甘えたオメガは過保護なアルファに溺愛される

ノガケ雛

文字の大きさ
上 下
138 / 208

第138話

しおりを挟む

「……オメガってそんなに弱い立場なんだね」


 アルファの命令なら、誰の言うことも聞いてしまう。
 それを知って目の前にいる彼を一瞬、怖いと思ってしまった。


「それ、他の人に使ったことありますか……?」
「他の人には無いよ。真樹だけ」
「さっきのが初めてなんだ」
「……本当のことを言うと、さっきのが初めてじゃない。」
「えっ」


 今まであんな感覚になったことあったっけ?
 記憶が全く無い。


「初めてだよ。そもそも命令されたことないし」
「いや、一緒にいることを殆ど強制させたんだ。覚えてない?」
「それなら凪さんと初めて会って、話した時?俺が死のうとして、凪さんに助けてもらって……。」
「うん。断れないようにした。今だから言える話だけどね」


 今、俺は凪さんが好きだからいいけれど、こうして自覚する前に『断れないようにした』なんて言われていたら怒っていただろうな。
 いやでも、そもそも死のうとしていたし、彼に残りの人生を委ねていたんだから、俺には、一緒にいてくれる彼に感謝するしか無かった。


「ごめんね」
「ううん。ありがとう」
「ありがとう?何で……」
「一緒にいてくれたから生きてるんだと思うし。」
「……真樹にはまだまだ生きてもらわないと困るよ」


 困ったように笑う凪さんが愛しく思う。
 彼の温かい頬にそっと触れて「凪さんも」と言うと、彼の手が俺の手に重なって、それからコクっと頷いた。


「ねえ、凪さん。キスしたい。いい?」
「もちろん」


 そっと唇同士で触れ合って、少しずつ深くなっていく。
 腰に手が添えられ、頬に触れていた手を彼の首に回す。
 より体を密着させると、凪さんの心音が聞こえてきて暖かい気持ちになる。


「んっ、はぁ……ぁ、もう終わり。もっとしたくなるから」


 でも正直、これ以上続けるとまたエッチな気分になりそうで、体を離した。


「休みだししてもいいよ。真樹が満足できるまでする?」
「……だめ。お尻がヒリヒリしそう」
「薬塗ってあげようか」
「変態」


 睨みつけてると、ちゅっと触れるだけのキスを何度も繰り返される。


「ちょ、んっ、ちょっと!」
「怒った?」
「怒ってない、ん、む……っ!」



 そのままソファに押し倒され、彼が俺の胸に頭を押し付けてくる。
 ついついそこにある頭を撫でた。



「真樹、このまま昼寝したい。」
「え、このまま……」
「うん」


 少し窮屈だけど、まあいいか。
『いいよ』と伝える前に、彼は目を閉じて体から力を抜いた。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうも。チートαの運命の番、やらせてもらってます。

Q.➽
BL
アラフォーおっさんΩの一人語りで話が進みます。 典型的、屑には天誅話。 突発的な手慰みショートショート。

たしかなこと

大波小波
BL
 白洲 沙穂(しらす さほ)は、カフェでアルバイトをする平凡なオメガだ。  ある日カフェに現れたアルファ男性・源 真輝(みなもと まさき)が体調不良を訴えた。  彼を介抱し見送った沙穂だったが、再び現れた真輝が大富豪だと知る。  そんな彼が言うことには。 「すでに私たちは、恋人同士なのだから」  僕なんかすぐに飽きるよね、と考えていた沙穂だったが、やがて二人は深い愛情で結ばれてゆく……。

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

ベータですが、運命の番だと迫られています

モト
BL
ベータの三栗七生は、ひょんなことから弁護士の八乙女梓に“運命の番”認定を受ける。 運命の番だと言われても三栗はベータで、八乙女はアルファ。 執着されまくる話。アルファの運命の番は果たしてベータなのか? ベータがオメガになることはありません。 “運命の番”は、別名“魂の番”と呼ばれています。独自設定あり ※ムーンライトノベルズでも投稿しております

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。 しかし、1つだけ欠点がある。 彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。 俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。 彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。 どうしたら誤解は解けるんだ…? シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。 書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

処理中です...