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第13話
しおりを挟む暫くおでこを冷やされて、抑制剤を飲んで、凪さんの傍に座りテレビを見る。
テレビではオメガの男性が襲われたというニュースが流れていた。
内容を聞いていると、いつか同じことが自分に起きるかもしれないと思って怖くなる。
まじまじと画面を見ていると、突然テレビ画面が消え、驚いて隣を見れば凪さんがリモコンをテーブルに置いたところだった。
「凪さん……?」
「不安になる情報は遮断していい。」
凪さんの声がすっと耳に届く。
じっと顔を見ると、あまりに綺麗で視線を逸らした。
「凪さんは、格好いいですね。」
「急だな。真樹もすごく整っていると思うけど。」
「……正直、凪さんに会うまで自分の容姿に自信満々でした。自分より格好いいって思う人、見た事なかったから。」
「悪いことじゃないと思うけど……」
「でも……オメガになったし、もう自信ないです。──凪さん……」
甘えたくなって擦り寄る。
本当に、なよなよになったなと思う。
こんな風に甘えるのが心地いいと知ってしまった。
「よしよし。真樹はアルファでもそうでなくても変わらず綺麗だよ。」
もっと撫でてほしい。この人に幸せにしてもらいたい。
凪さんを見上げて、目が合うと温かい気持ちになる。
多分、オメガ性のせいだけど、この人のこと好きになってるんだな。
「凪さんのこと、好きみたいです。」
「……え」
「オメガ性のせい?でも多分、好きです。もっと甘やかしてほしい」
ハッキリと想いを伝えると、凪さんは鋭い目をふにゃっと歪ませた。
「真樹、キスしたい。」
「へっ?」
「俺も真樹が好きなんだ。キスしたい」
顔が近付いてきてドキドキする。
ま、まっ、待って、どうするんだ。
目は閉じるのか?ドラマだとギリギリまで開けてたっけ?わからない、わからない!
ぎゅっと強く目を閉じる。
近距離で感じる彼の存在。でもいつまで経っても唇は触れない。
ちらっと片目を開けると、凪さんはくすくす笑っていた。
「ひっ、酷い!!」
「ごめん、真樹が可愛すぎた。」
「な、なん、なんで、可愛いとか──っん、ぅ……」
まだ話している途中だったのに、唇が塞がれた。
後頭部に回されている手が優しく頭を撫でて、その手はゆっくり動き、輪郭に沿うように添えられる。
キス、初めてだ。
二十四年の人生で、興味本位で性行為をしたことはあるけれど、キスはしたことが無かった。
胸がうるさいくらいドキドキしている。
「──真樹。真樹?」
「は、ぅ……」
体温が上がる。
キスって……こんなに恥ずかしいものなのか……!
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