悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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珍しい褒美

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マリアローゼはうーんと、考えてからヴァロに持ちかけた。

「その仕事の内容についてなのですけれど、わたくしでも出来るお仕事でしたら、他の子供たちにも可能でしょうか?」

「まあ、そうかもしれんな。だが、姫さんには護衛がつくだろう?例えば薬草摘みと言っても、危険が全く無い訳じゃねえからなあ。子供だけで行かせる訳にもいかんだろう」
「それは、確かにそうですわ。例えば町の中で行う簡単な依頼とかはございますか?」

ヴァロは頷きながらマリアローゼを抱き上げると、近くの椅子にちょこんと座らせた。
髭をもさもさ撫でながらうーん、と考えると、ヴァロは言った。

「ここは裕福な町ではあるんだが、例えば飼い猫を探したい貴族がいたとして、わざわざギルドに頼むくらいなら使用人にやらせるだろう。逆にちょっとした遣いを頼みたい、としても庶民なら自分でやるだろうな。だから、冒険者である必要の無い依頼は、そんなに来ない」

「そうなんですのね!でしたら、そういった町の人を助ける小さな仕事はこちらで扱っても大丈夫と言う事ですわね。例えば子守ですとか、家事ですとか」

マリアローゼの提案に、ヴァロは目を見開いた。
そんな依頼をする人間がいるのだろうか?という疑問もある。

「庶民はそこまで裕福じゃねえからなあ、どうだろうな」
「裕福じゃないからこそですわ。女性は子供が育つまで中々働けませんもの」
「ほう」

この世界では冒険者にも女性がいて、それなりに女性も働いている世界ではあるが、国によっては差別もある。
夫を失って路頭に迷う妻もいるし、片親で育てるとすると身を持ち崩す女性達も少なくない。
そして、身を持ち崩した女性はそこから抜け出せないまま、病気や暴力に晒されて長生きは出来ないのだ。

「例えば一日50銅貨の仕事があるとして、子供の預け賃は10銅貨だとしたら、預けて働きませんか?」
「それは……働くな」

ギルド長としての鋭い視線を見せ、こくん、と頷くマリアローゼを見詰めた。
需要は多くなく、されど切実に必要とされる仕事だろう。
だが、儲けを考えたら難しい。
目の前の可愛らしい幼い令嬢が、澄んだ目で訴えかけて来た。

「親子共に安全に生きていける道を作りたいのです」
「いや…女神なんて眉唾かと思ったが、たいしたもんだ。そういう事なら姫さんに何でも協力しよう」

ヴァロが大きな身体で跪いて、マリアローゼの小さな手を握った。
後ろで控えていた厳しい目をした女性も、同じ様に跪く。

(え?待って待って?
またですの!?)

話を聞いていた冒険者達も、一部涙を流しながら跪く。
兄、シルヴァインはまた遠い眼をしていた。

「あ、あの、では皆様にお願いがございます!冒険の途中、旅先で、困っている人々を見かけたら、フィロソフィ領アイテールの泉の教会に来られます様お伝え下さいませ。来られない方はお手紙でも構いません。わたくし、領民の移動許可証を王様より頂いておりますので」

ドヤっと胸を張って言い放つと、副ギルド長が眉根を寄せて訊ねた。

「わたくし、副ギルド長のヴィオレッタと申しますが、何故そのような書状を貴方様がお持ちなのでしょうか?」

マリアローゼは問いかけられて目をぱちくりした。
確かに5歳の幼女がそんなものを一国の王から貰っているのは異例の事である。

「ええと、ある事情がございまして、王様から何でも褒美を取らすと言われたので貰いましたの」

一瞬、その場がシーンとなった。
そして、ヴァロが大爆笑をして、つられて皆も笑い出した。

「そりゃあまた、剛毅な話だ!金だか宝石だかじゃないのがすげえや」
「私も誠心誠意尽くさせて頂く所存です」

ぴしりと、立ち上がったヴィオレッタが頭を深く下げた。

「今の時期、祭りの開催に向けてこちらに向けて旅立つ人々もございますれば、冒険者を雇う人々もおります。その者達にも呼びかけましょう。早速他のギルドへ手紙を用意して参ります」

それだけ告げるとさっさと奥に走って行った。

「ああ、あいつがあんなにやる気出すの何年ぶりだ。姫さんは他人に火をつけるのが上手いな」

(そんな、人を放火魔みたいに仰らないで…!)
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