345 / 357
連載
初めての散歩と襲撃
しおりを挟む
「そうでした。冒険者の方が町で問題を起こす事はございますの?」
マリアローゼはまた、以前から気になっていた疑問を口にしてグランスを見上げる。
「国によると思いますが、基本的には無いかと思います。少なくとも内輪で解決すると思いますね。私闘は禁じられているので、ギルド立会いの下で決闘というのはあるかも知れませんが、個人的に戦うとなると懲罰の対象になるかと」
ふむふむ、とマリアローゼは頷いた。
漫画で良くあるような、強いランクの人でなしが弱者を一方的にいたぶるなんて事は普通は無い様だ。
もし、そんな事があったら国に問題視されて、治安を理由にギルドごと潰されそうではあるが。
「逆に町の治安強化にはなりますの?」
「それは、なると思います。自警団のない町でも冒険者ギルドの支部があれば、そこが中心になる事もありますので」
話しながらゆっくりと馬で移動して、広場の前の邸宅ホテルで馬を預ける。
マリアローゼはグランスの人差し指を握って、楽しそうに歩き出した。
「わたくし、二人で町をお散歩するのは初めてですの」
「その様な栄誉を私が賜って良いのですか?」
穏やかな笑顔で返したグランスを見上げて、マリアローゼも微笑んだ。
「グランスはずっと側に居て守ってくださるのだから、良いのです」
「お嬢様に好きなお相手が出来たら、なるべく遠くからお守り致しましょう」
マリアローゼの嬉しそうな声に、ふっと懐かしそうな目をしたグランスが優しく答える。
まだまだ先の話にはなるだろうが、マリアローゼも驚いた顔をした。
「まあ!グランスったら気が早すぎますわ。それにわたくしはお嫁に行くつもりはありませんから、ずっとわたくしに付き合わなくてはならないかもしれませんのよ」
「何時まででも」
くすり、と優しく笑うグランスを見上げて、マリアローゼは視線を町並みへと戻した。
女性の一人歩きはやはり危険なので、女性用の公衆浴場は大邸宅が高級ホテルと化した広場に面した場所に建てるのが、良いかもしれない。
特に貴族の女性が、わざわざ部屋の風呂よりも選ぶような浴場だとしても、遠ければ選択肢から外れてしまう可能性もあるのだ。
広場なら平民の女性や子供も安心して過ごせるだろうし、帰る道も選べる。
広場を横切る大きい道を西に行くと、港が現れる。
漁師や、荷物の揚げ降ろしをする荷役人達が、忙しそうに働いていた。
潮の香りと海産物の香りがして、海沿いの道を左へ折れる。
港からやや近い場所は商業区域だ。
荷物を運びやすい場所に、工房などが軒を連ねている。
広場に面した場所には店が並んでいるので、裏通りと言ってもおかしくない場所で、不意にマリアローゼをグランスが壁際に寄せた。
そして、その前に立ちはだかる。
「手荒な事はしたくありません。どうか、ご同道戴きたい」
壮年の男の声がするが、グランスは目の前から退かなかった。
「お嬢様をお連れしたいのであれば、正式に城へ招待状を出すべきでは?」
「それは一度断られているのでね」
(初耳ですわ!
断ったのは十中八九、レイ叔父様ですわね?)
