29 / 55
番外編
過保護
しおりを挟む
二人目ができてからというもの、恭介の心配事が増えてきたようで、紬に対して酷く過保護になった。
ふとした瞬間、紬が顔を上げると恭介と目が合う。
ごみ捨てに行こうとすれば、「走ってくる」と言ってナチュラルにゴミ袋を掴んで家を出ていく。
時には一人になりたくて、散歩にでも出かけようとすると「俺も行く!」とついてくる。
お風呂も、寝る時も、ずっと一緒。
別にそれが嫌なわけではない。
けれど少し……いや、割と結構、息苦しくて。
恭介が休みの日である今日も、紬とずっと一緒にいようとするので、いよいよ紬は彼の前に手を突き出した。
「暫く、ひとりがいいです」
「……」
恭介は口をあんぐり開けて間抜けな顔を晒しているが、そんなことより何より紬に言われた言葉を理解するのに時間がかかっているようで。
「な……なぜ……?」
そして理解をするとショックだったのか、悲しそうな表情をする。
紬は「うっ……」とまるで悪いことをしているかのような気分になりながら、恭介から視線を逸らした。
「あの……心配してくれるのは、嬉しいんだけど……」
「……俺が、執拗い?」
「……えっと……執拗いというか……あの……窮屈な、感じで」
恭介は『窮屈』という言葉に目を見張り、そして「ごめんね」と呟くとトボトボ紬から離れていった。
紬はその寂しげな背中を見て慌てて追いかける。
「違う、違うんだよ。嬉しいし、有難いんだよっ」
「ありがとう。でも確かに俺は君にべったりしてたと思うから……」
「ぅ……あの……たまに、一人で散歩に行ったりしたいなって思って……」
「うん」
彼に悲しんでもらいたいわけじゃない。
こういう風に自分の思いを伝えられるようになったのも、全部彼のおかげだから。
紬はそう思って必死に言葉を探す。
でも上手く見つけられなくて。
「俺の事、嫌いにならないで……」
紬はそう言って恭介の手を握る。
今度は恭介が焦る番で、慌てて「嫌うわけが無いだろ!?」と手を握り返す。
「君の言いたいことはわかるよ。あんまり過保護にならないでってことだろ?そう言われて君を嫌うなんて……そんなちっぽけな感情で君と番になったわけじゃない。」
恭介は眉を八の字にして紬を抱きしめる。
紬は唇をムっとさせて恭介の背中に手を回す。
「ごめんね、不安にさせるような態度取っちゃって」
「……ううん」
「ちょっと反省してたんだ。嫌いになんてならないよ。大好きだよ」
そう言って微笑んだ恭介に、紬は漸く安心して肩の力を抜く。
それから紬は時折一人の時間を堪能する事ができるようになる。
けれど一日の大半は愛しい息子と紬と共に穏やかな日々を過ごしたのだった。
ふとした瞬間、紬が顔を上げると恭介と目が合う。
ごみ捨てに行こうとすれば、「走ってくる」と言ってナチュラルにゴミ袋を掴んで家を出ていく。
時には一人になりたくて、散歩にでも出かけようとすると「俺も行く!」とついてくる。
お風呂も、寝る時も、ずっと一緒。
別にそれが嫌なわけではない。
けれど少し……いや、割と結構、息苦しくて。
恭介が休みの日である今日も、紬とずっと一緒にいようとするので、いよいよ紬は彼の前に手を突き出した。
「暫く、ひとりがいいです」
「……」
恭介は口をあんぐり開けて間抜けな顔を晒しているが、そんなことより何より紬に言われた言葉を理解するのに時間がかかっているようで。
「な……なぜ……?」
そして理解をするとショックだったのか、悲しそうな表情をする。
紬は「うっ……」とまるで悪いことをしているかのような気分になりながら、恭介から視線を逸らした。
「あの……心配してくれるのは、嬉しいんだけど……」
「……俺が、執拗い?」
「……えっと……執拗いというか……あの……窮屈な、感じで」
恭介は『窮屈』という言葉に目を見張り、そして「ごめんね」と呟くとトボトボ紬から離れていった。
紬はその寂しげな背中を見て慌てて追いかける。
「違う、違うんだよ。嬉しいし、有難いんだよっ」
「ありがとう。でも確かに俺は君にべったりしてたと思うから……」
「ぅ……あの……たまに、一人で散歩に行ったりしたいなって思って……」
「うん」
彼に悲しんでもらいたいわけじゃない。
こういう風に自分の思いを伝えられるようになったのも、全部彼のおかげだから。
紬はそう思って必死に言葉を探す。
でも上手く見つけられなくて。
「俺の事、嫌いにならないで……」
紬はそう言って恭介の手を握る。
今度は恭介が焦る番で、慌てて「嫌うわけが無いだろ!?」と手を握り返す。
「君の言いたいことはわかるよ。あんまり過保護にならないでってことだろ?そう言われて君を嫌うなんて……そんなちっぽけな感情で君と番になったわけじゃない。」
恭介は眉を八の字にして紬を抱きしめる。
紬は唇をムっとさせて恭介の背中に手を回す。
「ごめんね、不安にさせるような態度取っちゃって」
「……ううん」
「ちょっと反省してたんだ。嫌いになんてならないよ。大好きだよ」
そう言って微笑んだ恭介に、紬は漸く安心して肩の力を抜く。
それから紬は時折一人の時間を堪能する事ができるようになる。
けれど一日の大半は愛しい息子と紬と共に穏やかな日々を過ごしたのだった。
262
お気に入りに追加
1,117
あなたにおすすめの小説

白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない
天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。
ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。
運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった――――
※他サイトにも掲載中
★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★
「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」
が、レジーナブックスさまより発売中です。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》
市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。
男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。
(旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
オメガの復讐
riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。
しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。
とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる