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しゅわしゅわとシャーベット

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すっかり新しい調味料と可愛らしい姫君に夢中になった料理人一同は目を輝かせていた。

「この飲物をこの領地の特別な物にしたいのですが、なりますでしょうか?」

と首を傾げたマリアローゼに、真っ先にソーレが進み出て何度も大仰に首を縦にブンブンと動かした。

「勿論です、姫様!こんなに、まろやかになるなど思ってもみませんでした」

「では料理ギルドには特別価格で卸して貰える様ブルーローズ商会にお願いしておきましょう」
「その役目は俺が担当するよ」

いつの間にか現れたシルヴァインが、グラスを片手に微笑んでいる。

え?いつの間に!?

城の料理人の1人のグラスを奪ったのかもしれないが、それは追及しない事にして、マリアローゼは再び料理机に手を置いた。

「ではこの飲物はレモーヌ・アクアと名付けましょう。そして、これを使った簡単な氷菓を作ります」

これで終わりでないと知って、料理人達が少しざわめいた。

「皮袋を二つ用意してくださる?それと、レモーヌ・アクア。氷と塩もお願い致します」

城の料理人と従僕達の働きですぐさまそれも、整えられる。
その上に何故か従僕達もにこにこと同じ物を用意していた。

「これは後々魔道具を作って、簡単に作れるように致しますけど、誰でも作れる氷菓として皆様にはお伝えしたかったのです。魔法も必要ありません。1つめの袋に、レモーヌ・アクアを入れます。入れたらできるだけ空気を抜いて、しっかり口を閉じて、2つ目の袋に氷と塩をいれて、その中に1つ目の袋を入れてよおく振りますの」

ふりふり
ふりふり

(これを5~10分は地味に辛いですわね……)

早くも疲れ始めたマリアローゼの元に、ジェレイドがやって来た。

「何だか楽しそうだね?」

元々ジェレイドに聞きたかったのは、カキ氷機がメインではなかったのである。
この世界に炭酸があるかどうかを確認したかったマリアローゼは、ジェレイドの大仰な振る舞いに圧倒されて、思わず記憶がすっぽ抜けてしまったのだ。
早速マリアローゼはジェレイドに聞いてみる事にした。

「ええ、レイ様に聞きたい事がございますの」

マリアローゼは言いつつ、ジェレイドの手に袋を持たせる。
ジェレイドは軽く笑って、その袋を上下に振り始めた。

「何だい?ローゼ」
「炭酸はございますか?重曹やトローナ鉱石は…」

「ああ、あるよ。重曹や鉱石も一応確保はしてあるけど、大陸中の炭酸水の源泉の権利はもう買ってある」

(な、何ですってーーー!?)

マリアローゼは驚きのあまり、ぽかん、と口を開けた。
どうやって炭酸を作るかばかりを考えて、天然の炭酸水の鉱泉の存在をすっかり忘れていたのだ。

「そ、そうですの…天然の炭酸水がありますのね…!」
「神聖国が3箇所押さえてるけど、それ以外の7箇所はうちのものだね。それと、アルハサドの3箇所。倉庫も圧迫されてるばかりだから、早く使いたかったから良かった。この城では皆飲んでるよ」

料理人やノウェムに視線を送ると、こくりと頷いてみせる。

「では厨房にございますの?」
「ございます」

ノウェムの返事に、素早く従僕が反応して、棚から瓶に入った液体を持ってきた。
マリアローゼは早速、レモーヌ・アクアを作ってから、炭酸を注いだ。
控えめな微炭酸がしゅわしゅわと心地よい飲物だ。
最初はこのくらいが良いのかもしれない。

「あ、皆様、そろそろ袋の中を確認してくださいませ。ノウェム、デザート用のお皿をお願い致しますわ」
「は」

用意された食器に、袋から固まったレモーヌ・アクアを皿に移す。
横からひょい、と匙で掬って、ジェレイドが味見をした。

「うん、美味しいね!さすが、君と僕との初めての共同作業だ!」
「あ、はい」

何時もどおりの反応に、ジト目で返事をしながら、マリアローゼ氷菓を匙で掬った。

(しゃりしゃりしていて、美味しい)

口に入れると冷たくて蕩ける甘さに、マリアローゼはほわあっと顔を綻ばせた。
料理人達も従僕達もうんうん、と頷きながら食べている。

すっかり忘れていた微炭酸の飲物を、ひょいと横から腕が伸びてきて、シルヴァインが全部飲み干した。

「あっ!僕が飲もうと思ったのに!」
「私が頂く予定だったのに!!」

横からジェレイドが、背後からユリアの悲痛な声が聞こえて、シルヴァインはにっこりと微笑んだ。

「ご馳走様、マリアローゼ。とても美味しかったよ」
「それはようございました」

にっこりと笑うマリアローゼの耳に、ユリアの不穏な言葉が入ってくる。

「間接キスがぁぁ……」

へなへなと座り込んだユリアの頭を、ルーナが銀盆で思い切り叩くのが見えた。
ゴイン!と凄い音がしたが、マリアローゼは目を逸らした。

(今のは仕方ありませんわね…)
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