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第4話
しおりを挟む体が重たい。
胸が張り裂けそうに痛い。
医者は俺がオメガになったと言った。
気を強く持ってと言った。
オメガ用の抑制剤が処方されて、頭の中が真っ白だ。
後天性オメガの場合、接触したオメガの発情期に触発されて、間もなく発情期に入るらしい。つまり俺はもうすぐあられもない姿になる。
いつ発情期になってもおかしくないから、人目の少ない道を歩いて家に帰る。
ふらっと空を見上げれば、視界にビルの屋上が写った。
勝手に足がそちらに向いて、気付けば階段を上り屋上に出ていた。
──無理だ。オメガなんて。
二十四年間、アルファとして生きてきたのに、これからオメガになるなんて。
誰に相談すればいい?両親は俺と同じで、オメガに対しての偏見がある。
息子がオメガになっただなんて聞いたら、発狂するに違いない。
終わりだ。もう、生きられない。
屋上の柵を跨ぎ、ぼんやりと下を見る。
人は居ない。今なら誰も巻き込まない。
死にたいわけじゃない。
ただ、オメガになった俺はこれから先生きられないと思う。
それならもう早いとこ、未来を閉ざしたい。
批判されるだけの未来なんて耐えられない。
足を一歩踏み出し、ゾワッと恐ろしい感覚を感じたのと同時に、強く腕を掴まれた。
「っ!」
「見つけた」
「うわっ!」
そのまま抱き寄せられ、柵の内側に連れ戻される。
俺を抱き締める男は、首筋にスリスリと顔を寄せてきた。
「やめろ……っ!気持ち悪いっ!離せ!」
「ううん、離さない。」
男に背中を撫でられ、落ち着くようにとポンポン軽く叩かれると、急に気持ちが楽になった。
泣き出したいくらい穏やかで、優しい。
そして急激に眠気に襲われる。
「ね、むい……」
「いいよ。眠って」
体に力が入らなくなって、全体重を彼に預ける。
瞼は持ち上げる事も出来ず、抵抗する時間も無く目を閉じた。
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