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第38話 到着 王都ラスティア

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屋敷の外に出ていると、どうやら俺のことを待っていたらしい。常に父上、母上、ソフィアや護衛の騎士が外に待機していた。

ちなみにユニーレはローレンスとは別の頼み事をしている。最近、貴方と一緒にいられないのだけど?と少し不服そうだったが、結構重要ことだったのでなんとか了承させた。今はここにはいない。



「すみません、遅くなりました」

「いや、まだお迎えは来てないから大丈夫だよ」
と言いつつも、少し苦笑気味になっている父が見える。どうやら俺は時間感覚がおかしいらしい。

「お兄様はさっきまで何をなされたんですか?」

「少し街の光景を見ていたんだ」

「街の光景、ですか?」

「あぁ、いつも平和なこの街がずっと続くといいなって思ったんだ」

「……きっと平和で居続けられますよここなら」

ナーシャからの迎えが来るまでソフィアとそんな会話をする。

原作ではアクセルはこの街にも裏切られたが、やはり自分の故郷でもあるのだろうか、平和で居続けて欲しい思いがある。

しばらく経つと、遠くから馬車らしき物が複数こちらに向かってくるのが見えた。
周りには侯爵の騎士らしき人物たちが何人も見える。
一応、こちらにもジークとレイス、そしてなんとあのナンパ師のモルクもいる。

ジークの話によると、どうやら自分から志願したようだ。珍しいこともあるのだな

と、もう目の前まで来ていたらしい。
馬車の扉を開くと、そこには3年前の昔の面影を残しながらも、ソフィアと並んでも見劣りすることない程の美貌を放っていたナーシャの姿がある。

肩まで伸びていた髪も少し伸びており、一目で令嬢と分かるかのようなオーラを醸し出してる。服やアクセサリーのような身につけてるものもどれも一般の人にはとてもではないが手に入ることが出来ない品物だろう。だが、そこに品の無さは感じず、むしろ彼女にこそ着けるべきと言ってるかのようにマッチしている。
流石は侯爵令嬢であり、メインヒロインでもあるわけか。

「お待たせしました。カロナイラ家、ただいま皆様をお迎えに参りました」

ナーシャの隣にはその動作だけでも一切の隙を見せつけない執事がいた。
きっと侯爵家に仕えてるのだろう。長年してきたというのもあり、圧感としか言いようがない。

「お久しぶりです、マエル様。遅くなり申し訳ありません」

「やぁナーシャ様、私たちも今準備したところだよ。それにしてもしばらく見ない間にとても麗しい淑女になられましたね。」

「まぁ、そんな。マエル様にお褒めになられるとは、とても光栄です。ありがとうございます」

父の言葉に対して、彼女は膝を曲げてスカートの裾を軽く持ち上げて頭を下げ、お礼をする。
その動作だけでも彼女が高貴な貴族ということを再認識してくれる。

そして誰かを探してるのか、頭をキョロキョロとさせ、俺の姿を見るやいなや表情がぱあっと明るくなったり、よく見ると頬を染めていたりして俺に近づいてくる。

「…ご無沙汰しております、アクセル様。
この数年、貴方に会えることを心待ちにしておりました」

さっき父上と話してたのとは違う、少し緊張してるような、そして嬉々としてる様にも見えた。

彼女の様子に疑問を抱きながらも俺も返事を返す。

「ご無沙汰しております。ナーシャ様
私もこの機会を待ち望んでいました」

俺がそう答えると、さらに頬が赤く染まり、目線を晒し、聞こえるか分からない程の声でボソッと呟いた。

「そ、そうですか……そう言っていただいて嬉しい限りです……」

すると俺の顔をまじまじと見ながらさっきまでの落ち着いていた雰囲気はどこに行ったのか身体をソワソワとしている。

「……」

何故か寒気をしたので隣を見るとソフィアの目から生気が消える瞬間が目に入った。
周りでも父や母が少し騒いでるように見える
耳を澄ますと……どうやら婚約者云々らしい。
執事の人も驚いてるように見えた。
あの男嫌いのお嬢様が……と呟いてる。
ナーシャって男嫌いだっけ?いやでも確かに原作でもアレスにしか素を見せてなかったような……

