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第128話
しおりを挟む凪さんは仕事を持ち帰ってきたらしく、帰ってきてからは部屋に籠っている。
午後三時、おやつの時間だなと思って珈琲を入れて彼の部屋に運ぶと、難しい顔をしてパソコンを見つめていた。
「……失礼します……」
そう言ってそっと珈琲を差し出すと、漸く俺が来たことに気付いたようで難しい顔から一変して笑顔になる。
「真樹」
「ちょっと休憩しませんか……?」
「そうだね。」
椅子を引いた凪さんが、俺の腕を掴んで自分の膝に座らせる。
驚いたけれどその力に抗うことなく彼の膝に座り、顔を上げた。
「危ない」
「ごめんね」
「甘い物食べますか?確かあったと思うけど……」
「ううん、大丈夫。」
ちゅ、と唇同士が触れる。
ギョッとして身を引くと背中に回された腕に止められた。
「仕事してるならキスしないで下さい」
「どうして?」
「……もっと欲しくなるかもしれないでしょ。仕事中は仕事に集中です。家でやるなら特に。」
「もっと欲しくなるの?誰が?」
むっと唇を尖らせ、そっぽを向く。
わかっているくせに、面白がってる。
「まーき」
「……俺が」
小さく笑った彼が俺の腰を抱く。
強い力に引き寄せられたかと思うと、首筋に顔を埋めてきた。
「ちょ、っと……凪さん」
肩を叩いてもビクともしない。
諦めてされるがままになっていると、首筋を噛まれて大袈裟に体が跳ねてしまう。
「好きだよ。」
「……な、なんですか、突然……ていうか噛まないで。痛いよ」
「真樹も噛んでいいよ」
「そういう事じゃない」
でも、許可はされたので一応目の前にある首に噛み付いておく。
「痛」と聞こえてきた声は無視だ。
「真樹にお願いがあるんだけど」
「お願い?」
滅多にされないお願いにウキウキする。
「さっき話をしてくれた蒼太君に会わせてほしい。」
そう言われ、すぐに凪さんと蒼太の性別を思い出して、サーっと顔が青くなった気がした。
「……う、浮気、ですか」
「え、違うよ。……いや、違うって。三森のことを聞きたいだけなんだ。」
「三森のこと……」
警察を呼ぶか悩んだくらい迷惑をかけられたと蒼太が言っていたから、その被害内容を蒼太の口から聞きたい、ということだと思う。
「……わかりました。」
「浮気じゃないよ。真樹もいてくれて構わないし。」
「うん。凪さんの隣に居ることにします。」
その場で蒼太にメッセージを送り、凪さんの休憩時間も終えて、俺はリビングで夕方まで一人で過ごした。
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