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騎士達への贈り物と工房の開発品
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「お嬢様からご挨拶があります」
ラディアータの声で、騎士と兵士は整列して直立した。
用意された木箱の上に、ルーナとシスネの手を借りて、よいしょと登り、マリアローゼはスカートを広げてお辞儀をした。
「皆様、訓練ご苦労様です。公爵家末娘のマリアローゼでございます。領地と領民とわたくし達の護衛に、王都や途中の町々での獣討伐など、皆様の献身に感謝を申し上げます」
小さな令嬢の挨拶に、ザッと一同が深く最敬礼をした。
マリアローゼは更に続ける。
「こちらはレモーヌ・アクア、スッキリとした美味しい飲み物ですの、あちらはレモーヌ・ソーダ、少し刺激のある飲物ですわ。皆様喉を潤してくださいませ」
少年から大人まで、楽しそうにガヤガヤしながら、樽に付いた蛇口を捻って杯を満たして列から離れる。
あちこちで美味い!と声が上がるのを満足そうに見て、マリアローゼは再び侍女二人の手をかりて、よいしょ、と木箱から地面に降り立った。
「お嬢様、有難う存じます。とても美味しい飲み物ですね」
グランスが爽やかな笑顔を浮かべる後ろで、ウルススも杯を傾けている。
マリアローゼも幸せそうに微笑んだ。
(何処を見ても筋肉…!
素晴らしい天国ですわ!!)
筋肉好きの幼女なのである。
「お嬢様、そろそろ戻ってお休み致しましょう」
頃合を見計らって申し出たルーナに、マリアローゼも頷く。
ノクスがマリアローゼに恭しく一礼した。
「後の事はお任せください」
「ええ、ノクス、ラディ、後は宜しくお願いしますわね」
二人の少年執事が丁寧に頭を下げ、グランスとウルススがマリアローゼの後に続く。
カンナとユリアとパーウェルは、二人の騎士と交代にここで訓練してから戻る事になり、マリアローゼ一行は小さな馬車と2騎の馬で城へと戻った。
城での初めての昼寝から目覚めたマリアローゼは、目をぱちぱちと瞬いてから、ヒッと短い悲鳴を上げて薄い布団を頭の上に引き上げた。
目の前に変な物を構えた人物が居たからだ。
「ああ、ごめんよ、マリアローゼ。僕だよ僕、君の下僕のジェレイドさ!」
「そのような方、存じ上げません」
疑わしげなジトりとした目付きで、マリアローゼはそろそろと目元が露出するまで布団を下げた。
「ああっ!そんな顔も愛らしい!」
また機械の様なものを構えようとしたので、マリアローゼはさっと布団を被った。
「その機械は一体何ですの?」
「ああ、そうか、これが怖かったんだね。何も怖くないよ、今日やっと出来上がったビデオカメラだ」
「ビデオカメラ」
(そんな物を作り出していたなんて……)
「不幸な事に知識のある人間が捕まらなくて5年以上かかってしまったよ。今日が最初の撮影日で上映日になる予定だ」
「しゅ、淑女の寝顔など撮影も上映も許されませんことよ!!!」
さすがのマリアローゼもばっと起き上がって、枕をジェレイドに投げつけた。
ジェレイドは機械をもった手を上にあげて、おどけた様に言う。
「おっと、危ない。大丈夫、他の者には見せないから。僕だけの宝物にするからね?」
「だとしても!です。もっと他の事を記録なさるべきでしょう!」
ぷんぷんと怒っているマリアローゼに対して、ジェレイドは甘い微笑を見せる。
「ああ、怒ってる君も可愛らしい。全部録画したいけど、そうなんだよ、まだ試作品なんだ。撮影時間も短いし、1回止めると色々と交換が必要でね」
相変わらず、全く話を聞いてくれない。
マリアローゼは萎えそうになる気持ちを奮い立たせた。
「そんな事をなさいますなら、わたくし王都のお屋敷に意地でも戻らせて頂きますわ。ええ、お誕生会も何もかも捨て置いてでも」
さすがにその脅し文句には、ジェレイドも渋々と従うように、微笑を引っ込めて申し訳なさそうにしょんぼりとした。
「君が来てくれて嬉しくて、ついはしゃいでしまったんだよ。もう寝顔や君の許可なく撮影をする事は止めるから機嫌を直しておくれ。それにこれは無事撮影出来てるかもまだ分からない、試験中なんだ。工房への協力なんだよ」
「工房への協力…」
ぴくり、とマリアローゼが反応した。
責任転嫁も甚だしいが、工房にはマリアローゼも興味がある。
今朝行く事が出来なかった場所だ。
ラディアータの声で、騎士と兵士は整列して直立した。
用意された木箱の上に、ルーナとシスネの手を借りて、よいしょと登り、マリアローゼはスカートを広げてお辞儀をした。
「皆様、訓練ご苦労様です。公爵家末娘のマリアローゼでございます。領地と領民とわたくし達の護衛に、王都や途中の町々での獣討伐など、皆様の献身に感謝を申し上げます」
小さな令嬢の挨拶に、ザッと一同が深く最敬礼をした。
マリアローゼは更に続ける。
「こちらはレモーヌ・アクア、スッキリとした美味しい飲み物ですの、あちらはレモーヌ・ソーダ、少し刺激のある飲物ですわ。皆様喉を潤してくださいませ」
少年から大人まで、楽しそうにガヤガヤしながら、樽に付いた蛇口を捻って杯を満たして列から離れる。
あちこちで美味い!と声が上がるのを満足そうに見て、マリアローゼは再び侍女二人の手をかりて、よいしょ、と木箱から地面に降り立った。
「お嬢様、有難う存じます。とても美味しい飲み物ですね」
グランスが爽やかな笑顔を浮かべる後ろで、ウルススも杯を傾けている。
マリアローゼも幸せそうに微笑んだ。
(何処を見ても筋肉…!