とにかくこの空気を変えるためにナーシャに早く行くように促す。

「ナーシャ様、私達の方も準備が出来ております。そろそろ出発なされてもいいのでは?」

そう言うと、彼女はそ、そうですね!となにかを紛らわすように声を出し、俺たちを馬車に乗せるように声を出す。

「では皆様、早速ご出発しますので、足元に気をつけて馬車にお乗りください」

そして俺たちはナーシャの言った通りに複数の内の一つにそれぞれ乗り、王都に向かったのだった。





「アクセル様アクセル様。アクセル様はどんな女性が好みでしょうか?」

「髪の長さは短い方でしょうか?それとも長い方でしょうか?」

「最近やられてることは?私は最近本を読んでおります、身分違いの者達の恋愛話なのですが、とても良いものです」

……馬車に入ってからのナーシャはまさしくマシンガントークとも呼んでもいいだろうと思えるスピードで、俺に話しかけている。

「な、ナーシャ様?そんなにはな「ナーシャです」……え?」

「ナーシャと、お呼びください。ここでは無礼講です。数年前の約束をお忘れですか、騎士様?」

「…勘弁してくださいナーシャ。そんなに話されても答え切れませんよ」

「まぁ、すみません!アクセル様とお会いすることができて、つい胸が高まり…」

「……」
隣ではもう今まで見たことがないのではないか?と思わせる程の殺気を飛ばしている妹がいる。

ちなみに今俺の馬車にいるのは
俺、ソフィア、ナーシャだ。
執事は何故か父達と同じ所に乗り、とても分け隔てなく話してるように見える。
俺もそっちに行きたい、でもそれをさせてくれないかのように、両隣で俺の腕を自分の体に押し付けている人達のせいで何もできない。


「……随分と、お兄様と仲がよろしいのですね、ナーシャちゃん?」

ゾクッ!
ソフィアから聞いたこともないドスの聞いた声でナーシャに話しかけてきた。
こ、怖い……

「ふふっソフィアちゃん。そんな顔しないでください。私達との仲じゃないですか」

一方ソフィアの殺気やドスの聞いた声に一切の動揺を見せないナーシャが話しかける。
というか2人とも知り合いだったのね
お兄ちゃん驚いたよ


「そんなの関係ありません。誰であろうとお兄様に近づく者なら……容赦はしません」

「ふふっソフィアちゃんは怖いなぁ。アクセル様、どうか私の騎士としてお守りしてくれませんか?」

「えっ、いやそんなこと言われましても…」

というかいつから貴方の騎士になったんだよ?元々誰かにつくつもりは……
い"ぃ"ぃ!?

「……お兄様?お兄様はソフィアのそばからいなくなりませんよね?そうですよね?ソフィア達約束しましたもんね、必ずソフィアの元へ帰ってくると、大丈夫ですお兄様。疑っているわけではありません。ですが、こんな疑心暗鬼の妹のことをどうか許してください。もしお兄様が他の女狐の所に行くと考えるだけで寒気を催します。あの時もそうでした。お兄様がいない二年もの間、生きた心地がしませんでした。でも今はこうしていてくれています。とても嬉しいです、幸せです……そんなソフィアから………離れるなんて、しませんよね?」

あ、あぁぁ……うちのソフィアさんがかつてのブラコンモードに入ってしまった。これは止めることが……というか以前よりも俺に対する想いが増していないか?
ソフィアに対して、内心あわあわしてるとナーシャも俺の腕を引き寄せる力が強くなる


「いけませんよ、ソフィアちゃん。そんな束縛気味ではアクセル様に負担がかかってしまいます。さぁアクセル様、ラスティアに着くまで私たちはゆっくりとこの旅路を楽しみましょう?」


グググッ!!
い、痛い、痛い痛い痛い痛い!?
2人が俺の腕を思いっきり引っ張ってくるせいで腕が悲鳴をあげている……!

「お兄様?」 「アクセル様?」
2人は上目遣いで見てくるがそれに答える暇は今の俺にはなく………

(た、助けてくれ……)
そんな、誰かに届くわけでもない声を心の中で吐きながら、馬車の中を過ごすのだった。





気が着いたら王都ラスティアに着いていた。
こ、ここからが正念場のはずなのに今の俺にはそんな意気込む元気がなく、ダラ~としている。

ソフィアもソフィアでどこか機嫌が悪いのか眉をひそめてる。
ナーシャはどうやら平常運転らしい。

「王都に着きましたので、皆さまにはこれからカロナイラ家の屋敷に留まっていただきます。ではご案内をいたします」

執事の人が率先して俺たち家族を屋敷まで案内するようだ。

「…お兄様」

「な、なんだい?」

「…時間があれば、一緒に王都を周りませんか?」

今も不機嫌そうな、でも少し寂しそうなソフィアが俺に聞いてくる。
ナーシャに取られて嫉妬をしたのだろうか?

「いいぞ。久しぶりの王都だしな。一緒に周ろうか」

「ッ!はい!」
俺がそう答えると、先ほどとは打って変わりソフィアの顔が明るくなり、ニヤけながら歩き始めた。こんなチョロくて良いのか妹よ。

ただ俺も王都にを周るのはこれが初めてだから……ひとまず楽しもうかな?

そう思いながら、俺も歩き始めたのだった。

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