悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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他人には不要でも、必要なもの

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マリアローゼはルーナに魚を手渡した。
ルーナはぺこりと会釈して、一口食べるとオリーヴェに渡し、オリーヴェはシスネに回した。
男性陣はノクスとラディアータ、ウルスス、グランス、パーウェルで順番に食べている。
でもユリアはカンナに渡す気配が無いのを見て、シスネはカンナに残りを手渡した。

「ユリアさん、意地汚いですよ」
「だってー!ここでしか食べれないのに、私はもうすぐ…ううっ」

ユリアが泣き真似をすれば、カンナも仕方ない、というように溜息をついて、魚に齧りついた。

「うん、美味しいですね。淡白ですけど、少し甘味があって」

カンナの感想に、マリアローゼも頷く。
やはり問題は調味料だ。
実は、鰻の蒲焼きと言っても、あの独特のタレさえ出来れば鰻がなくても割と他の物でも代用が利くのだ。
醤油は作るのにも発酵が必要な為、時間がかかる。
ジェレイドが作っていなければ、ここには無いだろう。
でも米は普通に存在するし、流通もしている。

「この辺りに酒屋さんはあるかしら?」
「ございます」

シスネが一歩進み出て、ぺこりと会釈をした。
連れて行かれたのは広場に面する店で、店内には樽を横にした状態で並んでいて、それぞれに蛇口がついている。
平民が家庭で買う分は陶器や木製の容器に入れて持ち帰り、貴族には瓶に詰めて売る形になっている。
この世界では硝子も貴重なので、貴族の屋敷で使い終わった容器は安い値段で業者が買い取っていくという仕組みがある。
そしてまた再利用されるのだ。

「ひ、姫様!」

慌てたように店主が、ぺこりと頭を下げる。

「こんにちは。こちらにお米で作った透明なお酒はあるかしら?」
「は、はい、こちらに」

マリアローゼはまだ酒には詳しくないが、この世界ではデビュタントを終えて、大人の仲間入りをしてから飲む習慣となっている。
晩餐で飲んでいる兄はシルヴァインにキースまでだ。
透明で美しい硝子の杯には、いつも美しい色の葡萄酒が注がれていた。
ここはどうやら高級な酒も取り扱っているらしい。

「大きい瓶に2つ下さる?」
「は、はい」

飲むのか?誰かに贈り物か?など色々な考えが過ぎったようだが、勿論貴族に詮索など出来る訳もなく、主人は一番大きな瓶を持ってきて、その中に酒を注ぎ入れた。
そして、コルクで蓋をする。
ルーナが支払いをして、ラディアータが瓶を背負い鞄に入れて背負った。

「あとは…そうですわねえ、乾燥させた海草は売っているかしら?」

マリアローゼの問いに、きょとんとしたシスネとラディアータは顔を見合わせた。
その反応を見て、マリアローゼはもう一つの質問をする。

「小魚を乾燥させたものは?」

「……小さな魚は廃棄されているか、動物の餌にされていると思います」

ラディアータが眉をきゅっと寄せて、そう答えた。
こてん、とマリアローゼは首を傾げる。

(今の質問の、何が気に障ったのかしら?)

「失礼かと存じますが、お嬢様は何故そんな物を欲しがるのでしょうか?」

ラディアータに代わって、なのか、シスネに質問されて、マリアローゼはにっこりと微笑む。

「それは、料理に必要だからですわ」
「……捨てるような、取るに足らない物をですか?」

何故かラディアータの目には暗い光が宿っているように見えて、マリアローゼは不思議そうに頷いた。

(そんなに魚が好きなのかしら……?)

「どんな小さな物であれ、役目がある事もございますのよ?誰かが捨てるからといって、それが不要な物だとは限りませんの。少なくともわたくしは役立てる事が出来ますし、必要だと思っておりますわ」

(だって、出汁を取りたいのですもの)

マリアローゼの言葉に、何故かラディアータは顔を背けて、シスネは何かを考え込んでいる。
二人は自分達の生い立ちに、言葉を重ねて考え込んでいた。
世界から捨てられた自分達の不幸を。

そんな二人をマリアローゼは不思議そうに見詰めた。

(こんなに海に近い場所に住んでるから、海産物には思い入れがあるのかもしれないですわね…?)
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