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第154話
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何をされるか分からない恐怖から、緊張した状態のまま夜になり朝を迎えた。
一睡も出来なかった俺の前に、三森が「飯」と言って食べ物を持ってくる。
「……いらない」
拒否すれば、苛立った様子で舌打ちをされたあと、ガッと顔を掴まれ口に無理矢理パンが押し付けられる。
「っ、ぃ、た……っ」
昨日殴られた頬が掴まれたことで痛んで、不意に口を開け入ってきたパンを食べた。
「初めから大人しく食ってろ」
「……」
睨まれて、睨み返す。
三森はジッ……と俺を見下ろすと、いきなり服の中に手が差し込まれてギョッとした。
「んぐ……っ、やめろっ」
「やめない」
口の中にあるそれを飲み込み、三森の手が胸に触れた時グッと唇を噛んだ。
「なあ、どうやって番に抱かれてんの」
「っ、」
「オメガのお前が下なんだろ?」
「う、るさい……っ」
痛いくらいに乳首を抓られる。
顔を横にしてギリッと噛み締めて痛みを我慢する。
「ぃ、っ、」
「痛いだけじゃないんだろ」
じんわり目に涙が浮かぶ。
下履がずらされ、体を横にし丸めてそこを隠していると強く尻を叩かれる。それがあまりにも屈辱的で涙が零れた。
そんなとき。
「……チッ、またかよ」
タイミングよく来客を知らせる音が鳴る。
また宅配だろうか。
そう思いながら静かに泣いていると、玄関先が騒がしくなった。
何やら言い合いをしているみたいだ。
けれどその内幾つもの足音が聞こえてきて、突然部屋のドアがうるさく開けられる。
驚いて目を見開く俺の視界には、知らない男性がいて、彼はこちらを見下ろして声を上げる。
「保護しろ」
男性の傍に居た数人の人が、俺にちゃんと服を着せ、拘束を解いていく。
何が起こっているのかわからずにぼんやりしているうちに凪さんがやって来て勢いよく抱き締められた。
「ごめん。遅くなった」
「……なにが、おこって……」
上手く反応出来ず、彼の背中に手を回せないでいる。
凪さんは俺の体を撫でて「どこも痛くない?」と聞いてくるのだが、上手く声が出ない。
「おい嘉陽。とりあえず恋人連れてここから出ろ。話すのはその後だ。もしあいつが暴れたら面倒臭い。」
「わかった。」
凪さんに抱かれ、外に出る。
パトカーが多く停まっていた。
「……あの人達は警察?」
「ああ。真樹には後で話すけど……計画していた案の最悪なパターンになった。」
「……?」
「後で話すよ。それより……首。これ……苦しかったな。」
凪さんの車の後部席に運ばれ、そっと首に触られる。
苦しかったことを思い出して、胸が締め付けられるような痛みに襲われ、思わず彼の手を叩いて、首を左右に振った。
「首、触らないで」
「……ごめん。真樹、これで顔隠して。ここでちょっと休んでて」
凪さんの羽織っていたジャケットを預かり、言われた通りに顔を隠す。
バクバクしていた心臓が彼の香りを匂ったおかげで落ち着いていく。
「ロックはかけてあるから、俺が戻ってくるまでここから動かないでね。」
「……うん」
凪さんが外に出て、鍵を閉める。
後部席に寝転んで音を遮断しようと耳を手で塞いだ。
そのままどれくらい時間が経ったのか、ロックが解除された音が小さく聞こえて体を起こした。
「真樹、お待たせ。家に帰るよ。」
「……三森は?」
「あとは警察側が対応してくれる。三森が何かをしていた証拠は、あの部屋に十分ある。」
「……警察の人、凪さんを嘉陽って呼んでた。」
「高校の頃の同級生。名前は守屋。明日家に話に来る事になってる。」
車が動き出し、マンションに向かう。
三森をどうにかするのに、彼は色々準備をしてくれていたのに、思っていた以上にあっさりと終わった。
