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第175話
しおりを挟む二時間に渡る会議がそろそろ終わりそうだ。
凪さんが締めの挨拶をすれば、そこで会議が終わり解散となった。
俺はドアを開けて全員が退室したのを確認して、また椅子に座る。
議事録を保存して、誰も忘れ物をしていないか見回り、最後に会議室を出た。
「お疲れ様」
「──っわ!吃驚した……」
会議室を出てすぐ、凪さんがいて驚いた。
先に帰っていると思っていた。
「体調はどう?」
「あ……大丈夫です。ちょっと熱っぽいかなぁとは思うけど、特に。それより専務は?」
「薬を飲んだから大丈夫だよ。会議の後いつも最後までごめんね。これが真樹の仕事っていうわけでは無いのに……。ありがとう」
「いえ、これくらいなんとも。」
一緒にエレベーターに乗ってデスクに戻る。
作成途中だった議事録を纏め、印刷をしてファイルに綴じた。
時刻は午後四時半。
あともう少し……。ふぅ、と息を吐けば珈琲が目の前に置かれた。
「お疲れ様。一旦落ち着いたね。」
「ありがとうございます」
珈琲をいれてくれた中林さんにお礼を言って、砂糖とミルクをいれて飲むと、少しホッとする。
「あともう少し頑張ろう!これが終われば明日も明後日も休みだよ!」
「そうだね。頑張ろう」
そう言ってデスクに戻って行った彼女を見てから、これを提出しに凪さんの元へ行こうと腰を上げる。
その時、心臓がやけにドクドクと大きな音を立て始めて、一瞬息が苦しくなった。
まずい、と思うけれど、ここには抑制剤が無い。
凪さんのアルファ専用の抑制剤を飲めば少しはマシになるだろうか。
専務室に入り、凪さんが眉を寄せたのを見て申し訳なくなる。
「あの、抑制剤……専務の飲むの、ダメですか……?」
「ちょっと待って」
パソコンで何かを検索している。
多分、副作用の事を見てくれているんだと思う。
「うーん……ちょっと、どうなんだろう。体辛い?」
「いえ、まだ我慢できるんですけど……帰りがまずい、かも?」
とりあえず、ファイルを凪さんのデスクに置き、少し距離を取る。
「とりあえず、そろそろ仕事も終えるし、まだやる事はある?ないならここで横になっていてもいい。」
「いや……中林さんに迷惑が掛かるので、もう少しやってきます。」
「わかった。あ、蒼太君は?持ってるんじゃないか?抑制剤」
「あ、本当だ。」
急いでメッセージを送り聞いてみると、彼は抑制剤を持っていた。
凪さんに貰ってくると言って部屋を出て、中林さんにも声を掛ける。
「ごめんなさい、ちょっと出てきます。」
「はーい」
急いで蒼太に指定された場所に行く。
そこに着くと蒼太が俺を見つけてヒラヒラと手を振ってくれた。
「大丈夫?発情期始まったの?」
「始まったわけじゃないんだけど、急にフェロモンが漏れてるって凪さんが。」
「あちゃ。これ飲んで」
「ありがとう」
有難く頂いて、一安心だと息を吐く。
「ねえ真樹、橋本さんとの事なんだけど……」
「あ、うん。どうなったの……?」
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