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第138話
しおりを挟む「……オメガってそんなに弱い立場なんだね」
アルファの命令なら、誰の言うことも聞いてしまう。
それを知って目の前にいる彼を一瞬、怖いと思ってしまった。
「それ、他の人に使ったことありますか……?」
「他の人には無いよ。真樹だけ」
「さっきのが初めてなんだ」
「……本当のことを言うと、さっきのが初めてじゃない。」
「えっ」
今まであんな感覚になったことあったっけ?
記憶が全く無い。
「初めてだよ。そもそも命令されたことないし」
「いや、一緒にいることを殆ど強制させたんだ。覚えてない?」
「それなら凪さんと初めて会って、話した時?俺が死のうとして、凪さんに助けてもらって……。」
「うん。断れないようにした。今だから言える話だけどね」
今、俺は凪さんが好きだからいいけれど、こうして自覚する前に『断れないようにした』なんて言われていたら怒っていただろうな。
いやでも、そもそも死のうとしていたし、彼に残りの人生を委ねていたんだから、俺には、一緒にいてくれる彼に感謝するしか無かった。
「ごめんね」
「ううん。ありがとう」
「ありがとう?何で……」
「一緒にいてくれたから生きてるんだと思うし。」
「……真樹にはまだまだ生きてもらわないと困るよ」
困ったように笑う凪さんが愛しく思う。
彼の温かい頬にそっと触れて「凪さんも」と言うと、彼の手が俺の手に重なって、それからコクっと頷いた。
「ねえ、凪さん。キスしたい。いい?」
「もちろん」
そっと唇同士で触れ合って、少しずつ深くなっていく。
腰に手が添えられ、頬に触れていた手を彼の首に回す。
より体を密着させると、凪さんの心音が聞こえてきて暖かい気持ちになる。
「んっ、はぁ……ぁ、もう終わり。もっとしたくなるから」
でも正直、これ以上続けるとまたエッチな気分になりそうで、体を離した。
「休みだししてもいいよ。真樹が満足できるまでする?」
「……だめ。お尻がヒリヒリしそう」
「薬塗ってあげようか」
「変態」
睨みつけてると、ちゅっと触れるだけのキスを何度も繰り返される。
「ちょ、んっ、ちょっと!」
「怒った?」
「怒ってない、ん、む……っ!」
そのままソファに押し倒され、彼が俺の胸に頭を押し付けてくる。
ついついそこにある頭を撫でた。
「真樹、このまま昼寝したい。」
「え、このまま……」
「うん」
少し窮屈だけど、まあいいか。
『いいよ』と伝える前に、彼は目を閉じて体から力を抜いた。
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