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調味料と新しい料理
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「それでは始めましょう!」
商会から戻ったマリアローゼは、昼食を摂り昼寝を終えて、今は地下一階の厨房に降臨していた。
マリアローゼが来ると言う噂を聞いて、屋敷の料理人達まで勢ぞろいをしている。
号令をかけたのはマリアローゼだが、作業は料理人達だ。
ケチャップ作り組は、マールのヘタだけ取り去ったものを、鍋で煮始める。
鰻組は、ユリアの実演で捌き方を伝授され、焼くのに使用される炭火も用意していた。
ウニ煎餅組は米粉とウニを混ぜて練りこんでいる。
暇なのである。
足置き台に上って、偉そうに腰に手を当てて胸を張っていたが、やる事が無い。
「お嬢様、こちらにテーブルを用意致しました。どうぞお座りになって下さい」
「でも…」
やる事は無いが責任者ではある。
逡巡していると家令のノウェムがにこりと微笑んだ。
「お嬢様にその様に見詰められていては、皆緊張致しますので」
「そ、それもそう、ですわね」
尤もらしい理由に頷いて、ルーナの手を借りて足置き台の上から降りたマリアローゼは、厨房の隅に置かれた丸いテーブルの横の椅子にちょこんと座った。
「何かご所望は御座いますか?」
「では調味料を一通り頂ける?」
飲み物について聞いたつもりのノウェムは微笑みながら、一瞬間を置いて頷いた。
まさかの調味料全部である。
背後で聞いていた従僕がさっと料理人達と連携して、小皿に調味料を小分けにして準備している。
その間にノウェムはグラスと、銀色の水差しをテーブルに置いた。
味見をする際に味を初期化する為の水だ。
マリアローゼは、水を見てこくん、と頷いた。
まだ年若い料理人見習いの少年が、調味料を運んできて横に立った。
そしてその調味料の名前と、どんな料理に使うのかを説明してくれる。
背後には鬼教官のように、調理人が腕を組んで、その答えに間違いないか注視している。
(何だか試験を思い出しますわね…)
マリアローゼはふるりと首を振って、説明された調味料から少しだけ小匙にとって味見をしていく。
殆どが擂り潰した粉状の物だが、中には粘液状のものもある。
そして、山椒に近い香りの物を見つけた。
「これは、産地はどちらになりますの?入手の難易度は?」
「それは、遠方から苗を取り寄せまして、現在領内でも生育しております」
「まあ……」
レイ様の差し金かしら?
疑いが頭を過ぎるものの、調味料があって困る事は無い。
(生育と言う事はわざわざ手間をかけずに植えただけ、なのかしら?)
マリアローゼの無言の反応を察したノウェムが、横から声を発した。
「庭にある森の中にも植えて御座いますよ」
「そうですのね」
「はい。あの森には育てるのに適しているのかを見る為に、多種多様な植物が植わっています」
「今度是非見回ってみたいと存じます」
ノウェムの言葉に頷きながら、マリアローゼはそう答えた。
ここにも勿論調味料としても材料としてもあるだろうが、森の中で育った木々たちも見てみたいのである。
(ふえぇ、この身体しゅごい……再び)
普通の人なら、調味料をペロッとして、これは青酸カリ……とはならないが、何となくしか味は覚えられないと思う。
甘い、辛い、しょっぱい、苦い、酸味がある、独特な香り、などでふわっと分類されているだろうが、この身体は違う。
薬棚にラベルを貼って仕舞うように、綺麗に整然と揃えられるのだ。
更に、味を再現する事も難しくない。
つまり、食べたかったあの味、というものを再現出来るのだ。
材料さえあれば。
商会から戻ったマリアローゼは、昼食を摂り昼寝を終えて、今は地下一階の厨房に降臨していた。
マリアローゼが来ると言う噂を聞いて、屋敷の料理人達まで勢ぞろいをしている。
号令をかけたのはマリアローゼだが、作業は料理人達だ。
ケチャップ作り組は、マールのヘタだけ取り去ったものを、鍋で煮始める。
鰻組は、ユリアの実演で捌き方を伝授され、焼くのに使用される炭火も用意していた。
ウニ煎餅組は米粉とウニを混ぜて練りこんでいる。
暇なのである。
足置き台に上って、偉そうに腰に手を当てて胸を張っていたが、やる事が無い。
「お嬢様、こちらにテーブルを用意致しました。どうぞお座りになって下さい」
「でも…」
やる事は無いが責任者ではある。
逡巡していると家令のノウェムがにこりと微笑んだ。
「お嬢様にその様に見詰められていては、皆緊張致しますので」
「そ、それもそう、ですわね」
尤もらしい理由に頷いて、ルーナの手を借りて足置き台の上から降りたマリアローゼは、厨房の隅に置かれた丸いテーブルの横の椅子にちょこんと座った。
「何かご所望は御座いますか?」
「では調味料を一通り頂ける?」
飲み物について聞いたつもりのノウェムは微笑みながら、一瞬間を置いて頷いた。
まさかの調味料全部である。
背後で聞いていた従僕がさっと料理人達と連携して、小皿に調味料を小分けにして準備している。
その間にノウェムはグラスと、銀色の水差しをテーブルに置いた。
味見をする際に味を初期化する為の水だ。
マリアローゼは、水を見てこくん、と頷いた。
まだ年若い料理人見習いの少年が、調味料を運んできて横に立った。
そしてその調味料の名前と、どんな料理に使うのかを説明してくれる。
背後には鬼教官のように、調理人が腕を組んで、その答えに間違いないか注視している。
(何だか試験を思い出しますわね…)
マリアローゼはふるりと首を振って、説明された調味料から少しだけ小匙にとって味見をしていく。
殆どが擂り潰した粉状の物だが、中には粘液状のものもある。
そして、山椒に近い香りの物を見つけた。
「これは、産地はどちらになりますの?入手の難易度は?」
「それは、遠方から苗を取り寄せまして、現在領内でも生育しております」
「まあ……」
レイ様の差し金かしら?
疑いが頭を過ぎるものの、調味料があって困る事は無い。
(生育と言う事はわざわざ手間をかけずに植えただけ、なのかしら?)
マリアローゼの無言の反応を察したノウェムが、横から声を発した。
「庭にある森の中にも植えて御座いますよ」
「そうですのね」
「はい。あの森には育てるのに適しているのかを見る為に、多種多様な植物が植わっています」
「今度是非見回ってみたいと存じます」
ノウェムの言葉に頷きながら、マリアローゼはそう答えた。
ここにも勿論調味料としても材料としてもあるだろうが、森の中で育った木々たちも見てみたいのである。
(ふえぇ、この身体しゅごい……再び)
普通の人なら、調味料をペロッとして、これは青酸カリ……とはならないが、何となくしか味は覚えられないと思う。
甘い、辛い、しょっぱい、苦い、酸味がある、独特な香り、などでふわっと分類されているだろうが、この身体は違う。
薬棚にラベルを貼って仕舞うように、綺麗に整然と揃えられるのだ。
更に、味を再現する事も難しくない。
つまり、食べたかったあの味、というものを再現出来るのだ。
材料さえあれば。
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