42 / 256
第42話 家族デート①
しおりを挟む
今、目の前にいるのはセミカ・イべルアート
原作では姉マリアを毒殺をしたことで知られている。
ただ、このキャラを知っているのはごく一部だろう。
原作でのメインキャラは家族の中では俺とソフィアだ。マイナーキャラである姉は勿論、その人物を殺した奴のことなんて以ての外だ。
俺は元々、アクセルファンということもありこいつのことは知っているつもりだ...アクセルの家族を殺害したというレッテルがあるから今にも殺したいわけだが....
「.....姉さん、この人は?」
ここで騒ぎを起こせば潰したい奴らも潰せない。
悔しいが、身を削る思いで耐えることにして姉さんに聞く。
「....セミカっていう、よく私にちょっかいを掛ける奴よ、正直少し苦手だわ」
苦虫を潰したような顔をして言うが、それを聞いた彼女は表情を変えて
「嫌ですわマリアさん。本人の前で苦手だなんて...私、悲しいです」
およおよと、今にも涙を流しそうな表情をしながらそんなことを言う。
...表面上は、だが。
今はっきりと理解した、こいつは敵だ。
読んでいた時にずっと感じていたこの忌々しい気配....奴らにそっくりだ。
「あなたが私に付きまとうからでしょ?そもそも私はあなたとは関わりたくないの。
本当に勘弁してちょうだい....」
「そんな冗談言わないでくださいマリアさん。私達の仲なのに....ですがまぁ今日の所は引きましょうか」
そう言ってセミカは俺たちに背を向けて歩き出そうとしている。
「あぁそれと...マリアさんの弟君?」
だが、最後に俺に用があるのか、顔だけこちらを向けてくる。
「マリアさん、とても凄い人よね?これからもずっと一緒に居れるといいね」
それだけ言って今度こそ去っていった。
......くそっ最後に嫌な気配を纏いながら変なことを言いやがって。
俺が敵セミカに向けて隠していた殺意を向けていると、姉さんが俺を抱きしめてきた。
「?姉さん?」
何故急に抱きしめてきたのかが分からず、困惑している間、姉さんは何かを暗唱するようにぶつぶつと呟いてる
「....大丈夫よお姉ちゃんが絶対に守ってあげるから....もうあんな悲劇に遭わせないわ.....大丈夫.....大丈夫だから」
それは普通に見れば怖がっている弟を姉さんが宥めているようにも見える。
だが、何故か俺には姉さんがなにかを怖がってるようにしか思えなかった。
もう失敗しないように、もう失わないようにと自分自身に言い聞かせてるような....
そんな疑問を抱きながらも俺はセミカの後ろ姿を見送り、その後姉さんと一緒にさっきまでいた噴水の所に行くのだった。
◇
「……これは、どういうことですか?」
殺意ビンビン、目は真っ黒に濁り、表情は絶対零度と言わんばかりな顔をして俺の方を見ているソフィアさんがいる。
俺、何か悪いことした?
再び噴水に向かうと、そこには常に準備が出来ていたのか、以前デートした時とは違い、薄いカーディガンを羽織り、それに加えてふんわりとしたスカートを身に纏っている妹の姿がある。
普通の人なら人目ぼれしてもおかしくないだろう。事実、ソフィアの姿に惚けている人が多数だ。きっとそんな人と近づきたいと思ったのだろうな、何人かの男性が近づこうとした時、俺の存在に気づいたソフィアがパァッと明るくなりながら寄ってくる。
「お兄様!お待ちしておりました!さぁいま…か…ら…で…………も………………」
だが、俺の隣に姉のマリアの存在を認知した瞬間、とてつもない寒気とともに今さっき話したソフィアの様子となっていた。
「……これはどういうことですか?」
うん、とっっっってもこわいね?
