上 下
70 / 83

第七十二話 ミニミニ探偵お二人さん

しおりを挟む
 美容院に入ると、女性の軽快な挨拶が聞こえる。

 美容院では、1人の女性店員が働いており、他に客はいないようだ。おそらく彼女が武蔵綾乃たけくらあやのだろう。
 
 武蔵「今日はどういたしましょうか?」

 そう女性店員が声をかけてくる。

 月島「事件について聞きに来たんですけど、晩野さんどうしましょう?」

 晩野「まずは客として入るのが礼儀であろうな。」

 月島「そういうものなんでしょうか…?じゃあ、散髪お願いします!」

 武蔵「かしこまりましたー。3番のお席へどうぞー。そちらはの方はどうされますか?」

 晩野「私は大丈夫だ。」

 月島くんが席へ座ると「今日はどのように切りましょうか?」と聞いている。私は近くの椅子へと座り、二人の会話に耳を傾ける。

 月島「最近変な噂流れてません?えーと、辻斬り男の方じゃなくて…」

 武蔵「あぁーあれですよね?殺人現場に現れるって言う女の噂」

 月島「そうそれです!その黒髪の女性ってこういう公の場とかに来たりするのでしょうか?」

 武蔵「流石にお店にはきたことないんですけど…実は私、多分それらしい人に会ったことあるんですよ」

 月島「え!?そうなんですか!?ど、どこで見たんですか??」

 武蔵「この近くの明野港で見たんですよ。仕事に遅れそうになってたから急いでたんですけど、曲がり角で偶然ぶつかっちゃって。顔はサングラスとマスクでわからなかったんですけど…なんか、珍しい指輪つけてましたね。

 月島「指輪ですか?」

 武蔵「なんか、一瞬だったんですけど。すっごい地味な指輪でした。光ってないし、茶色だし」

 月島「茶色ってことは木製なんですかね?」

 武蔵「言われてみればそうかも?」

 武蔵は自信なさげにそう答える。

 武蔵「あと、その日の帰りに、港の船着き場でも見ましたね。もう深夜近くだったと思うけど。なんか、船に乗ってどっか行っちゃって。一応警察には通報しましたけどね」

 月島「その船ってどこに行ったんですか?」

 武蔵「ああ、多分方向的に明野小島に行ったんじゃないかと思ってますね」

 月島「明野小島、聞いたことありません…」

 武蔵「私も詳しくは知りませんが、今はただの無人島らしいです。港の人間もあそこには全然近づかないですね。島の周りは海流が荒れているそうで、何度かひっくり返りそうになってる漁船もありましたから。まあ詳しいことは漁船の船長に聞くといいです。いつも船着き場にいるので。あっ、散髪終わりましたよー」

 月島「いい感じですありがとうございます!」

 なるほど、ここで船着き場、明野小島の新たな探索個所の開示か。

 晩野「(月島くん、彼女は私たちが救えなかった武蔵瑞希の娘さんだ。亡くなった母の情報について知っていることがあるかもしれない。探りを入れてくれ)」

 月島「(無茶ですっで!ただでさえ親族が亡くなったっていうのにその話を詮索するなんて)」

 晩野「(おそらく、彼女もこちら側が何らかの探りを入れているということは既にばれているだろう。彼女からも疑いの眼差しが来た場合はこちらの事情を説明し、理解をしてもらう必要がある。彼女の持つ情報次第でこの非日常の筋書きをあぶり出すことができるかもしれないからね。)」

 月島「(お話に困ったらそっちに視線送りますからね)」

 晩野「(無論、そちらが困るタイミングはわかりきっている。その時になれば、私も動こう。)」

 月島「この美容院って一人で経営してるんですか?」

 武蔵「何人かいますけど今日は1人ですね。あまり人も来ないところなので」

 月島「じゃあ、今一人で働いてるあなたが店長さんなんですか?」

 武蔵「はい、昔、店長は母がやっていました。」

 月島「家族経営ですか?」

 武蔵「えっと、そうではないんですが…母は昨日亡くなりまして」

 月島「昔ってことは、亡くなる前は何のお仕事をしていらしたんですか?」

 武蔵「母は町長の秘書をやってました」

 月島「母親とはここ最近会ったんですか?」

 武蔵「……もう、母とは何年か会ってないですね。あんまり仲がなくなくて、町長からは褒められてたみたいですけど、家族に対してはそう言う感じでもなかったんで」

 月島「仕事熱心な方だったんですね…」

 武蔵「実は私…3年前に勘当されちゃったんです」

 月島「何かあったんですか?」

 《心理学ロールが実行できます。》

[晩野
 心理学(5)→決定的成功クリティカル(1)
 心理学(5)→失敗(33)
 成長2d10→11
 心理学(5)→(16)]

 〈綾乃の態度が変化していることに気が付きます。どうやら赤の他人の貴方達に不信感を抱いているようだ。〉
 
 やはり気付いていたか。

 武蔵「もしかして皆さんは警察の方ですか?」

 月島「それは…」

 武蔵「えっと…では、マスコミか何かですかね?」

 晩野「私たちは、春田飛嘉野という警察医から明野町連続殺人の調査の協力を依頼されている中川探偵事務所のメンバーだ。」

[晩野
 信用(60)→成功(52)]

 晩野「私たちは君の母、武蔵瑞希を目の前で亡くしてしまった。救えなかった。突然のことだった。非礼ならいくらでも受けよう。しかし、このままでは君のような身内に不幸が訪れる人間が増えてしまう。だから、私たちに情報提供という形で協力してほしい。」

 武蔵「そうでしたか…確かあの事件の目撃者も3日以内に死亡しているんでしたね。それで、母のことなどを聞いてきたんですね」

 月島「それに関してはすいませんでした。こちらとしても心苦しかったですし。何より辛い記憶をえぐる様なことをしてしまい…」

 武蔵「私でよければ是非協力させてください。でも残念ですが、私も勘当されてから母のことは何も知りませんでした。殺されたって聞いた時は驚きましたけど…私から母について話せるのは、母は町長や町の人からは、仕事ができる真面目な人として頼りにされていたみたいです。だから町長からはよく重要な仕事を任されてましたね」

 晩野「重要な仕事?それは?」

 武蔵「ダム建設ですよ。知りませんか?」

 月島「私たち高校の部活でここに来た時に巻き込まれちゃって。ここのことについては何も知らなくて…」

 武蔵「皆さん学生さんだったの!?しかも高校生!?なんかやけに大人っぽくない?えーと、話がそれちゃったわね、なんか、明野町の山奥にダムを作ろうって話なんです。前にもそのような話があったみたいなんですが、その再開の手伝いを任されていたんです。建設会社との調整とか色々」

 晩野「政倉建設株式会社には、伊角さんたちが向かっていたはず…」

 武蔵「まあ詳しい話は分かりませんが。もし詳しく知りたいのなら、明野町役場に行くといいと思います。運が良ければ町長に会えるかもしれませんね。」

 月島「これからもワンオペだと危なくないですか?もう一人くらい雇った方がいいんじゃないでしょうか?」

 武蔵「そうですよね。今度バイトでも雇ってみようと思うんです。やっぱり人手不足なので」

 晩野、月島「ご協力ありがとうございました!」

 武蔵「そうですか!ならよかったです。事件解決に向けて頑張ってください、小さい探偵さんたち」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

処理中です...