甘えたオメガは過保護なアルファに溺愛される

ノガケ雛

文字の大きさ
上 下
129 / 208

第129話

しおりを挟む


 夕方、仕事を終えて部屋から出てきた彼と一緒にキッチンに並ぶ。
 指示を受けて野菜を切っていると「怖い」を連発する彼に呆れて顔を上げた。


「包丁の持ち方が少し怖いね。」
「手切っちゃいそう?」
「子供用の包丁でも買うか悩んでる」
「……そんなに怖いですか。」
「うん。今にも怪我しそう」


 思わず切ろうとしていた人参から手を離し、包丁を置く。


「じゃああとは任せます。」
「うん。そうしてくれ」
「……お米炊きます」
「洗剤は使っちゃダメだよ」
「ちょっと!俺もひとり暮らししてたんだから!」
「そうだった」


 忘れられるくらい拙い動きらしい。
 悔しくって完璧に米を洗い炊飯器にセットして胸を張る。


「ほら!」
「うん。ありがとう」
「いいえ!」


 キッチンを出てお風呂場に向かい掃除をしてリビングに戻る。
 時刻はもう六時になりそうで、まだキッチンに立っている彼に後ろからそっと抱きついた。
 意地悪されたから仕返ししてやろうと思って。


「座ってテレビでも見てていいんだよ」
「……凪」
「え」
「凪、今日は一人で寝るね。」
「はっ!?」


 慌ててつけていた火を消した凪さんが、離れていく俺を追いかけてドンッと音がなりそうなほど勢いよく後ろから抱きついてきた。


「意地悪したから怒ってる?」
「別に?」
「なら一緒に寝るだろ?」
「寝ないよ」
「真樹ぃ」
「わっ!」


 そのまま抱っこされてソファーに押し倒される。
 驚いて凪さんを見るけれど、それより先に胸にずっしりと重みを感じた。彼が俺の胸に額を押し付けている。


「怒らないで真樹」
「怒ってないって」
「じゃあなんで一緒に寝てくれないんだ。」
「仕返ししただけ!本気にしないでよ」


 そう言うと、顔を上げてにっこり笑った。
 そしてそんな彼に何だか危機を感じる。


「よかった。本当に別で寝るってなっていたら、どういうプランを組んで真樹をベッドに誘うか考えないといけないから。」
「へ……」
「お風呂から一緒に入って、真樹を甘やかした後にベッドだな。」
「やめてやめて」


 両手を突き出し、彼の胸を押し返して上から退かせる。


「それ、寝るだけじゃ済まないでしょ」
「寝るだけのつもりなわけがないだろ」


 真顔で言う彼に、ソファーに置いていたクッションをぶつけておいた。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

どうも。チートαの運命の番、やらせてもらってます。

Q.➽
BL
アラフォーおっさんΩの一人語りで話が進みます。 典型的、屑には天誅話。 突発的な手慰みショートショート。

たしかなこと

大波小波
BL
 白洲 沙穂(しらす さほ)は、カフェでアルバイトをする平凡なオメガだ。  ある日カフェに現れたアルファ男性・源 真輝(みなもと まさき)が体調不良を訴えた。  彼を介抱し見送った沙穂だったが、再び現れた真輝が大富豪だと知る。  そんな彼が言うことには。 「すでに私たちは、恋人同士なのだから」  僕なんかすぐに飽きるよね、と考えていた沙穂だったが、やがて二人は深い愛情で結ばれてゆく……。

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

ベータですが、運命の番だと迫られています

モト
BL
ベータの三栗七生は、ひょんなことから弁護士の八乙女梓に“運命の番”認定を受ける。 運命の番だと言われても三栗はベータで、八乙女はアルファ。 執着されまくる話。アルファの運命の番は果たしてベータなのか? ベータがオメガになることはありません。 “運命の番”は、別名“魂の番”と呼ばれています。独自設定あり ※ムーンライトノベルズでも投稿しております

とろけてまざる

ゆなな
BL
綾川雪也(ユキ)はオメガであるが発情抑制剤が良く効くタイプであったため上手に隠して帝都大学附属病院に小児科医として勤務していた。そこでアメリカからやってきた天才外科医だという永瀬和真と出会う。永瀬の前では今まで完全に効いていた抑制剤が全く効かなくて、ユキは初めてアルファを求めるオメガの熱を感じて狂おしく身を焦がす…一方どんなオメガにも心動かされることがなかった永瀬を狂わせるのもユキだけで── 表紙素材http://touch.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=55856941

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。 しかし、1つだけ欠点がある。 彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。 俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。 彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。 どうしたら誤解は解けるんだ…? シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。 書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

処理中です...