身体中が冷や汗でいっぱいになりながらも、とりあえず説明だけはしなければと思い話そうとすると、先に姉さんが話し始める。
「あら、アクセルから聞いてたけどソフィアもいたのね。随分と成長しちゃって...お姉ちゃん嬉しいわよ」
「マリアお姉様、お久しぶりでございます。私もお姉様にお会いできて嬉しいです....ですがなぜ、お兄様と一緒にいるのでしょうか?」
再び背筋がゾッとするこの感じ....おかしい、この人たち仲が良いんじゃないのか?さっきまで近づこうとしてきた奴らはソフィアの様子を見て、即時に離れ始める。おいっお前らやるなら最後までやりきれ。
「そこの噴水でアクセルを見かけたのよ。成長した弟の姿に感動したわ。
それでさっきまで、アクセルとの時間を楽しんでいたのところよ」
「....オニイサマトノジカン、デスカ?」
ソフィアの視線が姉から俺へと移る。視線がじりじりと感じ、心を鷲掴みにされている気分になってしまう....怖いよ?
「お兄様?ソフィアをほったらかしにしてお姉様と楽しんでいたのですか?
ソフィアはとても楽しみにしていましたのに....どうしてソフィアのことを見捨てるのですか?」
「いや、違う。断じて違うぞソフィア?俺も今日はソフィアと一緒に回る予定だったし楽しみではあったぞ。でも姉上に連れて行かれて.....」
「....アクセルは私と会えて....嬉しくなかったの?」
「いや姉さん?違いますからね?姉さんと会えること自体はとても嬉しいですよ?でも流石にタイミングが悪いというかなんというか....」
「お兄様?」
「アクセル?」
.....どうして俺が一番悪いみたいなってるんだ?
その後、暴走した姉妹をなんとか宥めるのに数十分はかかった。
俺が一番泣きたいのに......
◇
二人をなんとか宥めて、今俺たちは三人で王都を周っている。
構図としては左からソフィア 俺 姉さんだ。
うん挟まれることにはある程度予想はしていたが.....
「....」
「....」
.....何故か普通に王都を周っているはずなのに、ここまで空気が悪いことがあるのだろうか?しかも家族でだぞ?赤の他人ならいず知らず、やっぱこの人たち仲悪いんじゃないのかな?
そんな空気の最中、まるでなにも見えていないのか、複数の男性が近寄ってきた。
こいつら、度胸あるなぁとか考えていたら急に話しかけられた。
「おいおい、男一人にこんな群がる必要ねえってぇ。なあお嬢ちゃんたち、こんなガキよりも俺たちと来ないか?良いこと教えてやるからよ~」
「そうそう、こんな平凡でなんの変哲のないガキに構う必要ないから...よっ」
すると、一人の男性が俺を足で突き飛ばしてくる。
考え事をしていたせいか、受け身をとれずそのまま倒れてしまった。
「いてっ」
ありゃりゃ吹き飛ばされてしまった。まぁ痛くも痒くもないからどうってことないかとか考えていたら、吹き飛ばされた姿を見た姉妹が俺に過剰な反応で駆け寄ってきた。
「お兄様!!」「アクセル!!」
ただ蹴られて尻もちついただけなのに、目を血走りながら身体をペタペタと壊れない物を扱うかのように触ってくる。な、なんか大げさすぎないか?姉さんなんて少し涙目で過呼吸を起こしそうじゃないのか?
「あ、あく、アクセル!大丈夫よね?お、お姉ちゃんをを置いて.....お、いて...はぁ...はぁ.....あ、あぁぁ......」
「ね、姉さん?大丈夫だから?ただ突き飛ばされただけですから」
過呼吸になりそうな姉さんを落ち着かせていると、複数の笑い声が聞こえる。あの男たちだ。
「ハハハハハっ!こんなヒョロヒョロなガキに必死にこいてやがる!こいつはぁ遊び甲斐がありそうだ」
「ほらっそーんなガキよりも俺たちと一緒に遊ぼうぜ~」
「「.....」」
プチンっ
きっと音が聞こえるとしたら何かがきれたものだろう。
さっきまで阿鼻叫喚のような様子から一変、二人とも気味が悪いほどに黙っていた。
表情は俯いてるせいで見えないが......本能が告げてる。
これはまずい、と
するとソフィアが何かの魔法を発動させ、複数人の男とともに浮き始めた。
「うわっ!な、なんだ!?」
「か、身体が勝手に!」
今度は男達が騒いでる中、二人が何かを話している。
「....ソフィア、私達をどこかに飛ばせないかしら?ここだと、流石にまずいわ」
「....えぇ、問題ありません。もとより、そのつもりでしたから」
二人の驚くほど感情が読み取れない声に驚いていると、マリア姉さんがこちらを振り返って申し訳なさそうに話しかけてきた。
「ごめんねアクセル?ちょっとお姉ちゃん達、この人達に用ができたの。
