明日はきっと

ノガケ雛

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番外編

ひより

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 ■



 あの日から仙波はずっと悩んでいた。
 自分に良くしてくれたお客さんなのに、あんな態度をとってしまってよかったのか、と反省もしている。


 仙波は中学校一年生の時にされた検査でΩだということが分かったのだが、それ以来家族は彼に冷たく当たるようになった。
 仙波には弟がいたのだが、両親はβであった弟だけを可愛がるようになった。

 高校卒業までは何とか面倒を見てもらてたのだが、それからは一人で生活することを強いられて、酷く辛い生活を送っていたことがある。

 特に何の資格も無いΩには働く場所も、必要とされる場所も無い。
 そもそも、『家族にすら見放された自分を誰が拾ってくれるんだ』と自暴自棄になった時期もあった。


 それでも必死で探して漸く、アルバイトとして受け入れて貰えた今の職場だが、環境は全くと言っていいほど良くない。
 Ωに対する差別が当たり前のようにあり、貰えるだけ有難いのだが給料は安いし、事ある毎に陰口が聞こえてくる。



 正直、毎日が辛かった。
 もう全部やめてしまおうかなと思っていた。

 そんな時、新しいお客さんだと言われて向かった先に時雨が居た。
 時雨は性別を知っても差別せず、それどころか契約をしてくれて。
 そんな人は仙波にとっては初めてだった。


 元々掃除は心が整うようで好きだったが、コースを契約して貰えてから初めて時雨の家に向かう最中は、いつもより遥かに胸が踊っていたのだ。



 なのに、そんな人がまさか、番を捨てた過去を持っていただなんて。


 ──‪α‬は皆、Ωの発情期のことをそう思っているのだろうか。



 仙波は少しずつ不安になっていき、頭と気持ちを整理することが出来ず、謝るべきなのかどうかも分からなくて頭を搔く。


「……明日だぁ」


 明日は久しぶりに時雨の家を訪ねる日。
 何も知らなかった時のように自然と話せるかどうかも分からないが、仕事なので気まずくても行かなければならない。


 ──でも、なぜだか


「市谷さんともっと話したいんだよなぁ」


 矛盾した心に大きな溜息を吐いた。
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