甘えたオメガは過保護なアルファに溺愛される

ノガケ雛

文字の大きさ
上 下
152 / 208

第152話

しおりを挟む


 ──ピンポーン


 軽快な音が部屋に鳴り響く。
 三森は舌打ちを零すと、俺をじっと見下ろした。


「絶対に声を出すなよ。わかったな」
「……わ、かった……」


 そう言って玄関に向かう三森を目で追いかけた。
 声を出すことは簡単で、ここに来た誰かに『助けて』と伝えれば多分、全てが収まる。
 けれど、そうする事で三森から何をされるかがわからない。今すぐ誰かが助けてくれる保証も無い。



 少しすると三森は戻ってきた。ただ荷物が届いただけだったらしい。
 そんな彼は目を潤ませていた俺を見てフッと笑う。


「何泣きそうになってんの」
「っ、」
「助けて貰えると思った?」



 はは、と笑ってすぐ傍に腰かけた三森は、突然大学の頃の話を始めた。



「お前に初めて会った時さ、こんな人間がいるんだって本気で思ったよ。」


 思い出しているのか、目を閉じて口角を上げている。


「綺麗だし、頭もいい。性格も別に悪くない。しかもアルファだ。」
「……」
「憧れたんだ。俺もそうありたいって。自分の考えをしっかり持って、凛としてる姿が良かった。」


 そんなの、知らなかった。
 ただ思うように生活を送っていただけだ。
 それをこんなふうに思っていてくれていただなんて。


「だから、そんなお前の隣でいつまでも友達で入れるようにって思ってるうちに、いつの間にか……ベータなら良かったのにって思うようになったんだ。」
「……アルファな俺に、憧れてたくせにか」
「ああ。アルファとベータじゃ釣り合わない。ベータ同士なら釣り合わないなんてことは無い。」


 ギョッとして目を見開く。ポロッと涙がこぼれた。


「お前がベータだったら、きっと俺はお前に告白してたよ。」
「っ!」
「でも、そんなの無理だからさぁ……諦めて友達の位置にいたわけ。」


 ギシ、とベッドが軋む。
 三森の手が、顔のすぐ横に置かれて呼吸が少しづつ乱れていく。


「就職は別になったけど、たまたま一緒に仕事することになって嬉しかった。」
「は……」
「やっぱり何かしらの縁があるんだってさ」
「っ、や、やめ」


 頬を撫でた手。
 それが輪郭をなぞって首に触れる。
 力は込められていないのに、呼吸ができない。


「なのに、オメガになっちまったらダメだろ。俺の憧れを潰すようなことするなよ」
「っは、ぅ……」
「俺を裏切るなよ」


 パッと手が離される。
 ようやく息ができて、ゲホゲホと咳が出た。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

どうも。チートαの運命の番、やらせてもらってます。

Q.➽
BL
アラフォーおっさんΩの一人語りで話が進みます。 典型的、屑には天誅話。 突発的な手慰みショートショート。

【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない

天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。 ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。 運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった―――― ※他サイトにも掲載中 ★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★  「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」  が、レジーナブックスさまより発売中です。  どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭

処理中です...