その間、少し待っててね?」
そう告げてその場にいた俺以外の人物は宙を飛び、どこかに飛んでいった。
「....あの人達、生きてるかな?」
自業自得とはいえ、二人の本気の怒りをぶつけられるであろうナンパ男達もことを少し気の毒に思いながら俺はその間買い物をするだった
「...お?これ、ソフィアに似合いそうだな.......」
◇
気づいた時には見知らぬ草原にいた。
どうしてこんな所にいるのかが気づかず、普通は異常事態だが目当ての人物が目の前にいたことで、そんなこと考えていなかった。
「へ、へへっ何があったかは知らないが、都合がいいぜ。あのガキがいなくなったんだからな」
そう呟くと、他の奴らも同調したのかさっきまで焦りに散らかしていた顔が下品極まりない顔に変貌する。
「....また、お兄様をガキ呼ばわりと....」
今も殺さんとばかりのオーラを出して、ソフィアは問うが、鈍感すぎるのが良かったのかそれとも悪かったのか、そんなこと露知らずに返答をする。
「なんだ?あのガキのことが好きなのか?見る目ないなぁ、あんな奴のどこがいいのやら」
きっとここにアクセルがいたのなら「おい、どういうことだこら」と反応して少しはマシになったかもしれない。ただここにいるのは、異常なほどアクセルという存在に好意を抱いてる者のみ。
その暴走を止めようとする存在はここにはいない。
「....私のことも知らないのね」
もし、マリアのことを知っていたらおそらくこのような下品極まりない行動をすることはなかっただろう。しかし、この男たちが王都に来たのはつい最近、それに情報もろくに取ろうとしなかったため、マリアのこと.....英雄ブリュンヒルデのことなど何も知らなかった。
「さぁ、俺らと時間いっぱい良いことたくさんしようぜ!」
そう言い男たちは二人に近づこうとした....否、近づけなかった。
その瞬間、突然バランスを崩したかのように倒れたからだ。
「痛っ!くそっなん..........だ..................」
動けるはずもあるまい。それもそうだろう
―――脚という動くための部位が目の前に落ちていたのだから。
「あ、ぁぁぁあああああ!!痛い、痛い痛い痛い!!!」
脚が斬られたと認識した途端、男たちは騒ぎ始める。
一人は涙を流し、一人は痛みを通り越して気絶してる者色々な反応があった。
「うるさいですよ...お兄様を侮辱したのですからこれくらい当然ではないですか?」
男たちの脚を切断させた原因であるソフィアは何も感じないのか、無機質なロボのように表現を変えず淡々と伝えている。
「ソフィア、やりすぎよ。私にも残してほしかったわ」
「お姉様がやると、跡形もなく消し去るのでは?それなら私がした方が良いですよ。それに殺さなければなんとでもなります」
そう言いながら二人は近づいていく。さっきまで遊びの対象だった二人は男たちにとって恐怖へと移り変わることになる。
「ま、待て、待ってくれ!俺たちが悪かった!だ、だから命だけは....!」
「なにを言ってるのかしら?」
必死の命乞いを無慈悲に断ち切るかのようにマリアは語る。
「これはあなた達が始めたことでしょう?それならここで責任から逃れるなんて、できるわけないと思うわよ?....それに、アクセルを傷つけた....許せるわけないでしょう?」
その時、初めて気がついた。
二人から漏れ出る殺意と憎しみのオーラに、男たちはただただ恐怖に震えるしかなかったのだ。ただ仕方ないだろう。彼らは踏んではいけない龍の尾を何も知らずに踏んでしまったのだから。
「.....お兄様を侮辱したこと」
「....アクセルを傷つけたこと」
「「その身を持って罪を償いなさい」」
あ、あぁ.....察しただろう。自分たちは決してしてはいけないことをしたのだと。
そんな後悔を抱きながら、彼らは彼女らの怒りが収まるまで、身を持って味わい続けるのだった。
◇
一方、遠くで男達の絶叫という叫び声が王都まで聞こえた頃アクセルは
「....これなんか姉さんに似合うんじゃないか?結構好きそうだし」
―――のんびり買い物を楽しんでいた。
原作では姉マリアを毒殺をしたことで知られている。
ただ、このキャラを知っているのはごく一部だろう。
原作でのメインキャラは家族の中では俺とソフィアだ。マイナーキャラである姉は勿論、その人物を殺した奴のことなんて以ての外だ。
俺は元々、アクセルファンということもありこいつのことは知っているつもりだ...アクセルの家族を殺害したというレッテルがあるから今にも殺したいわけだが....
