悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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命名ウナライス

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「んまああああい!」

もぐもぐ頬張りながら、ユリアは歓喜の涙を流した。
この地に生まれてから、食べる事など叶わないと思った奇跡の味なのである。
そして、舌鼓を打ちながらも、焼き加減には鋭く目を配っている。

マリアローゼは次に配られたウナ丼(仮)を口に運んでいた。
修練の合間に訪れた兄達と共に、急遽運ばれた机で兄弟仲良く味見…

(味見と言うかもうこれ食事ですわよね?)

食している。

(名前は何にしようかしら?
面倒くさくて昨日、カレーライスと命名してしまったから、ウナライスかしら…?
いきなり丼…ドンと言われても困るでしょうし、ウナメシ?
いえ、メシという言葉はちょっと乱暴な部類かしら?
かといって、古語のオリュザ…だと何だか呼ぶの面倒くさいですわね…)

「ウナライス……」

「ほう、これはウナライスというのか」

思わず語感を確かめたくて呟いた言葉に、シルヴァインが素早く反応した。
もう否定出来ないし、しても新しい名前を考えなくてはいけない。
マリアローゼはこくん、と頷いた。

「この食べ物は疲労回復に良いのですよ」

ふんす、と胸を張って言うと、キースが真面目な顔で頷いた。

「僕は知りませんでした。ローゼは博識ですね」

(嫌味じゃない。
嫌味じゃないと分かってるけど、恥ずかしい)

マリアローゼよりも遥かに博識な兄なのだから。
そのキースに純粋に手放しに褒められるのは、騙しているような罪悪感に苛まれて、マリアローゼはもごもごと言い訳した。

「い…いえ、そんな気がしたのです…これからきちんと研究いたしますわ……」

思わず顔を赤くして、丸いほっぺを隠すように両手で押さえて恥らう姿を見て、兄達はふふっと笑う。
双子が幸せそうに笑いながら続けた。

「いいよ、何だって。こんな美味いんだから」
「美味いのが一番だろ、ローゼ」

(確かに、それは真理ですわね!)

マリアローゼはジブリールとミカエルの励ましにこくん、と頷いた。

「美味しい物でお腹が一杯になれば、皆幸せに過ごせますわね」

何とも庶民的な意見を口にしながら、マリアローゼは兄達と微笑んだ。
そんなマリアローゼを見て、ルーナとノクス、オリーヴェも微笑む。
シスネは笑顔を浮かべかけ、慌てて冷静な顔を装い、ラディアータの顔を盗み見ると、無表情な顔の下に不機嫌さを漂わせている。
小さな吐息を吐き、シスネは視線をマリアローゼに戻した。


料理会が無事終わり、天井知らずに評価が鰻上ったマリアローゼは、厨房を後にした。
お腹も膨れて、これから晩餐会と言われても、部屋でぐったりしたいくらいである。
が、ジェレイドに部屋に押しかけられそうなので、なるべくゆったりしたドレスに着替えて、デザートの為だけに晩餐室へ向かった。

晩餐室への道のりは厨房へ行くのと然して変わらない。
中庭に面した扉から出て、右の扉を抜けて真っ直ぐ突き当たりまで行くと、玄関ホールに下りる大階段がある。
基本的に正面から2階に上がるにはこの大階段を上る必要があるからか、いつも階段下には兵士が立っている。

階段を降り切ると、振り返った先に廊下が有り、左に曲がってすぐ右に現れる廊下を進んで三つ目の扉が晩餐室だ。
既に従僕達が扉の前に待機していて、部屋の中には家族が揃い始めている。
部屋の前でルーナやノクス達と別れ、彼らも階下へ食事に向かう。
マリアローゼは入口でお辞儀をすると、何時もどおりジェラルドの左隣の席に座った。

「今日も素晴らしい活躍だったと聞いているよ。町で出す祭りの食事と、他にも美味しい食事を作ったんだってね」
「お口に合えば宜しいのですけれど」

謙遜するマリアローゼに、まさかのミルリーリウムが褒め言葉で讃えた。

「お昼にナンを頂いたけど、とても美味しかったですわ、ローゼ。学生時代に町で食べた食事よりももっと、懐かしい気分にもなれて楽しかったですわ」
「まあ!お母様にお喜びになって頂けたのなら嬉しゅうございます」

嬉しそうなマリアローゼを見て、一瞬ジェレイドはスン、と表情を暗くした。

「僕も褒めてるのに、反応が違いすぎないかい?」

言われて、マリアローゼはこてん、と首を傾げた。

(そんなに違ったかしら?)

「でも、この度の色々な件でレイ様には感謝しておりますのよ?」
「そうかい?ならよしとしよう!」

途端に元気になってにこにこしたジェレイドを見て、マリアローゼもにっこり微笑む。
実際に実務を丸投げ状態なのである。
一部はシルヴァインやキースが手伝っているとはいえ、多忙なのは確かだ。
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