甘えたオメガは過保護なアルファに溺愛される

ノガケ雛

文字の大きさ
上 下
73 / 208

第73話

しおりを挟む
■■■


 体が軋むように痛い。
 でもそれすら幸せで、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる彼にひたすらに甘えてしまう。


「凪さん、ねえねえ、こっち座ってください。」
「うん。どうしたの?」


 ベッドに寝転がる俺の隣に腰を下ろした彼は、俺の体を撫でて「辛い?」と聞いてくる。


「ううん。大丈夫。でも動くのはまだ無理です」
「しばらくはゆっくりしていて。」
「はい。……凪さんから優しい匂いがして落ち着く……」
「まだフェロモン残ってる?」
「ちょっとだけ」


 彼の腰に腕を回して、彼の膝に頭を乗せる。
 髪を梳かれ、うっとりしてしまう。


「凪さん、好き。」
「俺もだよ」
「……番になりましたね」
「うん。幸せだ」
「ふふっ、俺も。」


 凪さんは微笑んで俺を軽く抱きしめると、そのまま何度もキスをしてきて擽ったい気持ちになった。


「明日は仕事に行ってくるけど、真樹は朝の体調次第だね。」
「え、俺も仕事……」


 彼は左右に首を振った。


「番になったからフェロモンは他の人にはわからないけど、俺が影響されてしまうから。」
「ぁ……凪さんの邪魔になりますもんね」
「邪魔じゃなくて、俺が真樹を好きすぎるんだよ。そのせいで仕事が捗らないなんて情けないところ見られたくないしね。」



 好きすぎるだなんて、素直に言葉にしてくれるのが嬉しい。
 彼に擦り寄りもっと撫でてほしくて手を取った。
 そのまま頭に導くと俺が望んだ通りにしてくれる。
 彼にくっついていると体も心も満たされて、欲深くなってしまう。
 もっと彼を知りたいし、俺の知らない彼に触れてみたい。


「凪さん……俺、凪さんのご両親に会いたいです。」
「え」
「ダメですか……?」
「それは嬉しいけど……」


 苦い顔をする彼。もしかして急ぎすぎたかな。
 番になってすぐに言うべきではなかったか。


「けど、何ですか……?前に番になるまで会わせないって言ってたけど、番になりましたよ……?」
「うん。そうなんだけど、真樹が何か焦ってるように見えて」
「焦る?いや、俺はただ……あの、俺って思っていた以上に欲深いみたいなんです。凪さんが番になってくれたから、もっと凪さんのことを知りたくて……。」



 恥ずかしいことを言っている自覚はあるのだけれど、言葉を止められない。
 もしかして、番になるとアルファだけでなくオメガも独占欲が強くなるのだろうか。



「凪さんのことを誰よりも知ってるのはご両親でしょう?お話聞きたいなって……勝手に……。」

「……可愛い」

「え……っん!?」


 突然キスをされ、それが思ったよりも激しくて吃驚してしまう。
 待って、待って!息ができない!
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

どうも。チートαの運命の番、やらせてもらってます。

Q.➽
BL
アラフォーおっさんΩの一人語りで話が進みます。 典型的、屑には天誅話。 突発的な手慰みショートショート。

【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない

天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。 ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。 運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった―――― ※他サイトにも掲載中 ★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★  「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」  が、レジーナブックスさまより発売中です。  どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...