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第五十話 月の獣は恋がしたい!

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 同刻、月島獣子の部屋。
 悟が何とか正気を保とうと切磋琢磨している一方、月島は悟に思いを馳せていた。
 やっている事は悟と同じく、ベッドの枕に顔を埋めながら、足をバタつかせていた。

 月島「悟さんの返答を恥ずかしさのあまり聞かずに逃げ走ってしまった……返事返してくれるかな?」

 彼女にとっては、初めてのことだった。恥ずかしいと思う気持ちも仕方がなかったのだ。
 ムーンビーストとして活動していたときは、人並みの他者を愛しいと思う感情は持ち合わせてなどはいなかった。
 彼らが持つのは、他者を拷問し、痛めつけることによる愉悦と主神を讃える賛美の二つぐらいしかなかった。
 しかし、ギャラとホテルの力によって人の姿を与えられ、心も人へと近づいた月の獣は、そこで初めて恋心を理解する。

 あの時、本来の主のもとで戦うか、記憶を消したある意味、純粋な状態で、共に行動した仲間として戦うか迷っていた。

 その彼女に向けられた悟の本心からの彼女と言う存在の肯定に彼女は彼に心を奪われた。

 そのことに気づき始めるのは、そう早いことでもなかった。
 人間世界を学び、始めてから一ヶ月と少しの間徐々に彼女はその気持ちを理解し、彼に対して意識を向けるようになった。
 
 そして今日、彼女は大好きな彼を遊園地にデートに誘って、返事を聞くよりも、先に逃げてしまったことに同時に後悔をしていた。
 
 そんな状態の月島に通知が届く。

      昨日
 悟(今日のご飯何がいい?)16:20既読

 月島(ハンバーグが食べたいです!)16:21

 悟(りょうかーい。部活頑張れよ!)16:22既読
 
 月島(ᕦ(ò_óˇ)ᕤ)16:22

      今日

 悟(遊園地、ンガイの森?の件だけど、いつ行く?)19:56既読

 月島(行けるなら今週の土曜日がいいです!その日は部活がないので。)20:05

 悟(オッケー。)20:06既読

 
 月島「やった!OK貰えた!!伊角さんに報告しなくちゃ!」

 そう言って彼女は伊角へと報告するため電話をかける。

 月島「伊角さん!デートOK貰いました!!」

 伊角「良かったじゃないか。これも私のアドバイス通りだったかな?」

 月島「はい!推しに弱いって本当でした!」

 伊角「じゃ、後はデート用の服選びだね。」

 月島「それなら大丈夫です。これで行くって決めてるものがあるので。」

 伊角「えぇーどんなの?」

 月島「それは秘密です。」

 伊角「ケチだなー。ま、デート頑張ってね。」

 月島「はい!!!」
 
 そう言って彼女は電話を切ってウキウキしながらベッドへと入り眠りにつく。

 
 報告を終えた伊角は再び手下の作業を再開した。

 部屋に乱雑に置かれた読み込まれた、使い込まれた様々な魔導書と多くの何かを作るための機械に囲まれた薄暗い研究室の机の上での動作の最終チェックを行う。

 伊角「ネクロノミコンからの呪文の抽出及び、AF:キャラシメーカーとの接続を確認。変身用ミトスカード、TMC:ヒューマン認証完了、全身装甲:ミトスボディの生成及び装着成功、対防振音源変換装置異常なし………」

 長い動作チェックを終えて、一息ついた伊角は不敵な笑みを浮かべ

 伊角「ようやく完成した。後は悟に使ってもらって真の意味で完成することになる…世界の破壊を防ぐ……彼の野望を…阻止できる……」

 再び決意する、この時代に来た目的と復讐を……
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