「.....姉さん、この人は?」
ここで騒ぎを起こせば潰したい奴らも潰せない。
悔しいが、身を削る思いで耐えることにして姉さんに聞く。
「....セミカっていう、よく私にちょっかいを掛ける奴よ、正直少し苦手だわ」
苦虫を潰したような顔をして言うが、それを聞いた彼女は表情を変えて
「嫌ですわマリアさん。本人の前で苦手だなんて...私、悲しいです」
およおよと、今にも涙を流しそうな表情をしながらそんなことを言う。
...表面上は、だが。
今はっきりと理解した、こいつは敵だ。
読んでいた時にずっと感じていたこの忌々しい気配....奴らにそっくりだ。
「あなたが私に付きまとうからでしょ?そもそも私はあなたとは関わりたくないの。
本当に勘弁してちょうだい....」
「そんな冗談言わないでくださいマリアさん。私達の仲なのに....ですがまぁ今日の所は引きましょうか」
そう言ってセミカは俺たちに背を向けて歩き出そうとしている。
「あぁそれと...マリアさんの弟君?」
だが、最後に俺に用があるのか、顔だけこちらを向けてくる。
「マリアさん、とても凄い人よね?これからもずっと一緒に居れるといいね」
それだけ言って今度こそ去っていった。
......くそっ最後に嫌な気配を纏いながら変なことを言いやがって。
俺が敵セミカに向けて隠していた殺意を向けていると、姉さんが俺を抱きしめてきた。
「?姉さん?」
何故急に抱きしめてきたのかが分からず、困惑している間、姉さんは何かを暗唱するようにぶつぶつと呟いてる
「....大丈夫よお姉ちゃんが絶対に守ってあげるから....もうあんな悲劇に遭わせないわ.....大丈夫.....大丈夫だから」
それは普通に見れば怖がっている弟を姉さんが宥めているようにも見える。
だが、何故か俺には姉さんがなにかを怖がってるようにしか思えなかった。
もう失敗しないように、もう失わないようにと自分自身に言い聞かせてるような....
そんな疑問を抱きながらも俺はセミカの後ろ姿を見送り、その後姉さんと一緒にさっきまでいた噴水の所に行くのだった。
◇
「……これは、どういうことですか?」
殺意ビンビン、目は真っ黒に濁り、表情は絶対零度と言わんばかりな顔をして俺の方を見ているソフィアさんがいる。
俺、何か悪いことした?
再び噴水に向かうと、そこには常に準備が出来ていたのか、以前デートした時とは違い、薄いカーディガンを羽織り、それに加えてふんわりとしたスカートを身に纏っている妹の姿がある。
普通の人なら人目ぼれしてもおかしくないだろう。事実、ソフィアの姿に惚けている人が多数だ。きっとそんな人と近づきたいと思ったのだろうな、何人かの男性が近づこうとした時、俺の存在に気づいたソフィアがパァッと明るくなりながら寄ってくる。
「お兄様!お待ちしておりました!さぁいま…か…ら…で…………も………………」
だが、俺の隣に姉のマリアの存在を認知した瞬間、とてつもない寒気とともに今さっき話したソフィアの様子となっていた。
「……これはどういうことですか?」
うん、とっっっってもこわいね?
身体中が冷や汗でいっぱいになりながらも、とりあえず説明だけはしなければと思い話そうとすると、先に姉さんが話し始める。
「あら、アクセルから聞いてたけどソフィアもいたのね。随分と成長しちゃって...お姉ちゃん嬉しいわよ」
「マリアお姉様、お久しぶりでございます。私もお姉様にお会いできて嬉しいです....ですがなぜ、お兄様と一緒にいるのでしょうか?」
再び背筋がゾッとするこの感じ....おかしい、この人たち仲が良いんじゃないのか?さっきまで近づこうとしてきた奴らはソフィアの様子を見て、即時に離れ始める。おいっお前らやるなら最後までやりきれ。
「そこの噴水でアクセルを見かけたのよ。成長した弟の姿に感動したわ。
それでさっきまで、アクセルとの時間を楽しんでいたのところよ」
「....オニイサマトノジカン、デスカ?」
ソフィアの視線が姉から俺へと移る。視線がじりじりと感じ、心を鷲掴みにされている気分になってしまう....怖いよ?
