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番外編
蒼太と洋哉
しおりを挟む次会う時にはいつもの自分に戻っていないと。
──なんて思っていた僕は考えが甘かった。
「ねえ、何で避けるの?」
「ぁ……」
あれから数日、僕はヒロくんを避けに避け続けた。
というのも、顔を見ると夢の事を思い出してしまって、恥ずかしいのはもちろん、最近は触りたいという欲が出てきてしまったからである。
けれどついに捕まった。
一階のフロントで俯きながら歩いていた僕の手を掴んだ彼は、』今日は絶対に逃がさない』とでも言うような表情をしている。
彼にしては珍しくこの後の予定を聞いてくることも無く、どこに行くのかも告げずにずんずんと歩いていく。
手を掴まれている僕はついて行く他なくて、気がつけばヒロくんの自宅にお邪魔していた。
「ねえ、ちゃんと俺の事見て。何か、嫌な事しちゃった?……もしかして、キスしたのが嫌だった……?」
「ち、違う!」
ようやく顔を上げて、ヒロくんを見る。
すごく寂しそうな顔をしていて、申し訳なくなった。
完全に僕が悪い。ヒロくんにそんな表情をさせてしまう自分が嫌だ。
「あ、あの……引かないで、聞いてくれる……?」
「うん」
だから全部話す事にした。
避けていた理由と、その理由について謝罪しないと。
やけに生々しい夢だった事を話した。
その夢を見てしまったから、どんな顔をしてヒロくんと会えばいいのか分からなかったことと、今の僕の気持ち。
「えーっと、じゃあ、蒼太は俺とエッチしてる夢を見て、それに申し訳なさを感じて、俺を避けていた、と?」
「……うん。それに、最近じゃヒロくんを見るとその……ムラムラ、すると、言いますか……」
「へぇ。俺を見るとムラムラするんだ?」
いたずらっ子の様にニヤニヤする彼を見て、グッと唇を噛む。
「間違えた。違う。ちょっと触りたくなるだけ」
「間違ってないでしょ」
恥ずかしい。俯くとヒロくんの顔が近付いてきて、頬にキスをされた。
それから視線が絡まって、唇にも。
触れるだけのキスだけれど、緊張して胸が痛い。
「蒼太にもっと触っていいの?」
「ぅ……さ、触られる、と、嬉しい、かも……」
「かも?……こうしてキスされるの、嫌じゃない?」
「んっ!嫌じゃない……」
きゅっ、とヒロくんの服を掴む。
ヒロくんは口元に笑みを浮かべて「嬉しい」と言った。
「嬉しい?本当……?嫌じゃない?」
「嫌じゃないよ。蒼太がそう思ってくれてるのが嬉しい。ねえ、もっとキスしたい。」
「い、息ができなくて、苦しくなるのは、嫌だ」
「鼻で呼吸するんだよ。大丈夫、すぐに慣れる。」
すぐに唇が塞がれた。
少しして離れるだろうと思いきや、ヒロくんの舌が僕の唇をノックする。
薄く目を開けて彼を見ると、まるで『開けて』と言っているような目をしていて、彼のシャツの皺が濃くなるのも気にせずに手に力を入れながら、口を開けた。
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