甘えたオメガは過保護なアルファに溺愛される

ノガケ雛

文字の大きさ
上 下
56 / 208

第56話

しおりを挟む

 お湯に癒されてお風呂から出る。
 凪さんが用意してくれた服に着替え、ヨタヨタしながらリビングに行けば彼はキッチンで料理をしている最中で、後ろから抱きついた。


「お風呂、ありがとうございます。」
「どういたしまして。もうお腹空いた?」
「ちょっとだけ。」


 首を傾げて彼の手元を見る。
 パプリカを切っている所だった。


「俺もそれやって見たい」
「切るの?……駄目だ。怪我しそうで怖い」
「折角くれたエプロンを使うタイミングが欲しいです。それに料理教室の代わりに凪さんが教えてくれるって言った。」
「……確かに言った。でも今じゃないよ。ごめんね、ちょっと手離して。」


 納得いかない。
 渋々手を離すと彼は手を洗ってタオルで拭い、いきなり俺を抱き上げる。


「えっ!?何!?」
「こんなに足腰震わせてるんだから大人しく座ってなさい。」
「何でわかったの……」
「抱きついてからずっと俺に体重かけてただろ。」
「……俺の負けです。大人しくしてます」


 ソファーに運ばれ、キッチンに戻る彼の後ろ姿を眺める。
 今もそうだけど、普段から彼は俺に対して過保護すぎると思う。
 本人に指摘するとそんな事ないって言いそうだから伝えないけれど。


「真樹、何か飲む?風呂上がってから何も飲んでないだろ」
「お昼ご飯と一緒にお茶飲むのでいいです。」
「駄目。風呂上がりにはちゃんと水分摂って」


 そうしてコップにお茶を入れて持ってきてくれる。
 ほら、やっぱり過保護だ。

 今でさえこれだ。番になったらヒートアップするんじゃないか。
 そうなったら少し……いや、大分不安だ。


 お茶を飲んで、スマートフォンを手に持ち、番のアルファが過保護すぎる件について調べてみた。

 ヒットした検索結果を開けると、普段はそうでも無いが番のオメガの体調が悪かったり、何かに悩んでいたり、妊娠したりすると殆どのアルファが過保護になるらしい。

 どこかに出掛けようとするのを引き止めたり、どんな用事でも一緒に行こうとしたり、酷い時はベッドの上から動くことも許されないケースもある。


「……無理」


 それは無理じゃないか?
 この酷い時のケースが、凪さんの場合有り得る気がして怖い。


「何が無理?」
「わっ!」


 いつの間にか後ろに立っていた彼が、スマートフォンの画面を見ている。
 隠したけどもう遅い。
 パチパチと切れ長の目が瞬きする。


「俺って過保護なの?」
「……はは」


 そうです。とも言えずに笑って誤魔化そうと試みる。


「え、笑うってことはそうって事?」


 誤魔化されてはくれなかった。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうも。チートαの運命の番、やらせてもらってます。

Q.➽
BL
アラフォーおっさんΩの一人語りで話が進みます。 典型的、屑には天誅話。 突発的な手慰みショートショート。

たしかなこと

大波小波
BL
 白洲 沙穂(しらす さほ)は、カフェでアルバイトをする平凡なオメガだ。  ある日カフェに現れたアルファ男性・源 真輝(みなもと まさき)が体調不良を訴えた。  彼を介抱し見送った沙穂だったが、再び現れた真輝が大富豪だと知る。  そんな彼が言うことには。 「すでに私たちは、恋人同士なのだから」  僕なんかすぐに飽きるよね、と考えていた沙穂だったが、やがて二人は深い愛情で結ばれてゆく……。

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

ベータですが、運命の番だと迫られています

モト
BL
ベータの三栗七生は、ひょんなことから弁護士の八乙女梓に“運命の番”認定を受ける。 運命の番だと言われても三栗はベータで、八乙女はアルファ。 執着されまくる話。アルファの運命の番は果たしてベータなのか? ベータがオメガになることはありません。 “運命の番”は、別名“魂の番”と呼ばれています。独自設定あり ※ムーンライトノベルズでも投稿しております

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。 しかし、1つだけ欠点がある。 彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。 俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。 彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。 どうしたら誤解は解けるんだ…? シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。 書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

処理中です...