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闇の子爆誕
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「ありがとう、ラディ、ノクス」
ぺこりと頭を下げる二人に、子供達がマリアローゼに釣られて、口々にありがとう、と言うと、二人は驚いた様な顔をしてから笑顔を見せた。
「まあ!お礼が言えるなんて何て素晴らしい子達でしょう」
すかさずマリアローゼも大袈裟に褒め称え、頭をナデナデと撫でる。
あまり年齢は変わらないのにお姉さんぶっているのである。
だがそこに、厨二病が現れた。
「俺は嫌いだ、自分の髪の色なんて、闇の色じゃないか…!」
悔しそうに俯いた顔を見て、マリアローゼは静かに見詰めた。
(拗らせていますわね?
でも、わたくしの侍女と侍従も同じ色なのですけど?……自分の世界に入り込みすぎですわ!)
「わたくしのお兄様も、侍女と侍従も貴方と同じ美しい黒髪ですわ。わたくしは大好きですの」
「でも闇が…」
(闇は置いておいてください、闇は!
貴方実は闇が好きなのではなくて?)
闇から離れようとしない厨二病患者を、マリアローゼは切り離しにかかった。
「闇は悪いものではありませんわ。夜になって闇が訪れるから、人々は安心と眠りを得られるのです。ほら、そちらに出来る木陰だって、そうでしょう?太陽の光を遮る事で、私達は涼しく過ごせますの。恵みを与える太陽と、対になるくらい闇も素晴らしいものですのよ」
(どうですか!
これで厨二病は封じましたわよ?)
ドヤっとしたマリアローゼの力説に、他の黒髪の子供達がわあ、と嬉しそうな声を上げる。
年上の子供に何だか分からない「悪い俺可哀想」「悪い俺カッコイイ」を押しつけられるのは嫌だろう、とマリアローゼはにっこり子供達に微笑んだ。
ところが、彼は斜め上に、飛んだ。
「だから、姫様の従者は黒髪ばかりなのですね!?貴方を守る闇に、俺もなれますか!?」
貴方を守る闇と言う新しいパワーワードにマリアローゼは眩暈を覚えた。
キラキラした目をする子供達の前で、否定の言葉は口に出来ない。
「どんな色でも構いませんの。努力を重ね続ければ、何れはそういう事も出来るでしょう。騎士になる事も、冒険者として英雄になる事も、皆さんの努力次第で色々な事が叶いますわ」
黒だけ特別扱いしないぞ、という意味を込めてマリアローゼも更に力説した。
シルヴァインは顔を背けて肩を揺らして、笑っている。
(笑ってる場合ではございませんわよ、お兄様)
飲物の用意をせっせとしてくれたルーナとシスネとオリーヴェが、作業を終えたのを見て、マリアローゼは子供達を促した。
「さ、あの飲物を飲みましょう」
子供達はルーナから飲物を貰う度に、ありがとう!と元気に言い、マリアローゼはその度に子供達をナデナデと撫でた。
流れ作業である。
(子供達の髪の毛は柔らかくて、可愛らしいですわね)
などと微笑む熟年の5歳児、もうすぐ6歳児なのだった。
美味な飲物に喜ぶ子供達に向けて、マリアローゼは話を続けた。
「わたくしは、貴方達の夢を叶える為のお手伝いをしますわ。これから隣に学校を作ります。読み書きが出来ないと冒険者になれません。それに、兵士達に戦いの指導もお願いしておきますので、強くなりたい方は是非習ってね」
先ほどの闇の子が大きく頷くのが見えた。
「それから、貴方達に簡単に出来る仕事を用意しますので、お仕事してくださる?」
「するー!」
「します!」
「やりたい!」
おや?ここは捻くれた子供が「仕事したら何くれんの?」って言い出すところでは?
皆に肯定されてしまって、餌で釣る大作戦が暗礁に乗り上げてしまった。
それはそれで成功なので良い事なのだが。
悪い人に騙されないか逆に心配になってしまったのである。
王国では奴隷制度は禁止されており、雇用に関してもきちんとした法律があるので、未払いのまま勝手に解雇のような事は許されない。
ただ、賃金に見合わない労働など、知識がない者達が虐げられるような事例は後を絶たない。
町に住まい、弁護士などの存在を知っているならば、話は別なのだが。
他国に売り飛ばされて奴隷になる者もいれば、ガレー船の漕ぎ手などの過酷な労働に放り込まれて、使い潰される人々もいる。
マリアローゼはこくん、と頷いた。
更に説明を続ける。
「良いですか?皆さん。仕事には対価があります。良い事にはご褒美なのです。仕事をすると、おやつが今より美味しくなります!」
わあ、と子供達の顔が笑顔で輝いた。
(とりあえずはこれで良いでしょう)
学校や職業訓練については、施設が建ち始めたら追々伝える事にして、マリアローゼはにっこり微笑んだ。
ぺこりと頭を下げる二人に、子供達がマリアローゼに釣られて、口々にありがとう、と言うと、二人は驚いた様な顔をしてから笑顔を見せた。
「まあ!お礼が言えるなんて何て素晴らしい子達でしょう」
すかさずマリアローゼも大袈裟に褒め称え、頭をナデナデと撫でる。
あまり年齢は変わらないのにお姉さんぶっているのである。
だがそこに、厨二病が現れた。
「俺は嫌いだ、自分の髪の色なんて、闇の色じゃないか…!」
悔しそうに俯いた顔を見て、マリアローゼは静かに見詰めた。
(拗らせていますわね?
