悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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正気を疑いたくなるお嬢様

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その図書館は大きさだけでなく、その外観すらも城の一部と言われれば納得出来るほど豪奢であった。
赤茶色の煉瓦と、白い石の対比も美しく、正面の入口には立派な柱と彫像が左右に並べてある。
見上げるほどに大きく麗しい彫像が向かい合って視線を交わしているように並べてあるのだ。

その彫像の男の方は、誰かに似ていた。
半裸に布を纏った、均整の取れた筋肉質の身体は見応えのある美しさだ。

(でも、これは……
ジェレイド叔父様ァァァ!!!)

「こ、この彫像は…正気ですか……?」

思わず口から漏れてしまった言葉に、マーノが苦笑して返した。

「対の彫像は、成長したマリアローゼお嬢様だと聞き及んでおります」

(は?
はぁぁ!?)

思わぬ言葉にマリアローゼはぽかんと口を開けた。
自分に似せた彫像を作らせるだけでも正気を疑いたいのに、何故自分まで巻き添えにされたのか、マリアローゼには分からない。
そして、男性の彫像の向かいに立っている女神の如き彫像を見上げる。

こちらも大事な部分はきちんと布で隠れているし、腰まで伸びるふわふわの髪の毛と、巻いた毛先は確かに似ていなくも無い。
髪の毛だけなら。

だが、顔も豊満な肉体美も、マリアローゼと言われても。

(いや、別人ですよこれ!ね!?)

思わず心の中で突っ込みを入れてしまうほど、似ても似つかない。
髪型が似ている?かもしれない?ただの美人なお姉さんなのである。

「嫌だわ、そんな、無理が有り過ぎますもの」

乾いた笑いを浮かべつつ……笑って流そうとするが、そうは問屋が卸さなかった。
卸して欲しかったのに、ルーナとノクスが卸してくれなかったのだ。

「いいえ、お嬢様は世界一美しい方です」

とノクスがキッパリ言えば、ルーナもその答えの更に上を行く。

「確かに彫像は美しいと思いますが、お嬢様はもっと美しく成長なされます」

(ええ!?
それはそれで、かなり期待値を振り切っていませんこと!?)

マリアローゼは二人の後押しに、少し後退りしつつ、こくこくと頷いた。

「ふ、二人の期待を裏切らないように、精進致しますわね……?」

(平凡な女子に、突然スーパーモデルになってね?と言うくらいの無理難題なのでは?)

そう思いつつも、オリーヴェすら、力強く胸の前で手を組んでうんうん!と頷いているし、例えこの場にカンナや兄達が居たとしても否定はしてくれないだろう。
そして本人が否定すればするほど、優しい人々に説得という名の傷口を広げる行為をさせてしまう為、マリアローゼは口をきゅっと噤んだ。
ユリアが居たら、もっと惨状が広がっていたに違いない。
多分マリアローゼの心が焦土と化していただろう。

(そう。まだマシなのですわ。
でも、ジェレイド叔父様、何て事をしてくれやがりましたの!
お恨み申上げますわ!!)

マリアローゼはキッと二つの彫像をそれぞれ睨み付けた。
そして、階段とその脇に傾斜した路面もついた入口を、怒りに任せてふんすふんすと登っていく。
入口を入ると、豪勢な邸宅のように玄関ホールが有り、左右と正面にガラスを嵌め込んだ両扉が付いている。
左側には「従業員専用」と書かれた看板が鎖で下がっており、右側には特に何も書かれていない。

だが、間違いなく正面が図書館なので、マリアローゼは疑問は後回しにしつつ、正面の扉へと歩を進めた。
ノクスが開けてくれた扉から中に入ると、そこには中央に巨大な本棚を擁した空間が広がっている。
大きな本棚の正面にはそれぞれ扉がついており、内部には階段でも有るのだろうか、その扉から人が出たり入ったりと忙しなく働いている。
巨大本棚の前には机が幾つも並んでいて、それを挟むように本棚が幾重にも並んでいる。
二階部分も更に上階階部分も本棚がずらりと並んでいて、巨大本棚の近くには渡り廊下も付いているので、左右の階段から上がって、中央の巨大本棚に行く事も可能だ。
そして、階数にして五階分の大きさなのである。

「こ…これは壮観ですね」

思わずと言うようにグランスが唸った。
ウルススの感想は、興味なさげな単純な言葉だった。

「でかいな」

本棚はまだ満杯になっておらず、中央の机にも本が積み上げられていて、見知った二人がそこで職員に指示を与えていた。
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