131 / 208
第131話
しおりを挟む
***
ぼけーっと、目の前にある整った顔を眺める。
ずっとそうしていると小さな音が鳴って、それと同時に彼が動き、音を立てているスマートフォンを手に取った。
「凪さん、何時……?」
「ごめん、起こした。」
「ううん、起きてたよ。何時?」
「五時」
「……意味わかんない」
何でこんなに早くアラームを設定してるんだろう。
ああ確か、昼に会食があって、それまでに終わらせたい仕事があったんだっけ。
昨日の夜には色々と我儘を言った事も思い出して、「あ」と小さく声を漏らす。
「結局お風呂には入ったの?」
「入ったよ。真樹が寝た後すぐに」
「……我儘言ってごめんなさい」
「大丈夫。可愛かったよ」
起き上がろうとした彼に抱きついて、深く息を吐く。
「今日は俺も家で仕事するので、何かあれば遠慮なく言ってください。」
「わかった。今日が終われば明日は休みだし、またゆっくり過ごそうね。」
「うん」
潔く手を離し、彼と一緒に起きて洗面所に向かう。
顔を洗い歯を磨いてキッチンに立った彼の後ろで、邪魔になることはわかっていながら床に座る。
やっぱり眠たい。朝早いのは苦手だ。
「真樹ももう朝ご飯食べる?」
「……」
「おーい。真樹さん」
目の前に膝をついた彼が俺の顔を覗き込んでくる。
逞しい首に腕を回して抱き着くと、背中をポンポンと子供をあやす様に軽く叩かれる。
「もう一回寝る?」
「……朝ご飯、目玉焼き食べたい」
「作るよ」
「凪さんは?」
「俺も同じ物食べる」
グイッと立ちあがる彼につられて俺も立つ。
「卵割れる?」
「できるよ」
「じゃあ目玉焼き作るのお願いしていい?」
「任せて」
手を洗って卵を受け取りフライパンを用意する。
熱したそれの上で卵を割ると、白身が広がって歪んだ形になった。続けてもう一つ割り、水を入れて蓋をした。
「凪さん、今日は会食が終わったら帰ってくるんだよね?」
「ああ。だから帰ってくるのは今日も早いけど、何かあった?どこか行きたいとか?」
「ううん。明日は休みだし、ゆっくりできるなぁって。」
「そうだな」
折角だから夜には美味しい手作りご飯を用意してお酒を飲んで、一緒にお風呂に入ってそのまま……と考えたところで、料理ができないことを改めて思い出す。
「夜ご飯は一緒に作ろう?」
「いいよ。外食でもいいけど、真樹は家がいい?」
「うん。家で凪さんとゆっくりする」
「わかった」
料理以外の雰囲気作りなら、もしかすると俺にもできるかもしれない。
それを準備して彼が帰ってくるのを待っていよう。
そう意気込んでいると少し焦げた匂いがして、慌ててフライパンの火を止めた。
ぼけーっと、目の前にある整った顔を眺める。
ずっとそうしていると小さな音が鳴って、それと同時に彼が動き、音を立てているスマートフォンを手に取った。
「凪さん、何時……?」
「ごめん、起こした。」
「ううん、起きてたよ。何時?」
「五時」
「……意味わかんない」
何でこんなに早くアラームを設定してるんだろう。
ああ確か、昼に会食があって、それまでに終わらせたい仕事があったんだっけ。
昨日の夜には色々と我儘を言った事も思い出して、「あ」と小さく声を漏らす。
「結局お風呂には入ったの?」
「入ったよ。真樹が寝た後すぐに」
「……我儘言ってごめんなさい」
「大丈夫。可愛かったよ」
起き上がろうとした彼に抱きついて、深く息を吐く。
「今日は俺も家で仕事するので、何かあれば遠慮なく言ってください。」
「わかった。今日が終われば明日は休みだし、またゆっくり過ごそうね。」
「うん」
潔く手を離し、彼と一緒に起きて洗面所に向かう。
顔を洗い歯を磨いてキッチンに立った彼の後ろで、邪魔になることはわかっていながら床に座る。
やっぱり眠たい。朝早いのは苦手だ。
「真樹ももう朝ご飯食べる?」
「……」
「おーい。真樹さん」
目の前に膝をついた彼が俺の顔を覗き込んでくる。
逞しい首に腕を回して抱き着くと、背中をポンポンと子供をあやす様に軽く叩かれる。
「もう一回寝る?」
「……朝ご飯、目玉焼き食べたい」
「作るよ」
「凪さんは?」
「俺も同じ物食べる」
グイッと立ちあがる彼につられて俺も立つ。
「卵割れる?」
「できるよ」
「じゃあ目玉焼き作るのお願いしていい?」
「任せて」
手を洗って卵を受け取りフライパンを用意する。
熱したそれの上で卵を割ると、白身が広がって歪んだ形になった。続けてもう一つ割り、水を入れて蓋をした。
「凪さん、今日は会食が終わったら帰ってくるんだよね?」
「ああ。だから帰ってくるのは今日も早いけど、何かあった?どこか行きたいとか?」
「ううん。明日は休みだし、ゆっくりできるなぁって。」
「そうだな」
折角だから夜には美味しい手作りご飯を用意してお酒を飲んで、一緒にお風呂に入ってそのまま……と考えたところで、料理ができないことを改めて思い出す。
「夜ご飯は一緒に作ろう?」
「いいよ。外食でもいいけど、真樹は家がいい?」
「うん。家で凪さんとゆっくりする」
「わかった」
料理以外の雰囲気作りなら、もしかすると俺にもできるかもしれない。
それを準備して彼が帰ってくるのを待っていよう。
そう意気込んでいると少し焦げた匂いがして、慌ててフライパンの火を止めた。
96
お気に入りに追加
1,972
あなたにおすすめの小説

朝起きたら幼なじみと番になってた。
オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。
隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた
思いつきの書き殴り
オメガバースの設定をお借りしてます


たしかなこと
大波小波
BL
白洲 沙穂(しらす さほ)は、カフェでアルバイトをする平凡なオメガだ。
ある日カフェに現れたアルファ男性・源 真輝(みなもと まさき)が体調不良を訴えた。
彼を介抱し見送った沙穂だったが、再び現れた真輝が大富豪だと知る。
そんな彼が言うことには。
「すでに私たちは、恋人同士なのだから」
僕なんかすぐに飽きるよね、と考えていた沙穂だったが、やがて二人は深い愛情で結ばれてゆく……。

花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています

ベータですが、運命の番だと迫られています
モト
BL
ベータの三栗七生は、ひょんなことから弁護士の八乙女梓に“運命の番”認定を受ける。
運命の番だと言われても三栗はベータで、八乙女はアルファ。
執着されまくる話。アルファの運命の番は果たしてベータなのか?
ベータがオメガになることはありません。
“運命の番”は、別名“魂の番”と呼ばれています。独自設定あり
※ムーンライトノベルズでも投稿しております

Ωの不幸は蜜の味
grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。
Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。
そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。
何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。
6千文字程度のショートショート。
思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜
白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。
しかし、1つだけ欠点がある。
彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。
俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。
彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。
どうしたら誤解は解けるんだ…?
シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。
書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる