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じゃあ、俺は誰だ?
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少し、見てほしいものがある。
そう呼び出され、私は友人の家まで来ていた。
何か彼の家に忘れたっけなぁ、位に思っていたのだがどうにも違うようだ。彼の家に入れば、入ってきた私のことなど無視をしてパソコンの画面に齧りつき、何か隠しきれない動揺を見せていた。
そばにはカメラが置いてあったが、それは踏み抜かれたように砕けてもう使い物にはならないだろう。
困ったような彼に近づけば、ようやく気がついたのか彼はとにかく座ってくれと自身の隣に座布団を乱暴に叩きつけた。
何があったんだ。
そう尋ねれば、彼は頭を抑えながらとにかく見てくれとパソコンを押し付けてくる。
なんだか言い表せない怖じ気を感じ、私は彼のパソコンを跳ね返し、今日は帰ると強情に部屋を出ようとした。しかし、彼はなんとしても見てもらうと私を離すことはなく、根負けした私が事情を聞くこととなった。
発端は、彼の好奇心だった。
彼は、幼少の頃から頻繁とは言わないが、割と多い頻度で金縛りになる体質だった。しかし、彼はこれをやれ幽霊の仕業だとか騒ぐこともなく、生理的なものだろうと結論づけて金縛りが起きてもそのまま寝て流していた。しかし、大学に入り一人暮らしをするようになって、僅かばかりの恐怖が彼に襲いかかった。そして同時に湧き出たのは、未知への好奇心だった。
金縛りにかかった自分は、何をしているのだろうか?
そして、よく見る怪談話のように寝ているところを撮影して、なにか映ればいい話の種になるんじゃないかと、巫山戯半分で録画をしてみることにした。
そして、録画を開始してから1週間の今日に思い出したように見てみようと思って確認をしていたところ、おかしな所があると私を呼び出したそうだ。
ことのあらましを聞いて、私はAが夢遊病にでもかかってしまったのかと思ったが、とにかく見てくれとパソコンを押し付けられた。
嫌々パソコンを受け取って、録画ファイルをクリックした。
彼の部屋はワンルームで、いかにもな大学生の一人暮らしの部屋だ。その部屋全体を映すように、壁際にカメラを設置していた。割と高性能のカメラで、暗視モードも搭載されていて、寝ている彼の顔もはっきりと視認できた。
一日目二日目と、倍速で見ていく。その映像には特に問題はなくおかしな所はない。あるのはたまに寝返りを打つ彼の姿だけ。そう彼に言えば、本題は四日目だという。
渋々四日目の時間まで飛ばし、彼が寝始めた1時から再生する。
そこから30分は何も起きず、ただ彼が寝ている映像が流れているだけ。割と長い時間拘束されていた私は、苛つきを抑えきれず、彼に早く問題のところを見せろと催促をした。すると彼は、苦い顔を浮かべてカーソルを2時から3時の場所に移動させた。
その映像も変わらず、なにもないじゃないかと彼に視線を向ければ、「こっからだ」なんて返事が帰ってきた。
変化は、すぐに現れた。
べットに眠る彼の手が、天井に向かってピンと伸ばされた。
私は、こんなのよくある寝相だと思ったが、それだけじゃ終わらなかったのだ。
数分すれば、またよくある怪談のように、ベットの下から黒い影がスルリと這い出てきた。血の気が引いた私はAに視線を向けるが、彼は「いいから」と見続けるように促した。
10分ほどだろうか。ベットの下にい続けた影は霧散するように消えていき、また静寂と手を天井に伸ばした彼だけが映った。
その影が消えてから、特に何も起きることなく5分が経過した。下のバーを見るともう終わりに差し掛かっている。そのことに安堵しながら、なんてものを見せてくれたんだと、彼に文句でも言ってやろうと思考しているときに、彼がカメラを消すシーンが映り映像は終わった。
そうしてホッと一息。
そして、文句の声を漏らそうと彼を見ればやはり腑に落ちない顔をしながら、カーソルを終わり間近に戻した。
ここを見てくれと、何度も言う彼に私は彼がカメラを止めるシーンを繰り返し眺めた。
なんのことはない。その映像は、ただ彼が画面外から現れて、カメラの停止ボタンを押す姿がアップで写っているだけ。これのどこがおかしいのかわからなかったが、二度三度と見返すうちに、おかしな事に気がついた。
停止ボタンを押す彼の後ろに映るべットから、天井に伸びる彼の手が写り込んでいる。
停止した思考で、必死に考えを回し、何度もその映像を巻き戻し何度も確認した。
けれど、彼はベットから一歩も動いていないのだ。そう、一歩も。
思えば最初からおかしかった。この映像は、彼が暮らすワンルームの部屋全体を写すように壁際のギリギリから撮影している。そんな場所で、どうやって画面外から姿を表したのか。
背中に嫌な汗が流れ、全身の血の気が引いた。
