悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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新しい温室

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「でも、感謝して頂く程の事ではございませんことよ。皆様命を賭して働いていらっしゃったのですもの。わたくしも冒険者さまを支援してゆくとお約束致しますわ」
「勿体無き、お言葉でございます」

まさか、小さな幼女にその様な言葉をかけられる等とは予想していなかったマーノは驚いて、そして帽子を脱いで胸に抱えながら、深く頭を下げた。
今の公爵にも代理人の弟公爵にも感謝はしていたが、さらに次世代の公爵家の人間まで慈しみ深いとは、予想もしていなかったのである。
しかも、小さな少女が。

「ではマーノさん、温室へ参りました後、図書館にご案内致しますので、宜しくお願い致します」

先に馬上に乗せたオリーヴェに言われて、マーノは頷いた。

「了解しました」

オリーヴェの後ろに乗ったマーノの馬の後に続いて、ウルススとグランスも馬を歩かせる。

「此方の道は傾斜しておりまして、階段ではないので、馬で庭や城に向かわれる時は、こちらの道をお使いください」

先ほど観察した通りの説明に、マリアローゼもこくん、と頷き、騎乗している護衛騎士の二人が其々返事を返す。

「分かった」
「分かりました」

そして下庭に出た後で右に馬首を回す。
昼前に居た森の近くに、ガラス張りの建物が見え隠れしていた。

「あちらに見えるのが、温室ですわね?」
「ええ、そうです」

王都の公爵邸に合った温室も大きかったが、こちらの温室は更に大きそうである。
マーノはゆっくりと馬を歩かせながら、更に続けた。

「温室自体は森の方にもございますが、こちらは今年に入って新設された物でして。マリアローゼお嬢様の為に、ジェレイド様が特別な植物も沢山手に入れられたとか」

(初耳ですわ!
そんな事今まで一度も仰らなかったではないですか!
……本当に予知の力は失われたのかしら……?)

疑問を思い浮かべながらも、マリアローゼは声を弾ませる。

「それは、大変嬉しゅうございますわ。わたくし、植物にとても興味がございますの」

古い記憶が呼び覚まされ、懐かしさと混乱の中に居た頃、よく読んだのは植物図鑑だ。
そして、アルベルトに贈った誕生日の贈り物も。
もしかしたら、ジェレイドはそういう話も両親から知らされていたのかもしれない。

温室の前までくると、その巨大さと荘厳さにマリアローゼは圧倒された。
土台は煉瓦だが、天井まで全て硝子で出来た建物である。
この世界で硝子は希少品の部類に入るので、一般庶民の家の窓にはガラス等はない。
木の枠と木の両扉で作られていて、二階は日中開け放している家も多いだろうが、1階は防犯の為に家人が不在の時は閉め切っている家が殆どである。

早速温室の中に入ると、燃えるような赤い髪の巨躯の青年がせっせと土を運んでいた。

「エレパース!」
「……お嬢様」

びっくりして担ぎ上げた土の袋を取り落としそうになりながらも持ち直し、駆け寄ってきた小さな主人を、エレパースは嬉しそうに微笑んで迎えた。
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