素晴らしい天国ですわ!!)
筋肉好きの幼女なのである。
「お嬢様、そろそろ戻ってお休み致しましょう」
頃合を見計らって申し出たルーナに、マリアローゼも頷く。
ノクスがマリアローゼに恭しく一礼した。
「後の事はお任せください」
「ええ、ノクス、ラディ、後は宜しくお願いしますわね」
二人の少年執事が丁寧に頭を下げ、グランスとウルススがマリアローゼの後に続く。
カンナとユリアとパーウェルは、二人の騎士と交代にここで訓練してから戻る事になり、マリアローゼ一行は小さな馬車と2騎の馬で城へと戻った。
城での初めての昼寝から目覚めたマリアローゼは、目をぱちぱちと瞬いてから、ヒッと短い悲鳴を上げて薄い布団を頭の上に引き上げた。
目の前に変な物を構えた人物が居たからだ。
「ああ、ごめんよ、マリアローゼ。僕だよ僕、君の下僕のジェレイドさ!」
「そのような方、存じ上げません」
疑わしげなジトりとした目付きで、マリアローゼはそろそろと目元が露出するまで布団を下げた。
「ああっ!そんな顔も愛らしい!」
また機械の様なものを構えようとしたので、マリアローゼはさっと布団を被った。
「その機械は一体何ですの?」
「ああ、そうか、これが怖かったんだね。何も怖くないよ、今日やっと出来上がったビデオカメラだ」
「ビデオカメラ」
(そんな物を作り出していたなんて……)
「不幸な事に知識のある人間が捕まらなくて5年以上かかってしまったよ。今日が最初の撮影日で上映日になる予定だ」
「しゅ、淑女の寝顔など撮影も上映も許されませんことよ!!!」
さすがのマリアローゼもばっと起き上がって、枕をジェレイドに投げつけた。
ジェレイドは機械をもった手を上にあげて、おどけた様に言う。
「おっと、危ない。大丈夫、他の者には見せないから。僕だけの宝物にするからね?」
「だとしても!です。もっと他の事を記録なさるべきでしょう!」
ぷんぷんと怒っているマリアローゼに対して、ジェレイドは甘い微笑を見せる。
「ああ、怒ってる君も可愛らしい。全部録画したいけど、そうなんだよ、まだ試作品なんだ。撮影時間も短いし、1回止めると色々と交換が必要でね」
相変わらず、全く話を聞いてくれない。
マリアローゼは萎えそうになる気持ちを奮い立たせた。
「そんな事をなさいますなら、わたくし王都のお屋敷に意地でも戻らせて頂きますわ。ええ、お誕生会も何もかも捨て置いてでも」
さすがにその脅し文句には、ジェレイドも渋々と従うように、微笑を引っ込めて申し訳なさそうにしょんぼりとした。
「君が来てくれて嬉しくて、ついはしゃいでしまったんだよ。もう寝顔や君の許可なく撮影をする事は止めるから機嫌を直しておくれ。それにこれは無事撮影出来てるかもまだ分からない、試験中なんだ。工房への協力なんだよ」
「工房への協力…」
ぴくり、とマリアローゼが反応した。
責任転嫁も甚だしいが、工房にはマリアローゼも興味がある。
今朝行く事が出来なかった場所だ。
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