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番外編
愛しい子
しおりを挟むお腹が大きくなって、予定日に近づいてきたある日の真夜中の事。
体の異変に気がついて目が覚めた。
ここ最近、お腹が張る感覚や時折痛みがあって、もしかして陣痛!?と思っていたのにいつの間にか無くなったり。
けれどなんとなく、今回のは違うと思って、心臓をバクバクさせながら、慌てて寝ている凪さんの肩を揺らす。
「ん、真樹……?」
「っ、痛い、お腹……っ」
自分のお腹を抱えるようにすると、凪さんは飛び起きて俺の体を擦る。
「今痛くなったばかり?」
「ん、今、痛くて起きた……お腹痛い……」
「わかった。痛みが落ち着いたら教えてね。一緒にいるからね」
そうして彼にお腹をさすられてしばらく、痛みが治まってベッドに寝転がる。
水を持ってきた彼にそれを飲まされた。
治まったとはいえ、痛かったおかげでどっと疲れた。
「凪さん、手握って」
「うん。いつもの痛みと違う感じがする?」
「なんか……うん。思い違いかもしれないけど……」
「もしかしたら産まれるのかもしれないね。体勢苦しくない?」
「大丈夫……」
ぎゅっと凪さんの手を握る。
段々と不安な気持ちが大きくなってきた。
それが彼には伝わったようで、眉を八の字にして見つめてきたかと思うと、優しく頭を撫でてくれる。
凪さんと話をして暫くすると、続けて痛みが襲ってきては治まり、悶えては脱力する。
その間隔が短くなってきて、凪さんを見上げるとスマートフォンを手に取っていた。
「病院に連絡してくるよ。」
「ここにいてっ、怖い……」
「うん。ちゃんと傍にいるよ」
いつの間にか溜まっていた涙が零れ、彼はそれを拭うと病院に連絡をしてくれる。
病院からは「来てください」とだけ言われ、凪さんに支えられながら家を出て車に乗った。
■
病院に着くと陣痛室に入れられて、そこでまた痛みと戦う。
凪さんが手を握ってくれたり、腰を押してくれたり、そうして俺を励ましてくれて、気がつけば朝の七時。
ようやく分娩室に入って台に乗った。
「っ、ぁ、痛い、痛い……っ!」
「真樹、もうちょっとだからね、頑張って!」
「うっ、ぁ、あぅぅ……っ」
痛くて、辛くて、苦しくて、彼に励まされながら、先生の合図で息んで──ある時フッと体が楽になった。
凪さんが泣いて俺の手を強く握る。
放心しながら、彼を見ていると聞こえてくる赤ちゃんの泣き声。
「え……」
「真樹、真樹!男の子だ!」
「……赤ちゃん……ぁ、赤ちゃん、うまれた……!」
隣に寝かされた赤ちゃんを見て、涙がとめどなく溢れる。
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