囲んでいた男の1人が、奇声を上げてグランスに斬りかかり、グランスは難なく一刀の元に斬り捨てた。
「よせ!」という男の声が無視された形だが、仲間を斬られた荒くれ者達がそれを更に無視して、グランスの剣の餌食となる。
見えないけれど、倒れた男達と、血の匂いがそれを現実だと教えてくれる。
その時、リン、とその場にそぐわない涼やかなベルの音がした。
入り口に備え付けられたベルが鳴る音で、この騒ぎを知らない誰かが扉から出てきてしまったのだろう。
わずかに、グランスが立ち位置を変える。
その背が僅かに緊張感を帯びていた。
「この子供が、どうなってもいいのか?」
目の前に立っていたグランスに視界を塞がれて、何が起こっていたのかは分からない。
が、通りに面した建物から出て来た子供を人質に取ったのだろうという事はマリアローゼにも理解出来た。
マリアローゼは静かにグランスに命じる。
「グランス、お退きなさい」
マリアローゼはまた、以前から気になっていた疑問を口にしてグランスを見上げる。
「国によると思いますが、基本的には無いかと思います。少なくとも内輪で解決すると思いますね。私闘は禁じられているので、ギルド立会いの下で決闘というのはあるかも知れませんが、個人的に戦うとなると懲罰の対象になるかと」
ふむふむ、とマリアローゼは頷いた。
漫画で良くあるような、強いランクの人でなしが弱者を一方的にいたぶるなんて事は普通は無い様だ。
もし、そんな事があったら国に問題視されて、治安を理由にギルドごと潰されそうではあるが。
「逆に町の治安強化にはなりますの?」
「それは、なると思います。自警団のない町でも冒険者ギルドの支部があれば、そこが中心になる事もありますので」
話しながらゆっくりと馬で移動して、広場の前の邸宅ホテルで馬を預ける。
マリアローゼはグランスの人差し指を握って、楽しそうに歩き出した。
「わたくし、二人で町をお散歩するのは初めてですの」
「その様な栄誉を私が賜って良いのですか?」
穏やかな笑顔で返したグランスを見上げて、マリアローゼも微笑んだ。
「グランスはずっと側に居て守ってくださるのだから、良いのです」
「お嬢様に好きなお相手が出来たら、なるべく遠くからお守り致しましょう」
マリアローゼの嬉しそうな声に、ふっと懐かしそうな目をしたグランスが優しく答える。
まだまだ先の話にはなるだろうが、マリアローゼも驚いた顔をした。
「まあ!グランスったら気が早すぎますわ。それにわたくしはお嫁に行くつもりはありませんから、ずっとわたくしに付き合わなくてはならないかもしれませんのよ」
「何時まででも」
くすり、と優しく笑うグランスを見上げて、マリアローゼは視線を町並みへと戻した。
女性の一人歩きはやはり危険なので、女性用の公衆浴場は大邸宅が高級ホテルと化した広場に面した場所に建てるのが、良いかもしれない。
特に貴族の女性が、わざわざ部屋の風呂よりも選ぶような浴場だとしても、遠ければ選択肢から外れてしまう可能性もあるのだ。
広場なら平民の女性や子供も安心して過ごせるだろうし、帰る道も選べる。
広場を横切る大きい道を西に行くと、港が現れる。
漁師や、荷物の揚げ降ろしをする荷役人達が、忙しそうに働いていた。
潮の香りと海産物の香りがして、海沿いの道を左へ折れる。
港からやや近い場所は商業区域だ。
荷物を運びやすい場所に、工房などが軒を連ねている。
広場に面した場所には店が並んでいるので、裏通りと言ってもおかしくない場所で、不意にマリアローゼをグランスが壁際に寄せた。
そして、その前に立ちはだかる。
「手荒な事はしたくありません。どうか、ご同道戴きたい」
壮年の男の声がするが、グランスは目の前から退かなかった。
「お嬢様をお連れしたいのであれば、正式に城へ招待状を出すべきでは?」
「それは一度断られているのでね」
(初耳ですわ!
断ったのは十中八九、レイ叔父様ですわね?)
囲んでいた男の1人が、奇声を上げてグランスに斬りかかり、グランスは難なく一刀の元に斬り捨てた。
「よせ!」という男の声が無視された形だが、仲間を斬られた荒くれ者達がそれを更に無視して、グランスの剣の餌食となる。
見えないけれど、倒れた男達と、血の匂いがそれを現実だと教えてくれる。
その時、リン、とその場にそぐわない涼やかなベルの音がした。
入り口に備え付けられたベルが鳴る音で、この騒ぎを知らない誰かが扉から出てきてしまったのだろう。
わずかに、グランスが立ち位置を変える。
その背が僅かに緊張感を帯びていた。
「この子供が、どうなってもいいのか?」
目の前に立っていたグランスに視界を塞がれて、何が起こっていたのかは分からない。
が、通りに面した建物から出て来た子供を人質に取ったのだろうという事はマリアローゼにも理解出来た。
マリアローゼは静かにグランスに命じる。
「グランス、お退きなさい」
222
❤キャライメージはPixivにあるので、宜しければご覧になって下さいませ
お気に入りに追加
6,034
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。