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初めての散歩と襲撃
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「そうでした。冒険者の方が町で問題を起こす事はございますの?」
マリアローゼはまた、以前から気になっていた疑問を口にしてグランスを見上げる。
「国によると思いますが、基本的には無いかと思います。少なくとも内輪で解決すると思いますね。私闘は禁じられているので、ギルド立会いの下で決闘というのはあるかも知れませんが、個人的に戦うとなると懲罰の対象になるかと」
ふむふむ、とマリアローゼは頷いた。
漫画で良くあるような、強いランクの人でなしが弱者を一方的にいたぶるなんて事は普通は無い様だ。
もし、そんな事があったら国に問題視されて、治安を理由にギルドごと潰されそうではあるが。
「逆に町の治安強化にはなりますの?」
「それは、なると思います。自警団のない町でも冒険者ギルドの支部があれば、そこが中心になる事もありますので」
話しながらゆっくりと馬で移動して、広場の前の邸宅ホテルで馬を預ける。
マリアローゼはグランスの人差し指を握って、楽しそうに歩き出した。
「わたくし、二人で町をお散歩するのは初めてですの」
「その様な栄誉を私が賜って良いのですか?」
穏やかな笑顔で返したグランスを見上げて、マリアローゼも微笑んだ。
「グランスはずっと側に居て守ってくださるのだから、良いのです」
「お嬢様に好きなお相手が出来たら、なるべく遠くからお守り致しましょう」
マリアローゼの嬉しそうな声に、ふっと懐かしそうな目をしたグランスが優しく答える。
まだまだ先の話にはなるだろうが、マリアローゼも驚いた顔をした。
「まあ!グランスったら気が早すぎますわ。それにわたくしはお嫁に行くつもりはありませんから、ずっとわたくしに付き合わなくてはならないかもしれませんのよ」
「何時まででも」
くすり、と優しく笑うグランスを見上げて、マリアローゼは視線を町並みへと戻した。
女性の一人歩きはやはり危険なので、女性用の公衆浴場は大邸宅が高級ホテルと化した広場に面した場所に建てるのが、良いかもしれない。
特に貴族の女性が、わざわざ部屋の風呂よりも選ぶような浴場だとしても、遠ければ選択肢から外れてしまう可能性もあるのだ。
広場なら平民の女性や子供も安心して過ごせるだろうし、帰る道も選べる。
広場を横切る大きい道を西に行くと、港が現れる。
漁師や、荷物の揚げ降ろしをする荷役人達が、忙しそうに働いていた。
潮の香りと海産物の香りがして、海沿いの道を左へ折れる。
港からやや近い場所は商業区域だ。
荷物を運びやすい場所に、工房などが軒を連ねている。
広場に面した場所には店が並んでいるので、裏通りと言ってもおかしくない場所で、不意にマリアローゼをグランスが壁際に寄せた。
そして、その前に立ちはだかる。
「手荒な事はしたくありません。どうか、ご同道戴きたい」
壮年の男の声がするが、グランスは目の前から退かなかった。
「お嬢様をお連れしたいのであれば、正式に城へ招待状を出すべきでは?」
「それは一度断られているのでね」
(初耳ですわ!
断ったのは十中八九、レイ叔父様ですわね?)
