悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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優しい兄達とカレー

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「ところでお兄様達は何の御用でいらっしゃいましたの?」
「ああ……今日君が、商会に行っただろう?その後すぐメイヤールが訪ねてきてね」
「商品を増やしたいと言って来たんですよ」

そういえば、そんな話も致しましたっけ。

他人事のように思い浮かべながら、マリアローゼは頷いた。

「出来なくても問題は無いと思うのですが、一応提案だけさせて頂きましたわ」
「何としてでもやり遂げるって言ってたけどね。彼はすっかり君に心酔していたんだけど」

(はて……?)

マリアローゼはこてん、と首を傾げた。
確かにメイヤールのやる気は感じられたが、心酔された覚えは全く無かった。

「特別なお話などは致しませんでしたわよね?ルーナ」
「はい。いつも通りの素敵なお嬢様でございました」

それは否定なのか肯定なのか、悩む所である。
が、商品に対してと、孤児院の労働についてだけだし、たいした事は言っていない。
それでも、孤児院や救護院をのんびりと働ける場にして、資金を得る事は大事な一歩である。
彼らは労働できないと見做されて、社会から弾き出されているのだから。

「将来的に孤児院と救護院の方々にも、簡単なお仕事をして頂いて、自分達の手で生活を向上出来る様にしたいのです。今日の事は始まりのほんの一歩でしかありませんのよ」

にっこりと優しく微笑むマリアローゼを見て、何故かシスネとラディアータが驚愕の表情を浮かべた。
シルヴァインもその反応に一瞬だけ目を向けたが、マリアローゼの頭を優しくぽんぽんと撫でる。

「うん、分かっているよ。工房にも発注したから近いうちに形になるだろう」
「商会の仕事の支援は、こちらに任せておいてください」

優しいシルヴァインとキースの申し出に、マリアローゼはふふっと嬉しそうに笑った。
二人はわざわざ、マリアローゼに報せに来てくれたのだろう。
それだけでマリアローゼは幸せな気持ちになれたのだ。

「お嬢様、煮えました」

ユグムが、会話の途切れ目にそっと申し出る。
肉と野菜の香りが漂う鍋に、マリアローゼはテーブルに並べたままの調味料を手にして、鍋の中に幾つも振りかけた。
足りない調味料を追加させて、更に煮込むように言うと、部屋中にスパイスの香りが広がっていく。

「カレーだ!カレーの匂いがする!!」

と一番最初に騒いだのが、勿論ユリアである。
もう完全に、マリアローゼ=転生者という図式は分かってしまっているだろう、と思いつつ、マリアローゼはこくん、と頷いた。

「カレーという料理なのですね。この香りは独特ですが、アルハサドの料理でしょうか?それともグーラか…」
「もしかしたら、外国にはあるかもしれませんね。貴重な香辛料を20種類以上使えるかどうか、ですけれど…」

ふむ、とうなずいたユグムは、副料理長に命じて、早速同じ配分の調味料を作成している。
マリアローゼは、その行動の速さと正確さを見て思った。

(わたくしよりも遥かに優秀ですわ!)
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