悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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ココナの使い道

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「君が僕を訪ねて来てくれるなんて、天にも昇る気持ちだよ!」

ガタタッと音を立てて、執務室の部屋の主が立ち上がった。
ジェレイド・フィロソフィ、見た目は完璧な美貌のイケメン魔剣士である。
今は兄のジェラルド公爵の代わりに、領地を治める代理人としてステラマリウス、海の城の執務室で絶賛仕事中だ。
そこに料理を終えたマリアローゼ一行は訪れていた。

「地面に戻して差し上げますよ」

ぽきぽきと指を鳴らしながら、ユリアが冷たく宣言する。
この二人はどうにも相性が悪い。

(趣味(マリアローゼへの愛)は似ていらっしゃるのに……)

何より怖いのはユリアが指を押したり捻ったりせずに、両手とも身体の脇で開いたまま指を鳴らすところだ。

(何それ怖い)

「言葉遣いは丁寧だけど、脅迫だよね?それ。で、どうしたんだい?ローゼ」

執務机から離れて、ジェレイドはマリアローゼの前までやって来た。
そして、美しい笑みを浮かべて、膝に手を置いて、マリアローゼに視線を合わせる。
黒い物に視界を塞がれた。
ユリアの腹だ。

「ちょっと、邪魔なんだけど?」
「そうですか?」

抗議の声にすっ呆けるユリアの背中をマリアローゼは見ていた。

「レイ様にお願いがあって参りましたの」
「ほら、マリアローゼのお願いなんだから、目を見て話さないと、あの愛らしい目を見て話したいんだよ僕は」

全く退く気の欠片もない背中を、仕方なくマリアローゼがポンポンと叩いた。

「ひゃわ!マ、マリアローゼ様がお望みなら仕方ないですね。でももっと離れてください。その線の所まで下がって!」
「ええ?五月蝿いなあ…」

と言いながらもジェレイドは下がった様で、ユリアが漸くマリアローゼの目の前から退いた。

(……遠い)

割と遠くに立たされているジェレイドは、笑顔を浮かべている。

「ええと、ナーウィス領に沢山自生しているココナはあまり使い道がないと伺ったのですけど、それを沢山取り寄せていただきたいのです」
「ほう?また、何でだい?確かに糖分としてはいいけれど、特有の香りと味もあるし、そこまで需要は無い筈だが」

こめかみにすらりとした指を当てて、ジェレイドが問いかける。
マリアローゼはこくん、と頷いた。

「銀砂糖の様に粉状に加工して頂きたいのです、我が領地のレモーヌと合わせて」
「ふむ?新しいジュースにするのかな?」
「いえ、赤ちゃんと幼児とその子達のお母様の為の飲み物です」

ジェレイドは執務机に腰掛けて、机の上の書類を手元に引き寄せながら聞く。

「需要はあるのかい?」
「いいえ、今はありません。レイ様、ココナは栄養価が高いと存じているのですが、間違いでしょうか?」

不安そうに胸の辺りで小さな手を組むマリアローゼを見て、思わずジェレイドは破顔する。

「そんな不安そうな君も愛おしいよ。需要がないのに何故作りたいのか教えてくれるかい?」
「ええ。以前図書館に通っていた時に見つけた医療の本や、神聖教の本を読んだ限り、この大陸の乳幼児の死亡率は高いです。それはひとえに、栄養価が低いからではないかと考えましたの。そして、病気に対する免疫効果もあまり無いのでしょう。ですが、ココナとレモーヌを組み合わせた物でしたら、少ない量で命を支え、守る事が可能ではないでしょうか」

ジェレイドは暫く、口に手を当てて考え込んだ。
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