183 / 208
番外編
蒼太と洋哉
しおりを挟む
***
転職して漸く研修を終えたある日、ヒロくんに誘われて夜ご飯を食べに行く事になった。
何度か家で会って発情期になる兆候は無かったから、もう大丈夫だろう判断して。
フロントのソファーに座って待っていると、肩をトンと叩かれて振り返る。
「お疲れ様。」
「ヒロくんもお疲れ様」
「……イイ」
「イイ?」
ぼんやりとしている彼はどうやらお疲れの様子。
もう一度名前を呼ぶと、ハッとしてから「どこ行く?」と聞いてきた。
「あれ、ヒロくんが何か食べたい物あったんじゃないの?」
「え、いや、別に。」
「そうなんだ。えっと……じゃあ……何だろう?」
「好きな食べ物何?俺は焼鳥」
「じゃあ焼鳥を食べに行こうよ。僕も好きだよ」
外食で焼鳥は初めてかもしれない。
焼鳥なら、行くのは居酒屋だろうか。
正直居酒屋も片手で数えられるくらいしか行ったことがない。
「じゃあ、俺のオススメの店でいい?」
「うん。もちろん」
ヒロくんが案内してくれる隣で、初めての外食での焼鳥にワクワクする。
「なんか楽しそうだね。」
「あの、実は外食で焼鳥に行くのが初めてで、すごく楽しみ。」
「え、そうなの?……わ、その笑顔可愛すぎるからちょっとタイム。」
「は?」
「俺本当、可愛いものを見ると堪らなくなるんだよ。」
「……変なの」
これまでの人生でそんなに可愛いと言われた記憶もなければ、実際自分の顔を見てそう思ったことがない。
ヒロくんはアルファだからか、オメガの僕が魅力的に見えてしまうようだ。
「蒼太君、手を繋いでもいいですか……?」
「え、えっと、外、ですけど……」
「ダメ?」
「う……。いいよ」
その綺麗な顔で聞かれて断れるはずが無い。
もとから断りたいとは思っていなかったけれど、外で手を繋ぐのは男同士だということもあって、少し気が引ける。
差し出された手に手を重ねる。
優しく握られて、胸がキュンっとした。
「あとちょっとで着くよ」
「うん」
多分、顔が赤くなっている。
そんな顔を見られたくなくて、唇を内側に隠して俯いた。
転職して漸く研修を終えたある日、ヒロくんに誘われて夜ご飯を食べに行く事になった。
何度か家で会って発情期になる兆候は無かったから、もう大丈夫だろう判断して。
フロントのソファーに座って待っていると、肩をトンと叩かれて振り返る。
「お疲れ様。」
「ヒロくんもお疲れ様」
「……イイ」
「イイ?」
ぼんやりとしている彼はどうやらお疲れの様子。
もう一度名前を呼ぶと、ハッとしてから「どこ行く?」と聞いてきた。
「あれ、ヒロくんが何か食べたい物あったんじゃないの?」
「え、いや、別に。」
「そうなんだ。えっと……じゃあ……何だろう?」
「好きな食べ物何?俺は焼鳥」
「じゃあ焼鳥を食べに行こうよ。僕も好きだよ」
外食で焼鳥は初めてかもしれない。
焼鳥なら、行くのは居酒屋だろうか。
正直居酒屋も片手で数えられるくらいしか行ったことがない。
「じゃあ、俺のオススメの店でいい?」
「うん。もちろん」
ヒロくんが案内してくれる隣で、初めての外食での焼鳥にワクワクする。
「なんか楽しそうだね。」
「あの、実は外食で焼鳥に行くのが初めてで、すごく楽しみ。」
「え、そうなの?……わ、その笑顔可愛すぎるからちょっとタイム。」
「は?」
「俺本当、可愛いものを見ると堪らなくなるんだよ。」
「……変なの」
これまでの人生でそんなに可愛いと言われた記憶もなければ、実際自分の顔を見てそう思ったことがない。
ヒロくんはアルファだからか、オメガの僕が魅力的に見えてしまうようだ。
「蒼太君、手を繋いでもいいですか……?」
「え、えっと、外、ですけど……」
「ダメ?」
「う……。いいよ」
その綺麗な顔で聞かれて断れるはずが無い。
もとから断りたいとは思っていなかったけれど、外で手を繋ぐのは男同士だということもあって、少し気が引ける。
差し出された手に手を重ねる。
優しく握られて、胸がキュンっとした。
「あとちょっとで着くよ」
「うん」
多分、顔が赤くなっている。
そんな顔を見られたくなくて、唇を内側に隠して俯いた。
77
お気に入りに追加
1,972
あなたにおすすめの小説

朝起きたら幼なじみと番になってた。
オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。
隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた
思いつきの書き殴り
オメガバースの設定をお借りしてます


たしかなこと
大波小波
BL
白洲 沙穂(しらす さほ)は、カフェでアルバイトをする平凡なオメガだ。
ある日カフェに現れたアルファ男性・源 真輝(みなもと まさき)が体調不良を訴えた。
彼を介抱し見送った沙穂だったが、再び現れた真輝が大富豪だと知る。
そんな彼が言うことには。
「すでに私たちは、恋人同士なのだから」
僕なんかすぐに飽きるよね、と考えていた沙穂だったが、やがて二人は深い愛情で結ばれてゆく……。

花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています

ベータですが、運命の番だと迫られています
モト
BL
ベータの三栗七生は、ひょんなことから弁護士の八乙女梓に“運命の番”認定を受ける。
運命の番だと言われても三栗はベータで、八乙女はアルファ。
執着されまくる話。アルファの運命の番は果たしてベータなのか?
ベータがオメガになることはありません。
“運命の番”は、別名“魂の番”と呼ばれています。独自設定あり
※ムーンライトノベルズでも投稿しております

とろけてまざる
ゆなな
BL
綾川雪也(ユキ)はオメガであるが発情抑制剤が良く効くタイプであったため上手に隠して帝都大学附属病院に小児科医として勤務していた。そこでアメリカからやってきた天才外科医だという永瀬和真と出会う。永瀬の前では今まで完全に効いていた抑制剤が全く効かなくて、ユキは初めてアルファを求めるオメガの熱を感じて狂おしく身を焦がす…一方どんなオメガにも心動かされることがなかった永瀬を狂わせるのもユキだけで──
表紙素材http://touch.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=55856941

Ωの不幸は蜜の味
grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。
Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。
そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。
何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。
6千文字程度のショートショート。
思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜
白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。
しかし、1つだけ欠点がある。
彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。
俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。
彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。
どうしたら誤解は解けるんだ…?
シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。
書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる