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番外編
プラネタリウム
しおりを挟む空になった入れ物を捨てて、いよいよお楽しみの時間。
機械をセットしている間に蒼太は何が始まるか気付いたらしく、隠せない程にソワソワしている。
「じゃーん。プラネタリウム。前に星が見えないって言ってたから、俺の家で見れるようにしてみましたー!」
「すっごく嬉しい!」
電気を切って蒼太の隣に座り電源を入れると、真っ暗な部屋にいくつもの光が広がった。
蒼太の腕が俺の腕に絡みついて、一瞬胸がうるさいくらいに音を立てた。
けれど彼は光に夢中で、部屋をジーッと眺めている。
「すごい、綺麗……」
「……気に入った?」
「うん……。ありがとう、ヒロくん。」
「本物じゃないけど、喜んでくれてよかった。今度は本物見に行こうね。」
「ヒロくんの家で見れる星も綺麗だよ。こうやってくっつける、し……?」
突然バッと腕が離れて、蒼太が驚いた顔をしていた。
どうしたんだ、と思いきや俯いて黙り込んでしまう。
「蒼太……?」
「ご、ごめんなさい!嬉しくて、勝手に腕を……」
「何で謝るのさ。嬉しいよ。もっとくっ付いていい?」
「……うん」
そっと蒼太を抱き寄せて、体をピッタリくっつける。
見える頬にキスをすると、目を見開いて固まっている。
「……ねえ、蒼太」
「ぁ、な、何っ?」
「今日、泊まっていかない?」
白い光がポツポツと蒼太を照らしている。
頷いてくれるだろうか。
不安を感じながら返事を待っていると、蒼太がキュッと俺の服を掴む。
「と、泊まらせて、ください。」
望んでいた返事に、胸が弾んで、思い切り抱きしめた。
「うっ」と小さなうめき声が聞こえて、慌てて腕を離す。
「ごめん。つい……」
「ううん。……あの、泊まるって、ことは……」
「うん。蒼太とエッチなことしたい。」
視線を彷徨わせる彼に、小さく首を傾げる。
「ダメ?」
「ぅ……ダメ、じゃないぃ……」
両手で顔を覆った蒼太。
明かりがないから定かではないけれど、きっと今の彼の顔は真っ赤だ。
プラネタリウムを充分堪能してから、蒼太に先にお風呂に入ってもらう。
俺はというと、少しアセアセしながら、ベッドメイキングをやってみた。
たった今ネットで調べてやったにしては上出来だと思う。
リビングで蒼太がお風呂から出てくるのを待っていると、しばらくして静かに、コソコソと足音が聞こえて。
振り返ると、「お風呂ありがとう」と照れたように微笑む彼がいて。
「っ、可愛い……」
俺の恋人が俺の服を着てる。
少しダボッとしているのが目に毒だ。
フーッと息を吐いて、蒼太に「こっちおいで」とソファーに座ってもらう。
「テレビでも見て待っててね。」
「うん」
そう言って俺もお風呂に入ろうとして、足を止めた。
「蒼太」
「何……?」
「無理してたり、嫌になったなら待ってなくていいからね。」
もし、蒼太が嫌なのに俺に合わせて頑張ってくれようとしているなら、それは違う。
お互い理解した上で、愛し合いたい。
蒼太の返事を聞くことなくリビングから出た。
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