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第116話
しおりを挟むとりあえず落ち着こうと、珈琲を飲んで深く息を吐く。
八時半に凪さんから今日の仕事についてメッセージが送られてきて、九時になってから仕事を始めた。
けれど、昨日の集中力はどこへ行ったのか、三森から送られてきたメッセージが気になって仕方がない。
昼休みになった途端に仕事をする手を止め、すぐにカップラーメンを作った。
落ち着きたいのに、不安で胸がソワソワする。
凪さんに今すぐ電話して、三森のメッセージについて伝えたい。
「……迷惑だから、我慢。」
せめて彼が帰宅するまでは何も伝えないべきだと思う。
仕事の邪魔をするのは本意ではない。
「うぅ……でも、ソワソワする……」
胸のあたりを掻き毟りたくなるような、そんな感覚。
ガリッと爪を噛んで、三分経った頃にラーメンを啜った。
一時前に凪さんから電話がかかってきた。
電話に出ると、胸のソワソワした感覚が少しマシになる。
「ご飯は食べた?」
「食べました」
「今日は早めに帰るよ。何か必要なものはある?」
「無いです。何も要らないから、早く帰ってきて。」
「やっぱり退屈なんだろ。一人にさせてごめんね」
「いや……俺が悪いので」
全部俺が悪いとわかっているから、彼に謝られても正直困る。
彼は少しの間沈黙して、それから小さく息を吐いた。
「真樹は悪くない。こうなったのは真樹のせいじゃない。」
「……うん」
「あまり納得いってないみたいだね。何かあった?」
「……早く帰ってきて」
さっき言った言葉をもう一度繰り返す。
今話す気は無い。それが彼にも伝わったみたいで、一言「わかった」と言われその後すぐに通話が切れた。
「怒らせちゃったかな」
何度も早く帰ってきてと言われて、もしかすると鬱陶しく思われたかもしれない。
彼が帰ってきたら、真っ先に謝ろうと思い、昼休みを終えパソコンに向き直った。
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