でも、わたくしの侍女と侍従も同じ色なのですけど?……自分の世界に入り込みすぎですわ!)
「わたくしのお兄様も、侍女と侍従も貴方と同じ美しい黒髪ですわ。わたくしは大好きですの」
「でも闇が…」
(闇は置いておいてください、闇は!
貴方実は闇が好きなのではなくて?)
闇から離れようとしない厨二病患者を、マリアローゼは切り離しにかかった。
「闇は悪いものではありませんわ。夜になって闇が訪れるから、人々は安心と眠りを得られるのです。ほら、そちらに出来る木陰だって、そうでしょう?太陽の光を遮る事で、私達は涼しく過ごせますの。恵みを与える太陽と、対になるくらい闇も素晴らしいものですのよ」
(どうですか!
これで厨二病は封じましたわよ?)
ドヤっとしたマリアローゼの力説に、他の黒髪の子供達がわあ、と嬉しそうな声を上げる。
年上の子供に何だか分からない「悪い俺可哀想」「悪い俺カッコイイ」を押しつけられるのは嫌だろう、とマリアローゼはにっこり子供達に微笑んだ。
ところが、彼は斜め上に、飛んだ。
「だから、姫様の従者は黒髪ばかりなのですね!?貴方を守る闇に、俺もなれますか!?」
貴方を守る闇と言う新しいパワーワードにマリアローゼは眩暈を覚えた。
キラキラした目をする子供達の前で、否定の言葉は口に出来ない。
「どんな色でも構いませんの。努力を重ね続ければ、何れはそういう事も出来るでしょう。騎士になる事も、冒険者として英雄になる事も、皆さんの努力次第で色々な事が叶いますわ」
黒だけ特別扱いしないぞ、という意味を込めてマリアローゼも更に力説した。
シルヴァインは顔を背けて肩を揺らして、笑っている。
(笑ってる場合ではございませんわよ、お兄様)
飲物の用意をせっせとしてくれたルーナとシスネとオリーヴェが、作業を終えたのを見て、マリアローゼは子供達を促した。
「さ、あの飲物を飲みましょう」
子供達はルーナから飲物を貰う度に、ありがとう!と元気に言い、マリアローゼはその度に子供達をナデナデと撫でた。
流れ作業である。
(子供達の髪の毛は柔らかくて、可愛らしいですわね)
などと微笑む熟年の5歳児、もうすぐ6歳児なのだった。
美味な飲物に喜ぶ子供達に向けて、マリアローゼは話を続けた。
「わたくしは、貴方達の夢を叶える為のお手伝いをしますわ。これから隣に学校を作ります。読み書きが出来ないと冒険者になれません。それに、兵士達に戦いの指導もお願いしておきますので、強くなりたい方は是非習ってね」
先ほどの闇の子が大きく頷くのが見えた。
「それから、貴方達に簡単に出来る仕事を用意しますので、お仕事してくださる?」
「するー!」
「します!」
「やりたい!」
おや?ここは捻くれた子供が「仕事したら何くれんの?」って言い出すところでは?
皆に肯定されてしまって、餌で釣る大作戦が暗礁に乗り上げてしまった。
それはそれで成功なので良い事なのだが。
悪い人に騙されないか逆に心配になってしまったのである。
王国では奴隷制度は禁止されており、雇用に関してもきちんとした法律があるので、未払いのまま勝手に解雇のような事は許されない。
ただ、賃金に見合わない労働など、知識がない者達が虐げられるような事例は後を絶たない。
町に住まい、弁護士などの存在を知っているならば、話は別なのだが。
他国に売り飛ばされて奴隷になる者もいれば、ガレー船の漕ぎ手などの過酷な労働に放り込まれて、使い潰される人々もいる。
マリアローゼはこくん、と頷いた。
更に説明を続ける。
「良いですか?皆さん。仕事には対価があります。良い事にはご褒美なのです。仕事をすると、おやつが今より美味しくなります!」
わあ、と子供達の顔が笑顔で輝いた。
(とりあえずはこれで良いでしょう)
学校や職業訓練については、施設が建ち始めたら追々伝える事にして、マリアローゼはにっこり微笑んだ。
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