そうして固まる私に、彼は耳元で囁くように零した。
「────じゃア、オレハ誰ダ?」
そう呼び出され、私は友人の家まで来ていた。
何か彼の家に忘れたっけなぁ、位に思っていたのだがどうにも違うようだ。彼の家に入れば、入ってきた私のことなど無視をしてパソコンの画面に齧りつき、何か隠しきれない動揺を見せていた。
そばにはカメラが置いてあったが、それは踏み抜かれたように砕けてもう使い物にはならないだろう。
困ったような彼に近づけば、ようやく気がついたのか彼はとにかく座ってくれと自身の隣に座布団を乱暴に叩きつけた。
何があったんだ。
そう尋ねれば、彼は頭を抑えながらとにかく見てくれとパソコンを押し付けてくる。
なんだか言い表せない怖じ気を感じ、私は彼のパソコンを跳ね返し、今日は帰ると強情に部屋を出ようとした。しかし、彼はなんとしても見てもらうと私を離すことはなく、根負けした私が事情を聞くこととなった。
発端は、彼の好奇心だった。
彼は、幼少の頃から頻繁とは言わないが、割と多い頻度で金縛りになる体質だった。しかし、彼はこれをやれ幽霊の仕業だとか騒ぐこともなく、生理的なものだろうと結論づけて金縛りが起きてもそのまま寝て流していた。しかし、大学に入り一人暮らしをするようになって、僅かばかりの恐怖が彼に襲いかかった。そして同時に湧き出たのは、未知への好奇心だった。
金縛りにかかった自分は、何をしているのだろうか?
そして、よく見る怪談話のように寝ているところを撮影して、なにか映ればいい話の種になるんじゃないかと、巫山戯半分で録画をしてみることにした。
そして、録画を開始してから1週間の今日に思い出したように見てみようと思って確認をしていたところ、おかしな所があると私を呼び出したそうだ。
ことのあらましを聞いて、私はAが夢遊病にでもかかってしまったのかと思ったが、とにかく見てくれとパソコンを押し付けられた。
嫌々パソコンを受け取って、録画ファイルをクリックした。
彼の部屋はワンルームで、いかにもな大学生の一人暮らしの部屋だ。その部屋全体を映すように、壁際にカメラを設置していた。割と高性能のカメラで、暗視モードも搭載されていて、寝ている彼の顔もはっきりと視認できた。
一日目二日目と、倍速で見ていく。その映像には特に問題はなくおかしな所はない。あるのはたまに寝返りを打つ彼の姿だけ。そう彼に言えば、本題は四日目だという。
渋々四日目の時間まで飛ばし、彼が寝始めた1時から再生する。
そこから30分は何も起きず、ただ彼が寝ている映像が流れているだけ。割と長い時間拘束されていた私は、苛つきを抑えきれず、彼に早く問題のところを見せろと催促をした。すると彼は、苦い顔を浮かべてカーソルを2時から3時の場所に移動させた。
その映像も変わらず、なにもないじゃないかと彼に視線を向ければ、「こっからだ」なんて返事が帰ってきた。
変化は、すぐに現れた。
べットに眠る彼の手が、天井に向かってピンと伸ばされた。
私は、こんなのよくある寝相だと思ったが、それだけじゃ終わらなかったのだ。
数分すれば、またよくある怪談のように、ベットの下から黒い影がスルリと這い出てきた。血の気が引いた私はAに視線を向けるが、彼は「いいから」と見続けるように促した。
10分ほどだろうか。ベットの下にい続けた影は霧散するように消えていき、また静寂と手を天井に伸ばした彼だけが映った。
その影が消えてから、特に何も起きることなく5分が経過した。下のバーを見るともう終わりに差し掛かっている。そのことに安堵しながら、なんてものを見せてくれたんだと、彼に文句でも言ってやろうと思考しているときに、彼がカメラを消すシーンが映り映像は終わった。
そうしてホッと一息。
そして、文句の声を漏らそうと彼を見ればやはり腑に落ちない顔をしながら、カーソルを終わり間近に戻した。
ここを見てくれと、何度も言う彼に私は彼がカメラを止めるシーンを繰り返し眺めた。
なんのことはない。その映像は、ただ彼が画面外から現れて、カメラの停止ボタンを押す姿がアップで写っているだけ。これのどこがおかしいのかわからなかったが、二度三度と見返すうちに、おかしな事に気がついた。
停止ボタンを押す彼の後ろに映るべットから、天井に伸びる彼の手が写り込んでいる。
停止した思考で、必死に考えを回し、何度もその映像を巻き戻し何度も確認した。
けれど、彼はベットから一歩も動いていないのだ。そう、一歩も。
思えば最初からおかしかった。この映像は、彼が暮らすワンルームの部屋全体を写すように壁際のギリギリから撮影している。そんな場所で、どうやって画面外から姿を表したのか。
背中に嫌な汗が流れ、全身の血の気が引いた。
そうして固まる私に、彼は耳元で囁くように零した。
「────じゃア、オレハ誰ダ?」
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