悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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引退した冒険者と慈善事業

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部屋に戻って、全員で揃って食事をした後、マリアローゼは何時もどおりの時間にちょっぴり眠気を覚えて首をふるりと振った。
その素振りに気付いたルーナが心配そうに声をかける。

「やはり、少しお休みになられてから参りましょう、ローゼ様」
「いえ、戻ってから晩餐までお休み致しますわ」

眠気を振り払うように勢いよく立ち上がったマリアローゼを、心配そうに見詰めながらもルーナは頷いた。

「では厩舎にご案内致します」

オリーヴェの案内で、一同は玄関から外に出ると屋敷を背に右側へと歩いて行く。
屋敷が途切れた所で右へと続く道を歩くと、丁度中庭から見えた客室棟の裏手に出る。
左側の木立の向こうには建物が見え隠れし、マリアローゼは問いかけた。

「あちらの建物は何ですの?」
「下級使用人の建物ですね。王都の公爵邸では通いでいらしていた方なども、こちらでは住み込みでいらっしゃると聞かされております」

マリアローゼはその説明にこくりと頷く。
が、何か言う前にルーナが先回りをした。

「今時分は出払っているか、お休み中かもしれませんので、ご挨拶は晩餐後で如何でしょうか?」

(まあ、凄い……ルーナはわたくしの考えが分かりますのね!)

目をぱちくりして、感嘆の眼差しでルーナを見ながら、マリアローゼはゆっくり深く頷いた。

「ええ、ええ、その通りですわね。そう致しましょう、ルーナ」

嬉しげに微笑むマリアローゼを見て、ルーナも微笑を浮かべながら、また一行は道に沿って歩き始めた。
そして、木立の切れ目から左に向かう道が現れて、そこには厩舎が離れた場所に見えてくる。

「本来であれば、お申し付け頂きました際に玄関か中庭下に、馬を回す事が可能で御座いますので、此方までいらっしゃる必要はありませんが、本日はご案内を兼ねておりますので…」
「まあ、そうなんですのね」

思い出してみると、中庭と屋敷は階段で区切られているが、歩いてきた道はゆるやかに下り坂になっているようだった。

厩舎に向かうと馬を借りて、グランスがマリアローゼを乗せ、ウルススがノクスとルーナを乗せると、馬丁の1人がオリーヴェを馬に乗せた。
馬丁という職業の割には、筋肉質で、精悍な男である。
茶色の髪に茶色の瞳で、頭には帽子を被っていた。

「マーノと言います」
「まあ…マーノさんは、とても鍛えていらっしゃるのね?」

にっこりと微笑んでマリアローゼに言われて、マーノはぺこりと頭を下げた。

「昔はこれでも冒険者をしておりまして、怪我が元で冒険は続けられなくなったんですが、こちらではそういう者達にも働き口を下さるんで、皆感謝してます」
「まあ……」

(初耳ですわ!
そんな慈善事業までしていたなんて…!
ジェレイド叔父様恐るべし……!)
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