悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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ケチャップの素材と何かの白焼き

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「あっ、ユリアやりますよ。やり方テレビで見たことあるんで」

止める間もなくひょいっと中に入って、店主の前でユリアは尖った刃物を選んで取り出すと、ダン!と勢い良くまな板に鰻の頭を尖った棒で突き刺した。
そしてツイーっと事も無げに身を割り開く。
更に中骨をスーッと刃を入れて取り除いた。
(職人!?)

「こんな感じですかね?」
「ユリアさん!素晴らしいですわ!!」

マリアローゼの盛大な拍手と絶賛の言葉に、ユリアははわわっと相貌を崩して喜びを顕にする。

「ユリア、今日死んでも悔いは無いです!」
「生きてくださいませ……」

そして次は軽快に金串を数箇所刺して、ユリアはそれを手に持った。

「じゃあユリア、焼き加減にも煩いんで見守ってきますね!」
「まあ!是非お願い致しますわ」

ユリアは金串に刺した鰻(仮)を手に持つと、とことこと焼き魚専門店へと向かった。
ノクスがマリアローゼの指示の前に、1匹分の代金を店主に払って、何事か遣り取りしている。

次は野菜と果物を味見しつつ、購入していく。
大体は記憶の中の世界で見た事のある野菜や果物と、名前が近いか一致している。
と言っても、元の世界の色々な言語と、此方の世界の色々な言語が混じっているので、ジェレイドが生み出したウニと言う言葉やこの地域にあるレモーヌほど近くは無い。
だが、やはりトマトは無かった。
近いのはマールという名前の赤い果物だ。
仄かに味が似ているが、果物の糖度で酸味はない。
爽やかな甘さの果物だ。
多分ジャムやソースとしては活用されているだろうが、スープにはなっていなさそうだ。

「よし、この果物に致しましょう。この籠2杯分頂くわ!」
「畏まりました」

今度はルーナが喜ぶ店の女主人と交渉を始める。
女主人は畏れ多いというものの、ルーナの適正な値引き価格に納得して、お金を受け取った。

(いつの間に、ルーナもノクスも売買が上手くなったのかしら…?)

マリアローゼも値札は分かるし、貨幣の単位も流通も学んでいるが、流石に値引き交渉は出来ない。
思わぬ二人の成長に、マリアローゼは溜息を漏らした。

「ローゼ様ー焼けましたよーー」

二人を眺めていたマリアローゼの耳に、ユリアの元気な声が届いた。
焼けた鰻(仮)を皿に載せて、ユリアがとことこと歩いてくる。
座れる所は無いかときょろきょろ見回すと、広場の中央に噴水が有り、その周囲の一部に机と椅子が並んでいる場所がある。

「あの場所で頂いてみましょう」
「良いですね」

一同はぞろぞろと机に集まり、ユリアが簡単に説明する。

「少しだけ味付けに、岩塩を削って振り掛けて貰いました」

焼けすぎない程度に白い身はふんわりとしている。
食べやすいように金串をつけたまま、三等分してあるので、マリアローゼは1つを持ち上げて、端っこをはむ、と噛んだ。
じゅわりと魚の脂が口に広がるが、味は淡白だ。
鰻を白焼きで食べた事はあるが、この魚の方が甘味が有る気がする。

「醤油ほしー!山椒だけでもいいー!」

とユリアが天を仰ぐ。
どうやらお気に召したらしい。
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