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第161話
しおりを挟む「堂山見て、やばい。この店高級過ぎない?」
「俺も思った」
普段外食をする時に見るメニュー表。そこに書かれてある値段はいつも見るものより桁が多い。
「俺こんなお金もってきてないんだけど。下ろしてきていい?」
「いや、あの……専務の奢りです。」
「うわぁ……。俺本当、専務大好き。前から堂山に対する姿勢とか見て、好感しか無かったけど、また好きになった。」
「俺も凪さん好き。」
「……いや、そういう話じゃない。」
飲み物と料理を頼む。
さっきまではしゃいでいた橋本は、突然真剣な顔をして見てくるから、改めてお礼を言おうと思って俺もふざけるのをやめた。
「助けてくれてありがとう。」
「大袈裟だよ。俺は専務に何かあったのか聞きに行っただけだから。」
「それでも、橋本のお陰で助かったんだ。」
「じゃあ……有難く『ありがとう』を貰っとく。」
「うん。」
お酒が運ばれてきて、乾杯をした。
早速口に入れると、飲みやすさに感動して、空きっ腹だと言うのにごくごく飲んでしまう。
「あ、ダメだって。また酔っ払うよ」
「これ美味しい」
「美味しいけど、ちゃんと考えて飲まないと。また専務に迎えに来てもらわないといけなくなるよ。」
「……確かに。凪さんに飲み過ぎ注意って言われた。」
美味しくてついつい飲んでしまったが、確かに彼には注意をされていた。
「専務は堂山の事が好き過ぎるから心配なんだろうな。その気持ち俺には痛いほど分かる。だって堂山可愛いもん」
「何でだろう。凪さんに言われる『可愛い』は嬉しいのに、他の人だと嬉しくない。凪さんの言う『可愛い』が特別に聞こえる。」
「間違いなく特別なんでしょうよ。」
グビっとお酒を飲んだ彼は、また俺を見つめて、それから小さく溜息を吐く。
「俺も番が欲しい。好きな人には尽くすよ、俺。」
「そうだろうね。優しいもん」
「絶対に裏切らないって約束できる。一途だから」
「一途なんだ?」
少し笑って聞き返せば、橋本も同じように笑う。
「……知らない。番ができたことが無いし、好きな人とかも別に居ないし。恋人が欲しいとは思っても、実際そうなるような相手もいない。」
「あー、それわかる。俺も凪さんと恋人になるまではそうだった。」
実際付き合える人は居ないし、そのせいで寂しくなって、その寂しさを埋めるために仕事をしていた気もする。
「でも、番が欲しいの?」
「……違うな。恋人がほしい。その相手の性別がオメガだったら、番になりたい。」
「橋本ならきっと相手を大切にするから、早くそんな人に出会えたらいいね。」
「うん」
ちょうど話に区切りが着いた時に料理が運ばれてきて、その豪華さに驚く。
スマートフォンを取り出して写真を撮る橋本は、お酒も入ったせいか、興奮しだして、止まらない彼の話を聞きながら食事をした。
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