「お兄様?ソフィアをほったらかしにしてお姉様と楽しんでいたのですか?
ソフィアはとても楽しみにしていましたのに....どうしてソフィアのことを見捨てるのですか?」
「いや、違う。断じて違うぞソフィア?俺も今日はソフィアと一緒に回る予定だったし楽しみではあったぞ。でも姉上に連れて行かれて.....」
「....アクセルは私と会えて....嬉しくなかったの?」
「いや姉さん?違いますからね?姉さんと会えること自体はとても嬉しいですよ?でも流石にタイミングが悪いというかなんというか....」
「お兄様?」
「アクセル?」
.....どうして俺が一番悪いみたいなってるんだ?
その後、暴走した姉妹をなんとか宥めるのに数十分はかかった。
俺が一番泣きたいのに......
◇
二人をなんとか宥めて、今俺たちは三人で王都を周っている。
構図としては左からソフィア 俺 姉さんだ。
うん挟まれることにはある程度予想はしていたが.....
「....」
「....」
.....何故か普通に王都を周っているはずなのに、ここまで空気が悪いことがあるのだろうか?しかも家族でだぞ?赤の他人ならいず知らず、やっぱこの人たち仲悪いんじゃないのかな?
そんな空気の最中、まるでなにも見えていないのか、複数の男性が近寄ってきた。
こいつら、度胸あるなぁとか考えていたら急に話しかけられた。
「おいおい、男一人にこんな群がる必要ねえってぇ。なあお嬢ちゃんたち、こんなガキよりも俺たちと来ないか?良いこと教えてやるからよ~」
「そうそう、こんな平凡でなんの変哲のないガキに構う必要ないから...よっ」
すると、一人の男性が俺を足で突き飛ばしてくる。
考え事をしていたせいか、受け身をとれずそのまま倒れてしまった。
「いてっ」
ありゃりゃ吹き飛ばされてしまった。まぁ痛くも痒くもないからどうってことないかとか考えていたら、吹き飛ばされた姿を見た姉妹が俺に過剰な反応で駆け寄ってきた。
「お兄様!!」「アクセル!!」
ただ蹴られて尻もちついただけなのに、目を血走りながら身体をペタペタと壊れない物を扱うかのように触ってくる。な、なんか大げさすぎないか?姉さんなんて少し涙目で過呼吸を起こしそうじゃないのか?
「あ、あく、アクセル!大丈夫よね?お、お姉ちゃんをを置いて.....お、いて...はぁ...はぁ.....あ、あぁぁ......」
「ね、姉さん?大丈夫だから?ただ突き飛ばされただけですから」
過呼吸になりそうな姉さんを落ち着かせていると、複数の笑い声が聞こえる。あの男たちだ。
「ハハハハハっ!こんなヒョロヒョロなガキに必死にこいてやがる!こいつはぁ遊び甲斐がありそうだ」
「ほらっそーんなガキよりも俺たちと一緒に遊ぼうぜ~」
「「.....」」
プチンっ
きっと音が聞こえるとしたら何かがきれたものだろう。
さっきまで阿鼻叫喚のような様子から一変、二人とも気味が悪いほどに黙っていた。
表情は俯いてるせいで見えないが......本能が告げてる。
これはまずい、と
するとソフィアが何かの魔法を発動させ、複数人の男とともに浮き始めた。
「うわっ!な、なんだ!?」
「か、身体が勝手に!」
今度は男達が騒いでる中、二人が何かを話している。
「....ソフィア、私達をどこかに飛ばせないかしら?ここだと、流石にまずいわ」
「....えぇ、問題ありません。もとより、そのつもりでしたから」
二人の驚くほど感情が読み取れない声に驚いていると、マリア姉さんがこちらを振り返って申し訳なさそうに話しかけてきた。
「ごめんねアクセル?ちょっとお姉ちゃん達、この人達に用ができたの。
その間、少し待っててね?」
そう告げてその場にいた俺以外の人物は宙を飛び、どこかに飛んでいった。
「....あの人達、生きてるかな?」
自業自得とはいえ、二人の本気の怒りをぶつけられるであろうナンパ男達もことを少し気の毒に思いながら俺はその間買い物をするだった
