甘えたオメガは過保護なアルファに溺愛される

ノガケ雛

文字の大きさ
上 下
35 / 208

第35話

しおりを挟む
***


「おはよう真樹。今日もいい天気だって。」


 薄目を開けると愛しい人が居て、手を伸ばすと抱き締めてくれる。


「眠たいね。でももう七時だよ。」
「……ん、ねむい……」
「可愛い」


 逞しい胸に顔を埋めると背中をポンポンと軽く叩かれる。


「起きないと遅刻するんじゃないかな。」


 それを聞いて一気に覚醒した。
 いつかの日みたいに飛び起きると、彼は驚いていて、俺も驚く。


「あ、寝癖。可愛いね、跳ねてる。」
「っ!見ないで!」


 掛け布団を頭から被り、そのまま洗面所に逃げ込んだ。
 水で髪を濡らしてついでに顔を洗う。
 歯を磨いて掛け布団を寝室に戻し、リビングに行くと美味しそうなご飯が並んでいた。


「おはよう、真樹。」
「おはようございます。凪さん」


 凪さんに番になりたいと言ってから、早一ヶ月。
 両親とは殆ど絶縁状態で、あれ以来一切連絡を取っていない。

 そして、凪さんから頬の痣や俺の心の傷が癒えるまでは、何もせずに家でゆっくり過ごしてほしいと言われずっと家にいたけれど、漸く今日俺は仕事に復帰することになった。

 ‪アルファ‬の本能からか、働かないでと言う彼と話をして、なんとか条件付きで許可が出たのだ。
 その条件というのが、元いた部署ではなく、凪さんの秘書になる、ということ。
 これは四六時中一緒にいたいから、という凪さんの思いである。完全に公私混同。
 学生の頃、取れる資格は何でも取っておこうと、秘書検定を受けていて良かった。


 けれど、一つだけ不満がある。


「会社では凪さんって呼べないんですよね……。ちょっと寂しいです。」
「……真樹はどうしてそう、可愛いことを言うんだ。二人きりの時なら呼んでくれて構わないよ。」
「いえ。混ざってややこしくなりそうです。家でも役職で呼んだ方がいいんですかね。どうですか?専務。」
「やめてくれ」


 真顔で返事をされて思わずクスクスと笑ってしまう。
 彼もつられるように笑って、一緒に食事をとると支度を済ませ、いつでも出られるようにした。


「真樹」
「はい──んっ!」


 テレビを見ていた彼に呼ばれ、返事をして近付くと腰に腕が周り抱き寄せられ、唇が重なる。
 それが段々と深くなって、舌を絡め合い上顎を撫でられ、小さく息を吐くと舌を甘噛みされ離れていく。


「さあ、そろそろ行こうか。」
「ん、は、はい……」


 体が熱くなる。
 出勤前にするなんて、照れてしまうからやめてほしい。

 ドキドキしてうるさい心臓を、胸辺りをトントンと叩いて落ち着かせる。
 秘書になるんだから前みたいなラフな格好では駄目で、びしっとスーツを着てビジネスバッグを持ち、凪さんと一緒に家を出た。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

風俗店で働いていたら運命の番が来ちゃいました!

白井由紀
BL
【BL作品】(20時毎日投稿) 絶対に自分のものにしたい社長α×1度も行為をしたことない風俗店のΩ アルファ専用風俗店で働くオメガの優。 働いているが1度も客と夜の行為をしたことが無い。そのため店長や従業員から使えない認定されていた。日々の従業員からのいじめで仕事を辞めようとしていた最中、客として来てしまった運命の番に溺愛されるが、身分差が大きいのと自分はアルファに不釣り合いだと番ことを諦めてしまう。 それでも、アルファは番たいらしい なぜ、ここまでアルファは番たいのか…… ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです ※長編になるか短編になるかは未定です

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

【完結】運命の番に逃げられたアルファと、身代わりベータの結婚

貴宮 あすか
BL
ベータの新は、オメガである兄、律の身代わりとなって結婚した。 相手は優れた経営手腕で新たちの両親に見込まれた、アルファの木南直樹だった。 しかし、直樹は自分の運命の番である律が、他のアルファと駆け落ちするのを手助けした新を、律の身代わりにすると言って組み敷き、何もかも初めての新を律の名前を呼びながら抱いた。それでも新は幸せだった。新にとって木南直樹は少年の頃に初めての恋をした相手だったから。 アルファ×ベータの身代わり結婚ものです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

処理中です...