悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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飼育係になったウルラートゥス

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マリー小屋の背後には、簡素な物置小屋のような建物があり、その扉にはウルラートゥスが寄りかかって欠伸をしている。

「まあ、ウル。こんなところにいらしたのね?」
「ねみぃんだから、こんな所でキャーキャー騒ぐんじゃねえよ」

言いながら身体を起こして、マリアローゼの近くに歩いてくる。

「寝るのをお邪魔してごめんなさい、ウル」
「…別に邪魔とは言ってねえ」

ぶっきらぼうに言って、ノクスから手綱を奪うと、建物の端に備え付けられた杭に縄を結びつけて、マリアローゼをマリーの背から抱き上げて、地面に降ろした。

「お前のせいで、アイツにこの綿埃の世話を押し付けられたんたぞ」
「そうなんですの?それは悪い事をしましたわ…ええと、ここの近くに厩舎はありませんの?」

問われたオリーヴェが答えようと視線を巡らすと、制止する声がかかった。

「いい。遠くなったら様子見に行くのめんどくせぇだろ?ちゃんと世話しに来いよ」

腕を組んでそっぽを向いたまま言うウルラートゥスを見て、マリアローゼは嬉しそうに笑った。

「ありがとう存じます、ウル。毎朝運動する日課がございますので、天気が良い日はなるべく参りますわ」
「おぉ、別にそこまで無理しなくていーけどな」

言いながらくるりと背を向けて、ウルラートゥスは小屋に戻って行った。
マリアローゼは、マリーの背中を優しく撫でながら、微笑む。

「良かったわね、マリーちゃん」

「お嬢様、あちらに見える柵の向こうが、コッコ様の飼育場所になります」

言われたとおりに顔を上げてみると、木で作られた柵が森の中に見え隠れしながら続いている。
一番手前の柵はウルラートゥスの小屋のすぐ近くで、そこには餌箱と水桶が置かれていた。

「名前を呼んだら来ますかしら?」

と独り言のように疑問を口にしながら、マリアローゼはとてとてと柵へと近づいていく。
餌箱の近くの鶏小屋には何もいない様だった。

「コッコちゃーん、ピーちゃーん」

呼びかけると、トットッという軽快な足音がして、コッコちゃんが現れた。
クエ、と返事をするように鳴く。
その後ろをトコトコと黄色い雛も付いて来た。

「元気そうですわね、三匹とも。コッコちゃん、フィディ、ピーちゃん」

安堵したように言いながら、マリアローゼはコッコ、鶏頭部分と、フィディ、尻尾部分の蛇頭と、ピーちゃん、黄色い雛を名を呼びながら順繰りに撫でた。

「また会いに来ますからね、のんびり過ごしてね」

マリアローゼの言葉に返事をするように、クエ、と一言鳴いて、コカトリスのコッコは羽を少し広げた。
柵から乗り出すように預けていた身体を戻すと、マリアローゼはオリーヴェを振り返る。

「ここから温室は遠いのかしら?」
「いえ、それ程遠くは御座いませんが、一度昼食を摂りに戻られた方が宜しいかと」

オリーヴェの提案に、ルーナもこくりと頷いた。

「昼食後にお休みになられてから、温室と図書館に参りましょう」
「ええ、そう致しましょう」

森に向けていた身体を、くるん、と翻してマリアローゼは微笑んだ。
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