悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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忠実な侍女達の受難

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「では工房への見学へ参りたいですわ」
「分かったよ。シスネに案内させよう。明日の朝市も普段の護衛を連れて行くといい。城の騎士にも数名、後から着いて行くように指示しておくからね。ただし、朝市と商会の支店のみだよ?お昼には帰っておいで」

ジェレイドの指示に、マリアローゼはこくん、と頷いて、それから質問した。

「冒険者ギルドと孤児院にも行きたいのですけれど」
「分かっているよ。それは明々後日にしよう。明後日はまた料理人達を集めてあるからね。君もそれまでに料理を考案しなければならないよ?」
「ふむ……分かりましたわ」

マリアローゼは小さな唇に小さな指を当てて、静かに目を伏せた。
ぼんやりとではあるが、少なからず料理は考えている。
それに、祭りの時期までに料理人達の、料理の習熟度も上げなくてはならない。

パチン、とジェレイドが指を鳴らすと、何故か椅子に座っていたルーナとオリーヴェが飛び上がるように椅子から走り出して、ジェレイドとマリアローゼの間に二人で割って入った。

「まあまあ怒らないでくれ給え二人とも。君達の忠誠心は良く分かっているし、僕もマリアローゼに酷い事はしていないだろう?」

(まさか
魔法で縛っていた…!?)

「そんな問題ではありません。マリアローゼさまの意志を無視する事が問題なのです」

凛とした声で、ルーナが言い放った。
その声に恐怖は微塵も無い。
でも庇うように広げたオリーヴェの手は小さく震えていた。

「レイ叔父様。わたくしに誓いましたわね?わたくしの愛する者を庇護すると」
「ああ、だから傷つけていない。意識も奪っていないよ」

確かにそうだが、詭弁でもある。
マリアローゼは静かに深呼吸した。

「でも私は二人の忠誠心を邪魔するレイ叔父様の行為に落胆したので、今日の晩餐会は出席を遠慮致しますわ。きっと夜になったら今日のこの事を思い出して食事も喉を通らなさそうですもの」

残念そうに溜息を吐きながら言う。
買い集めた沢山のドレスが、壁の内側の洋服箪笥に詰まっている。
晩餐会で、祝宴で着る為の美しいドレスだ。

ややあって、ジェレイドはふう、と溜息を返した。

「分かったよ、ローゼ。申し訳ない事をした。君の侍女にこの様な振る舞いは二度としないと誓うよ」
「謝罪を受け入れますわ。宜しくて?ルーナ、オリーヴェ」

ルーナとオリーヴェは小さな主人に問いかけられて、こっくりと頷く。
立ち上がって、マリアローゼは二人を小さな腕で抱きしめた。

「怖い思いをさせて御免なさい、二人とも」
「いえ、もう大丈夫です」

元気を取り戻したオリーヴェが、ふんす、と力強く返事を返し、ルーナは申し訳なさそうに頭を下げた。

「私こそお止め出来ずに申し訳ありませんでした」

「仕方ないですわ、ルーナ。さあ、工房へ行くのでお着替えを手伝って?」
「はい、畏まりました」

ルーナの反省を断ち切るように、マリアローゼは用事を言いつけて、真正面に立っているジェレイドを見詰めた。
侍女に庇われ、仲良く話している三人を見て、うんうんと頷いていたジェレイドは、マリアローゼの視線に気付いてにっこりする。

「では僕も仕事に戻るとしよう。君も君の侍女も素晴らしいよ、マリアローゼ。また晩餐で」

素早く膝を着き、マリアローゼの小さな手の甲にキスを送ると、ジェレイドは立ち上がって踵を返して部屋を出て行った。
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