全てが終わったら安心出来るはずなのに、実感が無い。
それどころか未だに不安が残っている。
一睡も出来なかった俺の前に、三森が「飯」と言って食べ物を持ってくる。
「……いらない」
拒否すれば、苛立った様子で舌打ちをされたあと、ガッと顔を掴まれ口に無理矢理パンが押し付けられる。
「っ、ぃ、た……っ」
昨日殴られた頬が掴まれたことで痛んで、不意に口を開け入ってきたパンを食べた。
「初めから大人しく食ってろ」
「……」
睨まれて、睨み返す。
三森はジッ……と俺を見下ろすと、いきなり服の中に手が差し込まれてギョッとした。
「んぐ……っ、やめろっ」
「やめない」
口の中にあるそれを飲み込み、三森の手が胸に触れた時グッと唇を噛んだ。
「なあ、どうやって番に抱かれてんの」
「っ、」
「オメガのお前が下なんだろ?」
「う、るさい……っ」
痛いくらいに乳首を抓られる。
顔を横にしてギリッと噛み締めて痛みを我慢する。
「ぃ、っ、」
「痛いだけじゃないんだろ」
じんわり目に涙が浮かぶ。
下履がずらされ、体を横にし丸めてそこを隠していると強く尻を叩かれる。それがあまりにも屈辱的で涙が零れた。
そんなとき。
「……チッ、またかよ」
タイミングよく来客を知らせる音が鳴る。
また宅配だろうか。
そう思いながら静かに泣いていると、玄関先が騒がしくなった。
何やら言い合いをしているみたいだ。
けれどその内幾つもの足音が聞こえてきて、突然部屋のドアがうるさく開けられる。
驚いて目を見開く俺の視界には、知らない男性がいて、彼はこちらを見下ろして声を上げる。
「保護しろ」
男性の傍に居た数人の人が、俺にちゃんと服を着せ、拘束を解いていく。
何が起こっているのかわからずにぼんやりしているうちに凪さんがやって来て勢いよく抱き締められた。
「ごめん。遅くなった」
「……なにが、おこって……」
上手く反応出来ず、彼の背中に手を回せないでいる。
凪さんは俺の体を撫でて「どこも痛くない?」と聞いてくるのだが、上手く声が出ない。
「おい嘉陽。とりあえず恋人連れてここから出ろ。話すのはその後だ。もしあいつが暴れたら面倒臭い。」
「わかった。」
凪さんに抱かれ、外に出る。
パトカーが多く停まっていた。
「……あの人達は警察?」
「ああ。真樹には後で話すけど……計画していた案の最悪なパターンになった。」
「……?」
「後で話すよ。それより……首。これ……苦しかったな。」
凪さんの車の後部席に運ばれ、そっと首に触られる。
苦しかったことを思い出して、胸が締め付けられるような痛みに襲われ、思わず彼の手を叩いて、首を左右に振った。
「首、触らないで」
「……ごめん。真樹、これで顔隠して。ここでちょっと休んでて」
凪さんの羽織っていたジャケットを預かり、言われた通りに顔を隠す。
バクバクしていた心臓が彼の香りを匂ったおかげで落ち着いていく。
「ロックはかけてあるから、俺が戻ってくるまでここから動かないでね。」
「……うん」
凪さんが外に出て、鍵を閉める。
後部席に寝転んで音を遮断しようと耳を手で塞いだ。
そのままどれくらい時間が経ったのか、ロックが解除された音が小さく聞こえて体を起こした。
「真樹、お待たせ。家に帰るよ。」
「……三森は?」
「あとは警察側が対応してくれる。三森が何かをしていた証拠は、あの部屋に十分ある。」
「……警察の人、凪さんを嘉陽って呼んでた。」
「高校の頃の同級生。名前は守屋。明日家に話に来る事になってる。」
車が動き出し、マンションに向かう。
三森をどうにかするのに、彼は色々準備をしてくれていたのに、思っていた以上にあっさりと終わった。
全てが終わったら安心出来るはずなのに、実感が無い。
それどころか未だに不安が残っている。
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