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番外編

蒼太と洋哉

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 ***


 初めてキスをしたその日の夜、夢を見た。
 ヒロくんとエッチなことをする夢だ。


 この前のような触れるだけのキスではなくて、深く絡まるようなそれを繰り返して、温かくて大きな手が体を撫でてくれる。
 トロトロになった僕を抱き締めて、熱いそれに穿かれた。
 気持ちよくて泣きながら彼に「もっと」と強請って、最後には項を噛まれ、番になれる……そんな、幸せな夢。


 目を覚ますと後孔が濡れていて、朝から呆れて溜め息が出た。
 けれど今日は休み。ゆっくり休んでも問題無い。
 少し体が快楽を欲しているみたいで、下履きの中に手を入れて濡れた後孔に触れる。

 自慰をするのは初めてじゃない。今までの発情期だって薬でどうしようもできない時は自分で紛らわしていた。


「っ、ん……」


 後孔に指を挿れて内壁を触る。
 二本指を揃えてピストンすると、それだけでも気持ちよくてペニスがユルユルと勃ち始めて。


「うっ、ぁ、はぁ……」


 ペニスを扱きながら、後孔に埋まる指で前立腺に触れた。そっと撫でるだけなのに達してしまいそうになって、鼻から抜けるような声が漏れた。


「は、はぁー……っぁ、っ、あっ!」


 我慢できずに射精して、汚れた手をティッシュで拭う。


「……嫌になりそう」


 変な夢を見ただけじゃなく、自慰までするなんて。
 起き上がってお風呂に入り、体を綺麗にして朝食を摂る。
 ご飯を食べて美味しいと感じながら、夢の中でヒロくんとしたエッチがあまりにも気持ちよかったと思い出す。


「はぁ……」


 これは暫く、ヒロくんの顔が見れない。
 どういう顔で会えばいいのかが分からない。
 夢の中でエッチをしていたなんて、口が裂けても言えない。



 ────なのに。



 二日経った今日、出勤したと同時にヒロくんとばったり出会した。


「おはよう、蒼太。」
「ぁ、お、おはよう……」


 目を合わせられない。
 顔を背けていると、ヒロくんが僕の顔を覗き込んできた。



「大丈夫?体調悪い?」
「っち、違う……大丈夫。今日も頑張ろうね。」
「?、うん」


 ニッコリ笑って、それからエレベーターに乗り目的の階に移動する。

 元々はしたない事をして顔を合わせることを躊躇っていたのに、変な態度をとってしまったからもっと気まずくなった。

 完全に馬鹿野郎だ。


 デスクに腰かけ、溜息を吐く。
 次会う時にはいつもの自分に戻っていないと。


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