」

幸い、今はルシア含めて誰もいない。なら神聖魔法ではなく、虚無力で一気に毒そのものを消し去ることにする。

(このために、五年間ずっと虚無力の緻密な制御を扱ってきたんだ。二年前とはわけが違うぞ)

メアリーに影響が出ない程度に、虚無力を彼女の身体に流し出す。

(……やっぱり、もう身体全体に毒が侵食しているな。彼女の体力にも限界がある……一気にいくぞ)





「……ふぅ……なんとか、なったか」

顔色も……最初よりかは随分と良くなっているな。

「これ、俺の神聖魔法だったら危なかったな……やっぱり、本物の聖女の神聖魔法と比べたら俺のは紛い物というわけか」

自分の手を握りしめながらそう確信する。やはり、創造魔法で作った魔法でも、本家の神聖魔法には敵わない……か。

「……アクセル……様?」

「……ルシア様」

大量の掛け布団と水とタオルを手に溢れそうに持っているルシアの姿を見て苦笑してしまう。

「……そんなに必要ないですよ?」

「あ、アクセル様っ!メアリーは…‥メアリーは……!」

「……今は、穏やかに眠っておりますよ……そばにいてやってください」

そう言うと、彼女は持っている物を置いて、今も穏やかに眠っているメアリーに近寄る。

「……息が、あります……脈も……ちゃんと動いて……」

ポロポロと彼女の瞳から涙が流れ始める。

「……こんなに穏やかに眠っているメアリー……久しぶりに見ました………ほんとうに……ほんとうに……!」

……さて、まだ俺にはやる事があるな。眠っているメアリーを抱きしめているルシアの姿を見てから、俺は講堂から出て、ある部屋へと向かおうとする。

「…‥アクセル様……今度はどこへ……」

「決まっていますよ。他の子たちも助けに行くんですよ」

「……ど、どうして……?この子たちは、獣人なのですよ?貴方は気味が悪いとは思わないのですか……?何故そこまでして……」

どうしてって言われても……彼女に言ってなかったっけか?

「ルシア様を救いたい……たったそれだけですよ」

「っ!!」

「それに、メアリーちゃんと約束しましたから、みんなと一緒にいさせるって」

そのためには、まだ苦しんでいる子達を救けないとね。

そう思いながら、ルシアを残して今度こそ講堂から出ていく。

……明日は少し寝不足になりそうだな。



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