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第100話
しおりを挟む肩を揺らされ目を開けると、凪さんが目の前にいた。
思わず手を伸ばして首に腕を回す。
「かなり酔ってるな」
「最高に可愛いですね」
「……橋本君?」
「あ、やだな。さすがに番持ちは狙いませんよ」
二人が話をしてる。
体がふわっと浮いて、そっと立たされた。
「帰ろうね」
「凪さん」
「荷物は?ああ、これか。橋本君ももう帰る?送ろうか?」
「大丈夫です。……それより、さっきお伝えした事……」
「ああ。ちゃんと対応する。」
彼の手を掴んで、一緒に店の外に出る。
風が気持ちいい。駐車場まで歩き、車に乗る。
「真樹はまた、こんなになるまで飲んじゃったんだね。」
「でも、あの、大丈夫……ちゃんと意識はハッキリしてます……。」
「本当かなぁ」
「本当、大丈夫。ほら、見て。俺の事見て」
「うーん、残念だけど、運転中。」
前を向いてる凪さん。俺はそんな彼を横からじっと眺めていた。
マンションに着いて車から降りると足元がふらつき、慌てて車に手を着く。
「真樹?大丈夫?」
「足元揺れてる」
「俺の手掴んでてね」
「うん……」
ゆっくり歩いて部屋に行き、靴を脱いでそのまま廊下に座った。
「立てない?」
「ん……だめ、力入らない……」
「ベッド運ぶ?」
「……ううん。凪さんと、話するぅ」
「その感じで話できるかな。明日でもいいんだよ」
「だめ、する……立たせて……」
凪さんの手を借りて立ち上がり、リビングの椅子に腰かける。
水を持ってきてくれた彼にお礼を言って、ごくごく飲み干した。
「凪さん」
「何?」
じっと彼を見て、橋本に言われたことを思い出し、今日あったことを話す。
「三森は俺の事を卑しめるような事ばかり言って……それも、仕方が無いのかもしれないけど、でも、やっぱり嫌で……。」
酒に酔った頭では上手く言葉がまとまらない。
嫌だったことをとにかく伝え、それから彼と目を合わせる。
「──だから、不安です。凪さん、安心させて。」
甘えるなって言われたって仕方が無い気がする。
けれど、凪さんはそう言うどころか、俺をそっと抱きしめた。
「大丈夫。俺が必ずどうにかする。少し時間はかかるかもしれないけれど、絶対に守るよ。」
「……うん」
「しばらくは不安が続くかもしれない。でも俺が傍にいる。俺がいれば、怖くないだろ?」
「怖くないよ。凪さんは、俺の唯一、頼れる人だもん。」
髪を撫でられるのが気持ちいい。
彼の胸に擦り寄ると、抱きしめる力が強くなって、少し苦しいのにそれが心地よかった。
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