囲んでいた男の1人が、奇声を上げてグランスに斬りかかり、グランスは難なく一刀の元に斬り捨てた。
「よせ!」という男の声が無視された形だが、仲間を斬られた荒くれ者達がそれを更に無視して、グランスの剣の餌食となる。
見えないけれど、倒れた男達と、血の匂いがそれを現実だと教えてくれる。
その時、リン、とその場にそぐわない涼やかなベルの音がした。
入り口に備え付けられたベルが鳴る音で、この騒ぎを知らない誰かが扉から出てきてしまったのだろう。
わずかに、グランスが立ち位置を変える。
その背が僅かに緊張感を帯びていた。
「この子供が、どうなってもいいのか?」
目の前に立っていたグランスに視界を塞がれて、何が起こっていたのかは分からない。
が、通りに面した建物から出て来た子供を人質に取ったのだろうという事はマリアローゼにも理解出来た。
マリアローゼは静かにグランスに命じる。
「グランス、お退きなさい」
マリアローゼはまた、以前から気になっていた疑問を口にしてグランスを見上げる。
「国によると思いますが、基本的には無いかと思います。少なくとも内輪で解決すると思いますね。私闘は禁じられているので、ギルド立会いの下で決闘というのはあるかも知れませんが、個人的に戦うとなると懲罰の対象になるかと」
ふむふむ、とマリアローゼは頷いた。
漫画で良くあるような、強いランクの人でなしが弱者を一方的にいたぶるなんて事は普通は無い様だ。
もし、そんな事があったら国に問題視されて、治安を理由にギルドごと潰されそうではあるが。
「逆に町の治安強化にはなりますの?」
「それは、なると思います。自警団のない町でも冒険者ギルドの支部があれば、そこが中心になる事もありますので」
話しながらゆっくりと馬で移動して、広場の前の邸宅ホテルで馬を預ける。
マリアローゼはグランスの人差し指を握って、楽しそうに歩き出した。
「わたくし、二人で町をお散歩するのは初めてですの」
「その様な栄誉を私が賜って良いのですか?」
穏やかな笑顔で返したグランスを見上げて、マリアローゼも微笑んだ。
「グランスはずっと側に居て守ってくださるのだから、良いのです」
「お嬢様に好きなお相手が出来たら、なるべく遠くからお守り致しましょう」
マリアローゼの嬉しそうな声に、ふっと懐かしそうな目をしたグランスが優しく答える。
まだまだ先の話にはなるだろうが、マリアローゼも驚いた顔をした。
「まあ!グランスったら気が早すぎますわ。それにわたくしはお嫁に行くつもりはありませんから、ずっとわたくしに付き合わなくてはならないかもしれませんのよ」
「何時まででも」
くすり、と優しく笑うグランスを見上げて、マリアローゼは視線を町並みへと戻した。
女性の一人歩きはやはり危険なので、女性用の公衆浴場は大邸宅が高級ホテルと化した広場に面した場所に建てるのが、良いかもしれない。
特に貴族の女性が、わざわざ部屋の風呂よりも選ぶような浴場だとしても、遠ければ選択肢から外れてしまう可能性もあるのだ。
広場なら平民の女性や子供も安心して過ごせるだろうし、帰る道も選べる。
広場を横切る大きい道を西に行くと、港が現れる。
漁師や、荷物の揚げ降ろしをする荷役人達が、忙しそうに働いていた。
潮の香りと海産物の香りがして、海沿いの道を左へ折れる。
港からやや近い場所は商業区域だ。
荷物を運びやすい場所に、工房などが軒を連ねている。
広場に面した場所には店が並んでいるので、裏通りと言ってもおかしくない場所で、不意にマリアローゼをグランスが壁際に寄せた。
そして、その前に立ちはだかる。
「手荒な事はしたくありません。どうか、ご同道戴きたい」
壮年の男の声がするが、グランスは目の前から退かなかった。
「お嬢様をお連れしたいのであれば、正式に城へ招待状を出すべきでは?」
「それは一度断られているのでね」
(初耳ですわ!
断ったのは十中八九、レイ叔父様ですわね?)
囲んでいた男の1人が、奇声を上げてグランスに斬りかかり、グランスは難なく一刀の元に斬り捨てた。
「よせ!」という男の声が無視された形だが、仲間を斬られた荒くれ者達がそれを更に無視して、グランスの剣の餌食となる。
見えないけれど、倒れた男達と、血の匂いがそれを現実だと教えてくれる。
その時、リン、とその場にそぐわない涼やかなベルの音がした。
入り口に備え付けられたベルが鳴る音で、この騒ぎを知らない誰かが扉から出てきてしまったのだろう。
わずかに、グランスが立ち位置を変える。
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「この子供が、どうなってもいいのか?」
目の前に立っていたグランスに視界を塞がれて、何が起こっていたのかは分からない。
が、通りに面した建物から出て来た子供を人質に取ったのだろうという事はマリアローゼにも理解出来た。
マリアローゼは静かにグランスに命じる。
「グランス、お退きなさい」
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