「...お?これ、ソフィアに似合いそうだな.......」
◇
気づいた時には見知らぬ草原にいた。
どうしてこんな所にいるのかが気づかず、普通は異常事態だが目当ての人物が目の前にいたことで、そんなこと考えていなかった。
「へ、へへっ何があったかは知らないが、都合がいいぜ。あのガキがいなくなったんだからな」
そう呟くと、他の奴らも同調したのかさっきまで焦りに散らかしていた顔が下品極まりない顔に変貌する。
「....また、お兄様をガキ呼ばわりと....」
今も殺さんとばかりのオーラを出して、ソフィアは問うが、鈍感すぎるのが良かったのかそれとも悪かったのか、そんなこと露知らずに返答をする。
「なんだ?あのガキのことが好きなのか?見る目ないなぁ、あんな奴のどこがいいのやら」
きっとここにアクセルがいたのなら「おい、どういうことだこら」と反応して少しはマシになったかもしれない。ただここにいるのは、異常なほどアクセルという存在に好意を抱いてる者のみ。
その暴走を止めようとする存在はここにはいない。
「....私のことも知らないのね」
もし、マリアのことを知っていたらおそらくこのような下品極まりない行動をすることはなかっただろう。しかし、この男たちが王都に来たのはつい最近、それに情報もろくに取ろうとしなかったため、マリアのこと.....英雄ブリュンヒルデのことなど何も知らなかった。
「さぁ、俺らと時間いっぱい良いことたくさんしようぜ!」
そう言い男たちは二人に近づこうとした....否、近づけなかった。
その瞬間、突然バランスを崩したかのように倒れたからだ。
「痛っ!くそっなん..........だ..................」
動けるはずもあるまい。それもそうだろう
―――脚という動くための部位が目の前に落ちていたのだから。
「あ、ぁぁぁあああああ!!痛い、痛い痛い痛い!!!」
脚が斬られたと認識した途端、男たちは騒ぎ始める。
一人は涙を流し、一人は痛みを通り越して気絶してる者色々な反応があった。
「うるさいですよ...お兄様を侮辱したのですからこれくらい当然ではないですか?」
男たちの脚を切断させた原因であるソフィアは何も感じないのか、無機質なロボのように表現を変えず淡々と伝えている。
「ソフィア、やりすぎよ。私にも残してほしかったわ」
「お姉様がやると、跡形もなく消し去るのでは?それなら私がした方が良いですよ。それに殺さなければなんとでもなります」
そう言いながら二人は近づいていく。さっきまで遊びの対象だった二人は男たちにとって恐怖へと移り変わることになる。
「ま、待て、待ってくれ!俺たちが悪かった!だ、だから命だけは....!」
「なにを言ってるのかしら?」
必死の命乞いを無慈悲に断ち切るかのようにマリアは語る。
「これはあなた達が始めたことでしょう?それならここで責任から逃れるなんて、できるわけないと思うわよ?....それに、アクセルを傷つけた....許せるわけないでしょう?」
その時、初めて気がついた。
二人から漏れ出る殺意と憎しみのオーラに、男たちはただただ恐怖に震えるしかなかったのだ。ただ仕方ないだろう。彼らは踏んではいけない龍の尾を何も知らずに踏んでしまったのだから。
「.....お兄様を侮辱したこと」
「....アクセルを傷つけたこと」
「「その身を持って罪を償いなさい」」
あ、あぁ.....察しただろう。自分たちは決してしてはいけないことをしたのだと。
そんな後悔を抱きながら、彼らは彼女らの怒りが収まるまで、身を持って味わい続けるのだった。
◇
一方、遠くで男達の絶叫という叫び声が王都まで聞こえた頃アクセルは
「....これなんか姉さんに似合うんじゃないか?結構好きそうだし」
―――のんびり買い物を楽しんでいた。
38
お気に入りに追加
427
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる